ケネディ前大使が語った「ゴミは中国、漁業は日本よ」の意味とは

ケネディ前大使が語った「ゴミは中国、漁業は日本よ」の意味とは

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/10/12
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ここに掲げた「クジラが打ち上げられた写真」をニュースで時々見かけることはないだろうか?

海外だけでなく、今年も宮崎や鹿児島で同じようなことが起きている。原因については、解体された胃袋の中から大量のビニール袋やプラスチックごみが見つかり、消化器系が損傷したとか、あるいは海底の掘削やタンカーのスクリュー音が障害を引き起こしているとか、気候変動の影響だとか、さまざまなことが言われている。

いずれにせよ人間が原因を作っていることには変わりない。

海は地球の3分の2を占める。さて、この海について高い関心と知見をお持ちのキャロライン・ケネディ氏が駐日大使として東京に赴任されていた間、私は同窓ということもあり、何度となくアメリカ大使館主催の海洋環境に関する食事会や会議にお声掛けいただいた。なかでも、ケネディ大使との会話の中で、とりわけ忘れることができない言葉がある。

「ゴミは中国、漁業は日本よ」

この言葉の意味を解き明かすことからこの連載を始めてみたい。

「マイクロプラスティック化」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

海に捨てられたプラスチックごみが、海中でどんどん壊れていって微粒になることだ。これにより、微粒のプラスチックが海洋生物の体の中から発見されるようになった。海の問題はこれだけではない。地球温暖化とそれに伴う海水の酸性化と水温上昇、乱獲および違法漁業など水産業による資源の枯渇……海洋環境の劣化は、近年著しくなっているのである。

海は人類共有の財産である。陸には高いフェンスを建てられても、海に国境は引けない。海洋環境問題は世界規模で各国が連携して解決しなければならない。

ここで注目されているのは、世界のセレブたちの動きだ。

レオナルド・ディカプリオは海洋環境に特化した財団Oceans 5に加盟した。イギリスのチャールズ皇太子やモナコのアルベール皇子は海洋経済発展への提言し、欧米ではすでに政府主導の海洋環境保護への取り組みやNGO、財団による活発な活動が展開されている。

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国連で地球温暖化についてスピーチをするレオナルド・ディカプリオ(Photo by Getty Images)

ロックフェラー家の当主でありロックフェラー&カンパニー会長のディビッド・ロックフェラーも、The Pew Charitable Trustsの会合に参加したことで啓蒙を受け、自らも海洋環境保護のNGO、セイラーズフォーザシーを設立するに至った。

私のアメリカの親友、ディビッド・ロックフェラー夫人のスーザンは、筋金入りの海洋環境保護活動家である。私は彼女の薫陶を受けて2009年から海洋環境保護活動に注力し始めた。それが「セイラーズフォーザシー日本支局」の設立に至った原点だ。

前述したキャロライン・ケネディ氏もご子息のジョンと共に海洋環境保護に注力されている。APECハイレベルディナーの折にマイクロプラスティック問題を話し合っていたときのケネディ氏の発言が、前述の「ゴミは中国、漁業は日本よ」だったのだ。

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これは、「中国はゴミ問題」「日本は水産資源」の改善に責任を持つべき、という意味である。では、なぜ日本人が水産資源の持続可能な消費にコミットするべきなのか。

海の中の出来事は普段日常生活で目にすることもなく実感が薄いが、海洋資源の枯渇は深刻だ。特に日本の漁獲量は減少の一途を辿り、2015年の年間漁獲量は約350万トンで、1984年の約1280万トンに対し3分の1以下である。

日本のEEZ圏内は全世界の海洋生物の15%もが生息する豊かな漁場にもかかわらず、水産資源量が高位にあるのはわずか16.7%である。トラフグ、ニシン、ホッケをはじめ、全体の半数がすでに枯渇状況にある。さらに2014年以降この海域を回遊する二ホンウナギと太平洋クロマグロは国際自然保護連合(IUCN)の絶滅危惧種に指定された。

太平洋クロマグロは日本のEEZに産卵場がある上、世界の総漁獲量の3分の2を日本が漁獲していることを鑑みても、初期資源量から97.4%も減少し、絶滅危惧種に追いやられたのは日本の責任が大であることを認めなければならない。

ウナギの状況はさらに深刻だ。日本で消費されているウナギの約99%は養殖に頼っている。養殖では稚魚を捕獲して池入れを行うので、それらの稚魚は当然自然界に次世代を残せず、資源は減少の一途を辿った。その養殖に利用されている稚魚の7割もが、違法漁業によるものとされる。過剰漁獲に加え、IUUの問題が深刻なのだ。IUUとは、Illegal(違法)・Unreported(無報告)・Unregulated(無規制)の漁業問題であり、ウナギやサメが典型的な対象魚だ。

水産政策は速やかなる改革が必要だ。漁獲量の減少に伴い、日本では漁業も衰退産業化している。日本の漁業者の平均年収が約200万円と言われる中、漁村の存続問題も深刻である。水産先進国ノルウェーでは漁民の年収が1000万超とも言われている。ではその違いはどのようにして生じるのだろうか。

欧米の水産先進諸国は持続可能な水産資源の利用のため漁獲可能総量(TAC)をもとに個別漁獲量を管理する「IQ」や個別漁獲量を売買できる「ITQ」方式へと転換した。一方日本はいまだに早い者勝ちで乱獲を招く「オリンピック方式」を採用し続けているのだ。TACの設定魚種も日本は7種。アメリカの528種と比べるまでもなく極端に少ない。TAC設定数を増加させなければ有効なIQ導入は実現しない。

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築地市場のマグロの初競り(Photo by Getty Images)

欧米ではすでに認知されている持続可能な漁業、持続可能なシーフードの消費の重要性。日本は周回遅れながらもクロマグロの資源についてようやく今年になって2034年までに現在の1万7千トンから13万トンまで回復させる国際合意に至った。意欲的な漁業者もあり、NGOによる消費者やステークホルダーへの意識啓蒙も幕を開けた。アカデミアや企業も含めオールジャパンでの取り組みが不可欠だ。

水産資源の問題はなかなか根深く一筋縄ではいかない様相を呈しているが、今後は持続可能性を付加価値とするトレンドセットが必要だ。2020年のオリンピック・パラリンピックの調達方針は国連の基準を満たしておらず見直しが迫られている。豊洲問題は、どこで売るかが決まったら、次は何を売るかだ。政策改善と市民啓蒙は車軸の両輪として相乗効果を生むはずだ。

国連の提唱する持続可能な開発目標・SDGsの14番が「海を守ろう」だ。すべては子供たちに美しい地球を手渡すために。現代を生きる我々の責任は重い。

この連載では、海洋環境保護NGOの立場から、持続可能な社会の実現に向けていま日本がとるべき道を考察していきたい。

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