AV女優の人権を守るために一般からの支援を AVAN代表・川奈まり子氏に聞いた

AV女優の人権を守るために一般からの支援を AVAN代表・川奈まり子氏に聞いた

  • しらべぇ
  • 更新日:2016/12/01
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AV女優の「出演強要被害」が社会的に注目されたことを受けて、元・女優で作家の川奈まり子氏が立ち上げた一般社団法人「表現者ネットワーク(AVAN)」。

AV出演者(実演家)の立場に寄り添って、その人権を守り、引退後の人生などをサポートすることもめざしている。

すでに会員登録する女優・男優が増えつつあるが、さらにAV業界外の「一般サポーター」の募集を開始。また、クラウドファンディングも始まった。

現在の活動とクラウドファンディングの目的などについて、川奈氏に話を聞いた。

■アダルトエキスポ(JAE)にも出展した?

川奈:2日間の開催期間中に80人以上の方が一般サポーターに登録してくださいました。立ち寄っていかれた方は、何百人にものぼります。JAEで出展するためにチラシを500枚作ったんですが、1枚も残らずはけてしまいました。

当初は、「楽しいAVのお祭りにシリアスな問題に取り組んでいるAVANのブースなんて場違いだし、誰も足を止めてくださらなくても不思議じゃない、けむたがられるだけなんじゃないか」と予想してたんですよ。

ところが蓋を開けてみたら、「頑張ってください」「期待してます」「応援してます」という言ってくださる方が、本当に多かった。あと、「日本のAVを良くしてください」「安心してAVを見れるようにしてください」という声も少なくありませんでした。

AV出演強要被害の問題に胸を痛めているAVファンが大勢いるんですね。また、労働問題としてAVの問題を捉えている人も複数いらっしゃって、私たちと熱心にお話ししていかれました。

AV出演者が不本意な出演を強いられたり、満足な報酬を得られなかったりというのは、他の業種の個人事業主の労働搾取や低賃金、契約した企業での権利の認められなさと通じる、同じ種類の労働問題でもあるんです。

同業者が、契約した企業の枠を超えて独自にネットワークを構築し、団体を形成して、企業や社会に対して声をあげていく、それによって正当な権利を勝ち得ていくという、バランサーとしてのユニオンは、AV業界に限らず、今、求められていると思いますよ。企業の間で翻弄されて、声をあげることが出来ず、大人しく毛をむしられているしかない状況は、他の業界にもまま見られることでしょう?

女性の来場者も何人もAVANのブースに立ち寄られて、一般サポーターになってくださいました。JAEには、女性のAVファンも、けっこういらっしゃってたんですよ。韓国や台湾から来た海外のAVファンとも交流しました。海外でもAV出演強要被害の問題は報道されていて、驚いたことには、私のことも知ってくださっているんですね。

■なぜクラウドファンディングを活用?

川奈:AVANは非営利団体で、会費の徴収を開始する来春までは、運営資金を寄付でまかなっています。
ホームページを介して常に寄付を募ってきましたが、まだまだ認知度が低い。そこで、人気のあるREADYFORさんのクラウドファウンディングなら幅広く注目を集めることができるのではないかと思いました。

READYFORは人権や福祉に関わるチャレンジをよく扱っていて、社会問題に関心がある人々に対して存在をアピールできるのではないかという期待もあります。「AV出演強要被害問題」の、AV出演の当事者側から見た、これまで報道されてきたものとは違う側面を、広く皆さんに知っていただくチャンスでもあると考えたんです。

もちろん、今現在、実際にお金に困っているからという切実な理由もあるわけですけど、もしも支援額がゴールに到達できるほど集められなくても、挑戦する価値はあるんじゃないかな、と。

■AVファンにどんなことを期待したい?

川奈:ご支援いただけるだけでありがたく、こちらからは、期待なんておこがましいことは言えないように思うのですが......。

表現の自由について、差別について、労働問題について、社会的な階層間の断絶についてなど、AV問題には現代の日本が抱える複数の課題が凝縮されていますから、強いて言えば、AVANの活動に関心を持ったことをきっかけにして、いつもよりちょっとだけ視野を広げて、色々なことを考えていただけたらいいなぁと思ってます。

ことに、この問題が始まった今年3月の時点から、「階層間の断絶」は本当に深刻で、なんとかしなければいけないと危機感を抱いていて......。断絶の例をあげますと、AVが好きでよく見ているという方でも、AVに出演したり制作したりする人たちは、ご自分からは遠い存在で、あくまで画面の中だけにいるものだと感じていることが多いと思うのです。

見ない、嫌いだという人にとっては、AV実演家はさらに遠い、異星人か何かのように感じられていて、恐怖や侮蔑、あるいは無視の対象にされがちでしょう。こういうことはAVに限らず、社会の各層に見られることですよね?

自分とはまったく違う職業、異なる収入層、あるいは人種や居住地域が違うときに、断絶が生じて、お互いに想像力が欠如してしまうということが起こる。社会の中で、完全に住み分けてしまうんです。物理的にも、心理的にも。

そうなると、お互い、想像しないほうがラクなんですよ。ふだんの生活を送るうえでは、身近にいない人たちについては思いやる必要もないし。大概の大人は忙しくて、余計なことに構わないほうが面倒がなくていいんです。

本音では、AVの実演家なんて、自分や家族からはなるべく遠ざけて、出来れば国に排除してもらった方が安心できると思っているという人もいると思います。でも、少し考えれば日本は民主主義国なんですから、排除すると言ったって「どこかへ集団が移動するだけ」だということは想像がつくはずです。

職にあぶれた、自分たちを排除した社会の他の層に対して恨みをためた人々の群れが、街にあふれるわけです。しかもそれまでは彼らはそれなりに納税もして日本経済を循環させていたのに、彼らは無収入になって、税収が減り、アウトローが街に増える。

こうして、結局は自分のところまで跳ね返ってくるんですよ。だから、AVANの一般会員になったりクラウドファウンディングに参加してくださったりする方というのは、心が優しいというだけではなく、思慮深くて、たいへん勇気がある人たちだと思うのです。

違う階層からあえて接近してきてくださったわけですから、とても勇敢です。その勇気を、AV問題に限らず、さまざまな場所で広めていってくださると素晴らしいと思います。世の中が良くなるかもしれませんから。今、世間にいちばん足りないのは勇気だと思うので。

■プロジェクト全般に対してファンの反応は?

川奈:AVファンの皆さんは、AVANを知ってくださっている方がとても多いという印象ですが、その上で、やはり2つに分かれていると思います。AVの楽しみだけを享受したくてシリアスな問題からはなるべく目を背けていたい、だからAVANの情報には興味がないという人たちと、「積極的に応援したい」と言ってくださる人たち。

ツイッターでの反応を見ていると、最初は前者であっても、多くの情報に触れるうちに、後者に変わることもあるように感じます。これからもAVを楽しみたいけれど、そのためにはAV業界が存続してもらわないといけない、じゃあ仕方がないから応援しようか......というふうに心境が変化してくるんですね。

イヤイヤ応援する、しょうがないから応援する、そういう方もいるんじゃないかと思いますが、応援してくださるだけでありがたいことですし、また、それだけ日本のAVは愛されているんだなぁと実感することでもあります。

AVが愛されているのは、嬉しいですよ。AVというのは表現の幅が広くて、テレビみたいにひとつの媒体なんですよ。テレビにはニュースもバラエティもあり、傾向はあっても型がないでしょう。AVにも流行はあるけれど型は決まっていなくて、本番にこだわって語りたがる人が見ない人になぜか多いけれど、本番があろうがなかろうが、ただ、法律が許すギリギリまで、「こうじゃなきゃいけない」というルールを撤廃した映像作品がAVだというだけのことなんです。

だから、AVは表現の自由を象徴する存在だとも言えるわけで、それが、私がAVを愛している理由です。
愛していると言っても、私はAVはふだんほとんど見ないんです。でもAVができるだけ自由に作れて存在しつづける状況が望ましいと思うのです。

表現の自由は、民の自由ですから、その象徴物が消えるということは、民主主義の火を吹き消すことに等しいでしょう。たとえ見なくても、嫌いでも、AVは在り続けさせる価値があるんです。ゾーニングとレイティングと、出演者の人権への配慮は欠かせませんが。

■AV業界の反応は?

川奈:業界の反応は、まちまちです。大手メーカーの役員クラスの人たちは、関心は当然高いし、設立当初からAVANを応援してくださっています。ではそれらメーカーの社員さんたちはどうかというと、日々の業務に追われていて、AVANが何かもよく知らなかったりします。

残念ながら、「なんか騒いでるよね」という程度の人も、今でも大勢いるのでは......。出演者や監督、ADさんたちやカメラマン、メイクさんにしても同様で、とくにニュースなどをよく見ている人たちは、AVANを応援したり参加したりしてくださるけれど、そうでない人たちもいまだに多いし、誤解もあります。

「参加すると、メーカーに睨まれて仕事が減るんじゃないか」とか、「うんと金を取られるんだろう」とか誤解されてもいるようで。誤解している人に会う機会があって直接説明すると、すぐに納得して、応援してくださるようになるんですが、まだまだ、隅々までは理解が届いていないと感じることがあります。

「利権団体なんじゃないか」とか。出演者の人からそんなことを言われると、ちょっと切ないですね。AV実演家からは来年の3月末まで会費を徴収しませんし、4月以降も年会費2400円、登録料600円で、他に費用はかかりません。会費は安く、メリットは大きくというのが理想です。

AVANは、同人AVの監督さんやフリーの女優さんも、会員登録していただけるんですけど、そういうこともまだよく知られていません。プロダクションからは、女優に対してメリットを提示しづらいという苦情も受けていますが、まだ準備段階で、サービスを提供できないから無料にしているわけなので、そこはご理解いただきたいところです。

団体として人数がまとまらなければ、医療機関や保険などの分野では提携が進まず、よけいにメリットを生むことが難しくなってしまいます。今はタダなので、とりあえず会員になって、積極的に「こんなサービスがあったらいい」といった要望を寄せてください、と、お願いしているところです。

現時点ではファンも業界もこぞって応援してくれているという状況ではないのですが、時間が経つにつれてじわじわと理解が進むはずだと確信しています。認知度を上げる努力、活動内容を外部に知らせる努力や工夫をしていけば、必ずや良いほうへ変化していくと思います。

■AVAN会員の現役女優・男優の声

すでに会員登録を済ませた現役女優・男優にも話を聞いてみた。

「安心してAVのお仕事をしていきたいなと思いAVANに登録しました。一緒に活動していけたら嬉しいです」女優・マルチパフォーマー 若林美保

「モザイクの向こう側に行きたいと男優に応募してからあっという間に17年が経ちました。その間ずっとAV業界を内側から見ることになったのですが、中では色々な変化があり、それらに伴い僕たちの意識も変化していきました。

でもどうやらその変化は外側からは見えづらく、意識自体が甘いものでした。AV業界が生き残っていくには、今のままではいられないと危機感を持っています。AVが社会の一部として存続していくために、皆さまのお声と御支援が必要です。どうか僕たちにお力を貸してください」AV男優 森林原人

AVANのクラウドファンディングは残り50日で、現状は目標の4割ほど。支援と注目が集まることを期待したい。

・合わせて読みたい→わいせつとは? 日本の性表現の問題点は? 川奈まり子・ろくでなし子が激論

(取材・文/しらべぇ編集部・タカハシマコト取材協力/AVAN代表・川奈まり子森林原人若林美保

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