全米トップの男子中学、衝撃の環境と教育内容

全米トップの男子中学、衝撃の環境と教育内容

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2019/05/09
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せっかく近所まで行くのだから、という程度の軽い気持ちで、ボストンから西へ2時間足を伸ばし、イーグルブルック(Eaglebrook School)という全米屈指の「全寮制男子中学校」を訪ねてみた。

フィリップス・エクセター(Phillips Exeter)、アンドーバー(Andover)、チョート(Choate)など、東海岸の名門全寮制高校は相当数訪問していたこともあり、この訪問が衝撃的な経験になろうとは、その時は思ってもみなかった。

イーグルブルックを知ったのは、数年前、ある教育コラムニストの記事で全米トップ5の寮制中学校(junior boarding school)として紹介されていたのを読んだ時である。1922年に設立された東海岸の名門男子校、という響きから、歴史も伝統もあるけれど今の時代から取り残された古臭い匂いさえ漂ってきたのを覚えている。

ところが、キャンパスに一歩足を踏み入れた時から、私の印象は大きく覆されることになる。

大自然の中で育まれる、逞しくも優しい身体と心

イーグルブルックはボストンから西へ2時間、ディアフィールド・アカデミー(Deerfield Academy)という名門高校の向かい側、山の中腹にあった。G6-G9(小6年〜中3年)男子250人が寮生活を営むこの中学は、800エーカー(約98万坪、東京ドーム約70個分)の広大な敷地を有し、キャンパス内にサッカー場や屋内プールだけでなく、スキー場や釣りのできる湖まである。

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全米の一部ボーディングハイスクール(高校)は、1000人近い生徒を抱え、日本の大学も顔負けの施設を有することで知られているが、ここは生徒数わずか250人の中学である。

軽い気持ちで大変なところへ学校訪問に来てしまった、と若干気持ちが怯んだのも束の間。キャンパス内で迷子になっていた私を見るなり、まだ表情にあどけなさが残る一人の生徒が、風景写生の手を休めて道案内に来てくれた。

世界中行く先々で評判の学校を訪問するのが趣味のようになっている私だが、イーグルブルックでは、キャンパスを一周して数十人の生徒に会う中で、生徒たちの精悍だが優しさに溢れる瞳が最も印象に残った。

たった一人の日本人生徒

私のキャンパスツアーを担当してくれたのは、全校でたった一人という日本人生徒、桐淵慶さん。さぞかし海外生活が長いのだろうと思って聞いてみると、埼玉県の私立小学校に在学中、高学年からインターナショナルスクールへ転校。中学校2年生から、自らの意思で東海岸のいくつかの学校を受験し、イーグルブルックに編入して来たというから驚いた。

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彼は編入理由について以下のように語ってくれた。

「最初にインターナショナルスクールに行くのを決めたときは、ただ漠然と英語を習いたい、もっとたくさんの国の人の関わりたい、それだけでした。その後、中学から海外に行くことを薦めてくれたのは親でした。インターナショナルスクールでは、最初は英語で思うように表現できず苦労しましたが、日が経つに連れて授業にもついていけるようになり、友達も増えました。その後ですね、自分で海外に留学したいと思うようになったのは」

何度か色々な学校のサマースクールに行き、その中で第一候補となったのがイーグルブルックだったという。

「学校所有のスキー場と広大な敷地、数々の設備。サマースクールでの刺激的な日々と温かい先生や生徒、どれも魅力的でした。特に惹かれたのが、このハイレベルな学校に日本人が一人も居ないということ。この学校では日本ではできなかった、教えてもらえなかったことをたくさん学べるのではないかと思いました」

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慶さんに連れられてダイニングホールへ行くと、そこはさながらハリーポッターの世界。入り口には、こんなもの今時使うの? と思うような、重厚な鉛のダイアルロック式の郵便受け。高い天井の食堂では、既に昼食の準備が始まっていたため、カトラリーと真っ白なナプキンが整然とテーブルに並べ始められているところだった。

偶然にもそこに通りかかったのが、Andrew Chase学長。彼は意外にも、頻繁に日本はじめアジア諸国へ足を運んでいるという。なぜか。アジアのいわゆる「エリート校」の生徒たちが、あまりに国外の事情に疎いことを憂え、彼らに少しでも外の空気を吸ってもらいたいと、各国に散らばる卒業生たちと奔走しているのだ。

13日間・約55万円で学校を体験

毎年8月の初旬には、イーグルブルックの広大なキャンパスを舞台に、12-15歳を対象とした「Global Leadership Program」が繰り広げられる。アジアから来る男女が対象で、今年も2年目にして、日本の某名門男子中学校から数名の参加者が見込まれているという。

参加費は、13日間で5000ドル(宿泊費、食費、ボストン見学や様々なキャンパス外でのアクティビティー等の日帰り修学旅行も込み)と決して安くはないが、日本の学校しか見たことがない中学生にとっては、世界に視野を向ける良い機会になるはずだ。

私たちUWC ISAK Japanが運営するサマースクールは、毎年7月下旬の2週間。今年は既に何倍もの倍率の中、参加者の選考を終えているが、イーグルブルックの「Global Leadership Program」はまだ参加者募集中とのこと。今夏の予定が決まっていない中学生は、選択肢の一つとしてぜひ考えてみてはどうかと思う。

イーグルブルックでは、小6から中3まで、それぞれの成長過程にあわせた教育テーマを掲げている。小6から順に、「Exploring(幅広い分野の探求)」「Understanding(自らを知り他者を知る)」「Growing(能動的な自己能力開発)」「Leading(リーダーシップ)」の4つだ。

話を聞く中で慶さんは、「日本だと部活は1つ選んで3年間ずっと一緒。もっと色々なことに挑戦したかった」と語っていた。

無論3年間一つの競技に打ち込むことで培われる力もあると思うが、様々な興味対象を「Explore」できるのは、イーグルブルックに限らず海外の学校の多くに共通した特長だ。学期ごとにスポーツを選び、それぞれ本格的に取り組み、他校との試合などもシーズンごとに行われる。

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ここではさらに、ロボティクス、木工、陶芸、絵画、オーケストラなど文化系のアクティビティも多数あり、それぞれにプロの専門家や芸術家が指導にあたる充実ぶりである。この全てを「習い事」として東京でプロに師事したら、いったいいくらかかるのだろう……などと考えてしまうのは、庶民的な私の悪いクセだろうか(笑)。

オーナーシップもリーダーシップも

理科の各実験室の充実ぶりも凄まじかった。生物の部屋では、なんと生徒がサラマンダー(サンショウウオ)を飼育している。UnderstandingとGrowing(中1、中2)のステージで、生徒たちが次第に自らの興味分野で学びのオーナーシップをとって行く様子を、垣間見た気がした。

また、全校集会をするオーディトリアムでは、最高学年であるLeadership(中3)のステージに在籍する生徒は全員、必ず毎朝順番でスピーチをしなくてはならないという。寮で下級生の面倒をみるのも最高学年の責任だ。日本ではとかく部活や生徒会、運動会などで自然発生的に起こっているリーダーシップをとる機会が、ここではかなり意図的にちりばめられていることに、教育の現場にいる者として深く感銘を受けた。

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編入から半年を経た慶さんに学校の魅力を聞くと、次のように語ってくれた。

「毎日学ぶことがあります。寮生活での友達や先生との付き合い、陶芸やウェブサイトデザイン。特に学びが多いのは1カ月に1〜2回あるHilly Chase。毎回なんらかのプロフェッショナルをお呼びして、体験談や技を披露いただくというものです。過去にはヨーヨーのプロから語り部まで幅広い方が来ています。見ていて楽しいものから、聞いていて考えさせられるものまで沢山ありました」

イーグルブルックの卒業生たちは、近隣にあるディアフィールドに限らず、アメリカの東海岸や西海岸のトップボーディングハイスクールへと進学している。

こうした経験を積んだ中学生たちが、ユナイテッド・ワールド・カレッジ(UWC)が提供する「国籍だけでない真の多様性」や、我々ISAKのキャンパスで提供する「自らイニシアチブをとる可能性」に触れたときに、どんな化学反応を起こすのだろう……。そう思いを馳せながら帰国の途についた。

連載:日本と世界の「教育のこれから」

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