これからの時代をどう生き抜く?老子に学ぶ“ゆるっと成功”する方法

これからの時代をどう生き抜く?老子に学ぶ“ゆるっと成功”する方法

  • @DIME
  • 更新日:2016/11/29
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ブラック企業での過重労働、“SNS疲れ”や炎上事件、少子高齢化、恋愛が怖い……現代を生きる若い世代を苦しめる問題の数々。いったいどうやって立ち向かっていくべきなのか、迷うことは多いだろう。

そんな時こそ、二千年以上にわたって世界中の人々に読み継がれてきた中国古代哲学にヒントをもらってみてはどうだろう。現代よりもさらに混沌とした時代に誕生し、歴史の荒波にもまれながらも淘汰されることなく、2016年の現在に至るまで多くの人々の心を照らし続けてきた中国古代哲学なら、必ず頼りになるはずだ。前回に続き、中国哲学の著書を多数されている大阪大学文学部教授の湯浅邦弘先生に、『老子』の教えを活かして幸せに生きる方法を伺った。

■頑張っても頑張っても報われないのはなぜだろう?“ゆるく成功”するコツとは?

外見を磨いたり、習い事を始めたり、勉強会に積極的に参加したりと“自分磨き”を頑張っているのに「幸せになれない」と感じている現代人も多い。必死に努力しながら幸せを追求しているのに、報われないと感じるのはなぜだろう。

中には、幸せを追求するあまり、極端な行動に走る人もいる。物を捨てることや健康的な食生活も、最初は幸せになりたくて始めたのに、いつしか強迫観念になって自分自身を苦しめることも。いずれも、“行動自体は悪いことではないけれど、度を超えている”のが共通点だ。

私たちは子どもの頃からずっと、「つらくても努力し続けることが大切だ」と教えられてきた。しかし、『老子』では、もっと“力を抜いて生きること”を勧めている。

「競争社会の中で、老子の説く『頑張らない、欲張らない』いうのは理解しづらいと思います。しかし、頑張るという“アクセル”だけでは、いつかエネルギーがなくなり、また取り返しのつかない事故につながることもあります。絶対に何も頑張らないという意味ではなく、“アクセル”とともに“ブレーキ”を適度に踏むことの必要性を説いているのです。

また『老子』は、『何もしないようでいて、しかもすべてを成し遂げる』(37章ほか)という不思議なことも言っています。いかにも頑張っていますという姿勢は、他人に警戒感を抱かせ、また自分自身のプレッシャーともなります。一見なにも頑張っていないような、いい意味での“ゆるさ”が成功の秘訣です。“ほどほど”が大切だということです。

また、幸福感とは、『足るを知る』(44章)という心構えによってもたらされるもの。どんなに良いポストや高い給与を得ても、満足するという気持ちがなければ、永遠に充足感は得られません。欲望の度合いを少し引き下げて、自分の夢との調整をはからないと幸せはやってこないのです」

有名な「足るを知る」が含まれる第44章の全文は以下のとおり。私たちが一度に手にすることができる量は、限られている。欲張るほど、後々失うものも多くなる。

<愛する度合いが強すぎれば失うときのショックもまた大きい。たくさんのものを保有していれば失う度合いもまた大きい。足るということを知っていれば、恥ずかしい目に遭うこともなく、一定のとろこでとどまることを知っていれば危険な目に遭うこともない。それがいつまでもそのままでいられる秘訣である。(第四十四章)>(『入門 老荘思想』より)

■「頑張らなくていい」は本当か?老子的正しい努力は“心にブレーキを隠し持つ”

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しかし、「今までの努力を放棄することが怖い」という人も多いのではないだろうか?周囲が全速力で走り続けている中で、自分ひとりブレーキを踏んで努力をやめることは、“負け”や“堕落”を連想させる。全力で積み上げてきた自分の頑張りが、ブレーキをかけることによって無駄になったらどうしよう。

「『老子』は、何も努力をしなくていいと言っているのではありません。自分の心身を砕いてしまうような極端な作為をやめましょう、と説いているのです。思考の引き出しを一つ増やしておくことです。つまり、“アクセル”を踏んで頑張るけれども、心の片隅に、「頑張らなくていいんだよ」という“ブレーキ”も同時に持っておくことです。

違法な長時間残業が社会問題となっています。追い詰められた社員は、「残業をしない」「会社を辞める」という思考そのものを失っていくそうですね。仕事を真面目に頑張るけれども、それと同時に「こんな会社いつでも辞めてやる」という一見乱暴な気持ちを、心の片隅に秘めておくことも大切です。『老子』はそうしたしなやかな精神を「水」にたとえています(78章ほか)。水は世界で一番弱々しい存在。しかし、その柔軟性は他の追随を許しません。どんな形状にも柔軟に変化し、また時には巨大なエネルギーを発揮するのです。「水のごとく」というのが『老子』流の努力の方法なのでしょう」

一見真面目に働きつつも、心の片隅に逃げ道を用意しておく。理不尽な理由で怒られたら、一見申し訳なさそうな顔で謝りつつ、心の中で舌を出す。大丈夫、自分の心の中なら、誰にものぞかれることはない。そんな適度な“ゆるさ”が、生き残るためには必要なのかもしれない。

■若い世代へのメッセージ「常識を一度、白紙にしてみよう」

最後に、“20~30代の若い世代が老子の教えを実生活に活かすコツ”について湯浅先生に伺った。一見難解そうで、現代に生きる自分たちには無縁とも思える老子の教えは、実は“今どきの若者”がサバイバルするためのヒントに満ちている。

「大学に入学してきた一年生には必ず、最初の授業の中で質問することがあります。中国古典の言葉を10個を並べ、『この中でどれが一番印象深いか』というものなのですが、『二千年以上前の言葉なのにどれも新鮮に響く』という感想が多いですね。

例年一番多くの票を集めるのが、『老子』第20章の「学を絶てば憂い無し」(勉強をやめれば心配事はなくなる)です。極端な言葉なので、これを真に受けると翌日から学生は学校に来なくなってしまうかもしれません。

しかし、ここで言っているのは心の持ちようです。常識的な価値観を一度、白紙に戻してみるということです。『老子』は、人間の価値観(こうしなければないらない、これがすばらしいなど)が、実はとてもあやふやなものにすぎないと指摘します。それなのに、私たちは普段、そのような価値観に縛られながら生活しています。

もちろん、普段は会社や家庭の中の規準に従いながら、しっかりと生きていくことはとても大切。ですが、それはきわめて狭い世界での話なのだということを常に頭の片隅に置いて、自分がいつもいる場所とは異なる世界や価値観があるということを知っていることも重要でしょう。たとえば仕事以外の趣味を持ち、職場を離れて旅に出る、会社以外の人脈を作る、というのも視野を広げる有効な手段です」

ひとつの価値観に固執することなく、世の中にあるさまざまな価値観や考え方に常日頃から触れておく。そんな体験が、ピンチに陥った時に自分を救ってくれるかもしれない。

(取材協力)
湯浅邦弘(ゆあさ くにひろ)先生
1957年島根県生まれ。大阪大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。大阪大学大学院教授。専攻は中国思想史。NHK『100分 de 名著』にゲスト講師として出演。『菜根譚―中国の処世訓 (中公新書)』『入門 老荘思想 (ちくま新書)』『超入門「中国思想」 (だいわ文庫 B 330-1)』など著書多数。

文/吉野潤子

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