国を挙げて熱血授業、恐るべき中国語の拡散パワー 「最良の人材」を投入して目指すは世界の共通語

国を挙げて熱血授業、恐るべき中国語の拡散パワー 「最良の人材」を投入して目指すは世界の共通語

  • JBpress
  • 更新日:2016/10/19
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世界中で中国を学ぶ人が増えている。中国・上海の高層ビル群(資料写真)

「これからはアジアの時代」と言われる中、世界でアジアの言語が注目されている。

英国の一部の地区では、小学3年生からアジアの言語を含む外国語を選択制にした。オーストラリアではアジアの言語学習を小中学生の重要課題に据え、アジアの4つの言語のうち1つを必修科目にした。

アジアの言語の中で人気が最も高まっているのは中国語である。ロシアの中国語専門教育機関には、今年、申込者が殺到した。また米国でも中国を目指す留学生が増えるとともに、中国語の学習熱が高まっている。

最近の中国語人気は、中国が打ち出した「一帯一路」構想と無縁ではない。「一帯一路」とは、中国と中央アジア、西アジア、アフリカを結ぶ壮大な経済圏構想である。その経済圏に含まれる国々ではにわかに中国語ブームが到来している。

それは留学生の出身地からも明らかだ。中国教育部によると、2015年の中国への留学生数順位は、1位韓国、2位米国、3位タイ、4位インド、5位ロシア、6位パキスタン、7位日本、8位カザフスタン、9位インドネシア、10位フランスとなっている。中でもインド、パキスタン、カザフスタンは前年比10%の伸びとなった。アフリカからの留学生も急増しており、2015年は前年比19.47%の伸びである。

「最良の人材」が留学生を指導

もともと中国は、中国語を世界に普及させる戦略を展開している。中国語を英語に代わる世界言語とすべく、国家予算を投入し、中国文化の普及機関である「孔子学院」を各国に配置し、中国語教師を送り出してきた。

海外でも国内でも、中国語を教える教師は十分なトレーニングを受けたプロ集団である。

「あなたにとって宿題以上に大事なことは何なのか、私に説明してみなさい!」

中国語の宿題を忘れた日本人留学生向かって中国人教師が一喝した。この学生は、本来中国では禁止されているアルバイトに時間を取られ、宿題の提出が期限までに間に合わなかったのだ。課題を怠る留学生や試験の成績が悪い留学生を、教師たちは容赦なく叱責する。

留学生に厳しく接するからには、教師もいい加減な授業はできない。外国人にも分かるはっきりとした言葉遣いを徹底し、時間配分にも気を配る。

2000年代後半に北京語言大学に留学した経験を持つ戸沢亜希子さん(仮名)は、当時の授業の印象をこう語っている。

「中国語教師は驚くほどレベルが高かったですね。外国からやってきた留学生を『最良の人材』が指導するという体制が確立しているんです。私の先生は北京大学を卒業したエリートでした」

「北京大卒の中国語教師」は、日本で言えばさしずめ「東大卒の日本語教師」といったところだ。さらに、大学で中国語教師として教壇に立つ者は、博士課程を修了していることが求められる。

筆者も上海の2つの大学で中国語の教育を受けたが、“新米の先生”を除けば授業の質はきわめて高く、安定したものだった。

国家プロジェクトで教員養成

中国では教育部(日本の文科省に相当)の「国家漢班」が「国際漢語教師標準」を定め、それに沿って中国語教師を育成している。

国際漢語教師標準によれば、中国語教師は中国と世界文化の違いを認識し、中国語教育の理論と技術を身に着けていることが求められる。中国語教師の誰もが一定水準の技量を維持しているのは、確立されたメソッドで教え方を叩き込まれているためだ。

中国語教師たちは、生徒への授業を行うだけでなく、教育技術を高めるためのトレーニングや専門プログラムへの参加、あるいは論文の執筆などの研究活動にも余念がない。

近年、上海では、中国語教師たちに「英語で授業を行うトレーニング」も行われるようになった。欧米で中国語を学びたい人が増えているためである。

このトレーニングに参加した中国語教師の王麗さん(仮名)は、次のように語る。「一昨年、3カ月間カナダに滞在し、中国の経済、文化、歴史を英語で教える技術を学びました。初めての海外体験でしたが、訓練のおかげで教授法に自信を持ちました」

中国語教師には日本人などの外国人もいるが、国家漢班はこうした外国人教師にもトレーニングを行っている。昨年、国家漢班が主催した外国人教師向けのプログラムに参加した日本人教師の今村由佳さん(仮名)は次のように感想を語ってくれた。

「プログラムの充実ぶりには驚かされました。来年は、外国から研修に来る教師のための専用ゲストルームもできるそうです。中国では中国語教育がまさに国家プロジェクトであり、1つの産業にもなっていることを強く感じました」

日本では薄給に耐えかねて辞めていく

翻って日本はどうか。日本でも近年は留学生数が急増しており、2015年は20万人を突破した。だが、新学期が始まった日本語学校からは「日本語教師が足りない」の悲鳴が聞こえてくる。

留学生向けの日本語学校は「薄給に耐えかねて辞めていく教師が多い」とも言われる。多くの学校では足りない教師を補うため、主婦のアルバイトに依存しているという。

おまけに教師は、寝坊ばかりしている留学生を叩き起こすモーニングコール、登校の催促、日常生活やアルバイトの管理などまでこなさなければならない。そんな状況の中で「教師は疲弊しきってしまい、授業の質を追求するどころではない」(都内の日本語学校の職員)。

日本語学校の経営基盤は決して盤石ではない。日本語学校の元教師は「主婦や学生にボランティア同然で働いてもらうような、その場しのぎのやり方が続いてきた」と指摘する。また、ある日本語学校の経営者によると、「これまで日本語学校は、国際貢献に熱意を持つ世話好きな日本語教師たちの個人的な努力で存続できた一面もある」という。

「日本語教師たちの善意」でこの業界が維持されているのだとしたら、「留学生30万人計画」は早晩破たんすると言わざるをえない。

グローバル化が進行する今、言語も国際競争にさらされている。政府の目論見通り、「高度外国人材」に活躍してもらい、日本の経済成長に寄与してもらうためには、足元の日本語教育から見直すべきだろう。まずは日本語教師が安心して活躍できる環境づくりを急ぐべきだ。

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