日野自動車とVWトラック&バスが提携、少し違和感も過去に布石あり

日野自動車とVWトラック&バスが提携、少し違和感も過去に布石あり

  • マイナビニュース
  • 更新日:2018/04/17
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●日野の親会社トヨタはVWと世界覇権を競う間柄だが…

トヨタ子会社の日野自動車とフォルクスワーゲン(VW)商用車部門のVWトラック&バスが提携に向かう。トヨタとVWは自動車販売で覇権を競う間柄であるだけに、この話には少し違和感を覚えた人がいたかもしれない。しかし両社には、提携への布石ともいうべき過去がある。

○トヨタ子会社とVWの商用車部門が手を組む理由

日野自動車と独フォルクスワーゲン(VW)の商用車部門を統括するVWトラック&バスは4月12日、継続性のある戦略的協力関係の構築に向けた合意書に調印し、両社トップによる記者会見を行った。

日野とVWトラック&バスは今後、「物流/交通ソリューションの研究」「既存および将来技術」「調達、販売/サービス」と幅広い領域で具体的な協業の検討を開始することになった。

いうまでもなく、日野はトヨタ自動車の子会社であり、トヨタグループの商用車メーカーという位置づけにある。一方、VWトラック&バスは2015年にVWグループの商用車メーカーである独MAN、スウェーデンのスカニア、VW南米の統括会社として再編された企業だ。VWは今回、社長交代とともにグループの事業組織を4つに分割。その中で、商用車事業を担うことになったのがVWトラック&バスだ。

それでは、なぜトヨタ子会社の日野とVWの商用車事業を担うVWトラック&バスが手を握るのか。トヨタとVWは世界覇権を競うライバルなのに、という疑問が起きるのは当然だろう。

○技術革新への対応を迫られる商用車

確かにトヨタとVWは、20世紀に世界の自動車産業をリードしてきた米国のGM、フォード、クライスラーに取って代わり、世界覇権を競っている。2008年にトヨタが世界販売首位の座を奪還すれば、ここ2年はVWがトヨタを抜いて世界1位を確保している。

しかし、ここへきて自動車業界は“100年に一度の大変革期”を迎え、乗用車とは異なる要素が求められる商用車の分野でも、大変革の波に対応していく必要に迫られる事態となっていた。VWとの提携が明らかになる前に筆者は、日野自動車の下義生社長にインタビューしているが、その際にも「外部環境の急激な変化、輸送価値の多様化にしっかりと対応していくことこそ、生き残りへの持続的成長につながる」ことを強調していた。

日本のトラックメーカーは日野、いすゞ自動車、三菱ふそうトラック・バス、UDトラックスの「大型4社」だが、三菱ふそうは独ダイムラーの100%子会社であり、UDトラックスはボルボトラック(スウェーデン)の100%子会社という状況だ。

今回、日野がVWトラック&バスとの提携を決めたのは、トヨタとしても商用車事業の方向を日野に託したということであり、世界市場での競争と協調を進めていく方針に沿った動きでもあるのだろう。

●かつてはスカニアと販売提携を結んだ日野自動車

○日野の下社長は異色のキャリア

日野は国内トラックメーカーとして最大手であり、トヨタ自動車が50.1%を出資して連結対象子会社とし、トヨタグループの商用車メーカーと位置づけている。

日野のトップは、このところトヨタから送り込まれるのが通例となっていたが、昨2017年6月に就任した下義生社長は日野のプロパーだ。商品企画や海外事業などを担当し、社長就任の1年前にはトヨタに出向して同社常務役員に就任。戦略副社長会事務局統括など、トヨタの中枢で修行してきた異色のキャリアを持つ。つまり、トヨタグループの日野を率いるためにトヨタで勉強してきたのであり、今回のVWトラック&バスとの提携も、トヨタとの連動の中で踏み切ったものといえよう。

また日野としては、昨今のeコマースの拡大による宅配事業の深刻なドライバー不足や、長時間勤務を背景とする事故の誘発など、輸送業界が抱える多様な「物流危機」に対応する必要があるし、商用車に求められる輸送価値の多様化や、新たな物流を支える方向への課題なども抱えていた。

○VWで社長交代、事業再編の流れが商用車にも波及

一方のVWは、グループ傘下に12のブランドを抱える。乗用車はVWのほかアウディ、ポルシェ、シュコダ、セアト、ランボルギーニなどであり、商用車はMANとスカニアだ。一時はMANとスカニアが合併交渉を進めたが、物別れとなったいきさつもある。

このうちスカニアには、かつて日野と協業提携した因縁もあるのだ。日野とスカニアは2002年に提携を結び、日本市場ではスカニアのトラクターヘッドを日野ブランドで販売した。この関係は2011年の提携解消まで続いた。

この日野とスカニアの提携は、資本提携交渉に及んだ時期もあっただけに、今回の提携話の布石のようなものであったことは確かである。

またVW本社は、日野とVWトラック&バスの提携に合わせるように、社長交代を13日に発表。マティアス・ミュラー社長の任期が残る中、後任にヘルベルト・ディース氏が就任した。2015年のディーゼル不正発覚後に登板し、V字回復を達成したミュラー体制だったが、これからはBMW出身のディース体制に移行するわけだ。

ディース体制のVWは早速、事業組織の再編を打ち出した。傘下12ブランドを大衆車、高級車、スポーツカー・スーパーカー、トラック・バスの4組織に再編し、電動化、自動運転、サービス化の異次元競争に対応していくというのだ。

その中にあって、トラック・バスの商用車事業については、VWトラック&バスの株式を上場して商用車統括会社としての位置づけを強める方向であり、この流れの中に日野との提携も組み込まれているようだ。

●商用車でも電動化と自動化がトレンドに

○既存内燃機関が主体のトラック・バスは変わるか

日野の下社長は、今回の提携会見で「eコマースなどの急速な普及による深刻なドライバー不足、同時にドライバーの高齢化も進んでいる。地方では高齢化が進むと同時に、電車やバスの路線が廃止され、『移動』に苦労されている人たちが増えている。これまでと同じ価値の提供では、これからのお客様のニーズには応えられない。そうした強い危機感をVWトラック&バスと日野は共有している。お互いの力を合わせ、社会の課題を先頭に立って解決していく」と社会ニーズへの物流対応を強調した。

また、VWトラック&バスのレンシュラーCEOは、「今回の協力関係は先駆的なものになる。世界の輸送業界で存在感を示す企業間の協力関係だ。技術的な協力領域の主体はパワートレーンで、既存の内燃パワートレーン、ハイブリッドおよび電動パワートレーンとなる。また、コネクティビティ技術や自動運転などの成長領域でも協力していく」と語った。

トラック・バスは既存内燃機関のディーゼルが主体であり、世界の環境・燃費規制にも対応していく必要がある。さらに電動化や自動運転、コネクティビティも商用車ならではの方向を求めていかねばならない。ある意味で、社会の役割のためにもオープンな協業の方向に進んでいくのかもしれない。

○日本のトラック業界に変化、気になるいすゞの動向

日本のトラックメーカー4社は、ダイムラー傘下の三菱ふそうとボルボトラック傘下のUDトラックスに対し、トヨタ子会社の日野があり、かつてはGMとの資本提携関係が長かったいすゞについては現在、トヨタの資本出資を受けてトヨタグループに入っている。つまり、2社がプロパー、2社が外資という状況だ。

日野といすゞは、そもそもの発祥が東京瓦斯電気工業で分離したいきさつもあり、現在、両社は「ジェイ・バス」として合弁バス事業を展開する間柄にある。今回、日野がVWトラック&バスと包括提携に入ったことで、いすゞの動向が注目されることになる。

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