ついに“悪魔の仕組み”が発動「年金70歳支給開始」を覚悟せよ

ついに“悪魔の仕組み”が発動「年金70歳支給開始」を覚悟せよ

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2016/11/30
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名目額は増えたが実質的には目減り

これまで政府は、受給開始年齢の引き上げなど「今後もらう世代」の受給額を減らしてきた。だが、ついに「すでにもらっている世代」の年金減額にも踏み切った。これが2015年にはじめて適用された「マクロ経済スライド」という仕組みの意味だ。

社会保険労務士で「年金博士」とも呼ばれる北村庄吾氏は「これは悪魔の仕組みです」と話す。

「年金の支給額は、物価や賃金の上下の動きと連動する『物価スライド』によって改定されてきました。物価が2.0%上昇すれば、年金額も2.0%伸びる。しかし2015年から年金を受け取るすべての人を対象に、『マクロ経済スライド』が発動されました。平均寿命の延びや現役世代の減少に合わせて、一定の調整率を自動的に差し引き、物価や賃金の上昇率に対して年金額の伸びは抑えられます」

「マクロ経済スライド」の仕組みをおさえながら、2015年4月の年金額を計算してみよう。

まず賃金上昇率に合わせて2.3%のプラスがある。これまでは年金額もそのまま増えたが、2015年はマイナス要素が2つあった。

1つは「特例水準の解消」だ。2000年度から02年度にかけて物価が下落したにもかかわらず、特例法で年金額を据え置いたため、いまの年金支給額は本来より2.5%高い「特例水準」だとされる。13年度から15年度までの3年間で段階的に特例水準の解消が実施されており、2015年は最後の年で0.5%のマイナスだ。

もう1つが、「マクロ経済スライド」。スライド調整率はマイナス0.9%である。数値の根拠について、政府は「社会情勢に合わせて自動的に調整する」としているが、「複雑すぎて誰にもわからない」(北村氏)。

とにかく2.3%から1.4%が減らされ、年金額の上昇率は「プラス0.9%」となる。このため2015年4月分の国民年金支給額(満額、1人分)は、前年よりも月額608円増えた。

注意すべき点は、年金の名目額は増えているが、実質的な価値は下がっていることだ。

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「賃金の上昇率が2.3%なのに対して、年金の伸び率はわずか0.9%。名目額は上がっても、実質価値は1.4%下がっていることになります。アベノミクスは物価上昇率2.0%が目標です。それが毎年続けば、10年後に物価は20%以上も上がる。しかしマクロ経済スライドによって、年金額が毎年1.1%しか上がらなければ、10年後には年金の実質価値が1割以上も目減りすることになる。いまの年金額を前提にすると、間違いなく老後破綻します」

50歳以上からの「株式投資」はNG

みずほ総合研究所の試算によると、40年間働く会社員の夫と専業主婦の妻のケースで、現在50歳で年収500万円の世帯では、65歳時点の年金月額は政府の「標準シナリオ」で22.7万円、「低成長シナリオ」では20.9万円だ。年齢を重ねるごとに年金額が引き下げられると試算されている。

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北村氏は「現役世代が高齢者を支えるという現在の年金制度はすでに破綻している」と話す。

「これから現役世代の負担は年々重くなります。1970年時点では高齢者1人あたりの現役世代は9.8人でした。ところが2010年時点では2.8人。2050年には1.3人になります。すでに年金の支給開始年齢は67歳への引き上げが検討されていますが、近い将来、70歳にまで引き上げられるのは間違いないでしょう」

年金に頼れないとすれば、どうすればいいか。北村氏は「自分年金を準備すべき」という。

「年齢によって備え方は変わります。50歳以上の人は株式投資や投資信託のようにリスクの高いものは避けるべき。どの世代にも勧められるのは『個人年金』です。たとえば個人型確定拠出年金は、掛け金の全額を所得から控除できるため、節税効果が大きい。自営業者だけでなく、企業年金のない会社員も加入でき、2017年からは対象者がさらに拡大します。一方で生命保険は見直したほうがいい。定期付終身保険は年齢とともに保険料が上がります。ライフプランに合わせて保険を見直し、その分を貯蓄や個人年金に回したほうがいいでしょう」

社会保険労務士 北村庄吾(きたむら・しょうご)

1961年生まれ。中央大学法学部卒業。行政書士・ファイナンシャルプランナー。91年に法律系国家資格者の総合事務所ブレインを設立、代表を務める。著書多数。

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