【夕焼けエッセー】懐かしのテレビ観戦

  • 産経ニュース
  • 更新日:2018/02/14

ふるさとの名古屋で中学校卒業から60年目に初めての同窓会があり、懐かしい仲間と再会できた。ふるさとは食品、ベニヤ板、鋳(い)物(もの)、機械工業などが点在する中小企業の町で、子供も多くみな仲が良かった。

習字の先生(92歳)と音楽の先生(85歳)が今もご健在で学校の近くに住んでおられ、ご招待して総勢40名の有志が集まった。

話題は、米の代わりに食べたすいとん、ご馳走といえば硬いくじらの肉、1つの卵を分け合って食べた卵かけごはんなど食べ物の恨み節から始まり、木造の中日球場が火事になって見物に駆けつけた話などが続く中、力道山のプロレス中継を近くの電気屋さんの店先に上がり込んで夢中になって観戦した話を持ち出したとき、友が

「僕は金持ちの社長の洋館に忍び込み、庭の木に登って家族団らんのテレビ観戦をこっそりガラス越しにのぞき見してたら、家族の人がテレビの向きをわざわざこちらに回していていつも見やすくしてくれた。寒いけど特等席で、うれしかった、懐かしいなあ」

と、極秘話を明かしてくれた。彼はやんちゃでもなくおとなしい子だったので、よくもまあ機転がきいたものだと大変驚いた。

今であればプライバシー侵害の罪で警察沙汰になるところだが、戦後まもない時期でもあったせいか、子供のその程度のことは大目に見るという社会の包容力があり、貧しいながらも豊かな心を持ったよき時代でもあったように思う。

ちなみにその洋館の会社は、今もなお着々と事業を海外にも広げている。

兼松昭(75) 大阪府箕面市

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