コンテンツマネジメントで実現するワークスタイル変革とセキュリティ強化 (1) クラウドの最新状況とSaaSのメリット

コンテンツマネジメントで実現するワークスタイル変革とセキュリティ強化 (1) クラウドの最新状況とSaaSのメリット

  • マイナビニュース
  • 更新日:2016/12/01

クラウドのカテゴリー

「クラウド」と一口に言っても、IaaS/PaaS/SaaSという3つのカテゴリーがあります。IaaSは簡単に言うとOSだけがインストールされた仮想サーバをまっさらな状態で利用できるサービスで、即座に環境を用意できてインフラ管理をベンダーにお任せできるメリットがあります。

調査会社のシナジーリサーチグループによると、2016年秋の時点でAWS(Amazon Web Services)が45%という圧倒的なシェアを誇っています。PaaSはOSに加えてWebアプリケションサーバやデータベースといったミドルウェアのレイヤーまで含んだサービスで、開発者がアプリケーションの開発に集中できるというメリットはあるのですが、PaaSベンダーの制約事項がそれなりにあるため、IaaSに自分たちの好きなミドルウェアをインストールして活用している例も多いようです。これらIaaSとPaaSはシステム部門向けのサービスと言えます。

それに対して、SaaSはアプリケーションを提供するサービスのため業務部門向けです。従来のITの仕組みだと業務部門で利用するアプリケーションでも必ずシステム部門が管理する必要がありましたが、SaaSの登場により業務部門で意志決定を行って予算も業務部門が負担し、システム部門には話を通す程度でSaaSを調達して、その管理に関しても業務部門に1人だけ管理者を立てて運用しているといった例が増えています。

SaaSの基本的なメリット

なぜそのような例が増えてきたかというと、SaaSには以下のようなメリットがあるからです。

導入の容易さ

従来のシステム開発の場合、サーバの調達からはじまり、システムの要件定義、設計、開発、テストなどに1年単位で時間がかかることもザラにありました。SaaSの場合、アプリケーションの種類にもよりますが3カ月程度でカスタマイズが完了するため、すぐに使い出すことができます。

そのカスタマイズもコーディングは不要で、すべて設定レベルで完了します。そのためシステム部門のメンバー頼らなくても、業務部門に少しITに詳しいメンバーがいれば管理を任せることも可能です。ただし、基幹システムなど他システムとのデータ連携が発生したり、シングルサインオンの実装を行う場合はシステム部門の支援は必須になります。

SaaSは一般的に「1ユーザあたり月額いくら」という課金体系のため必要な数だけ契約すればよく、初期費用は低く抑えられます。初期設定に関しても、マウスのクリックレベルで設定が可能たなめ、SaaSベンダーやそのパートナー企業の導入支援サービスを利用しても従来のシステム開発に比べたら低い費用で済みます。まれに導入支援サービスの費用を出し惜しみして自社でやろうとする企業もありますが、ベンダーが持つベストプラクティスを活用して最良の実装が最短期間で可能になるためサービスを購入することをオススメします。

SaaSはすぐにプロトタイプが作れて設定変更も簡単なため、あとで変わってもよいという前提で最初に一通り設計を済ませたら、あとは週次のペースで数回ほどレビューの打ち合わせを行って徐々に完成度を高めていくというアジャイル型のアプローチをとります。途中で実際に画面を見たり動作を確認して軌道修正ができるので、いざ完成したら求めていたものと全然違っていたというリスクを負うことはありません。

意外と忘れがちですが「時間」という概念は非常に重要で、新しいシステムをリリースするのに3カ月要するのと1年要するのでは3年後に出せているはずの成果は違ってきますので(より生産性高く業務を行ったり新しいビジネスモデルを実現できるシステムが9カ月も使えないと考えられます)、短期間で実装できるSaaSはそういった意味でも価値が高いといえます。

メンテナンスの容易さ

SaaSは利用し続ける限りランニング費用を支払い続ける必要がありますが、サーバやアプリケーションの運用はすべてSaaSベンダーが責任を持って行うため、自社でシステムの運用管理を行う必要がなくなります。

サービスの可用性やセキュリティの高さに関しては、SaaSベンダーごとに差はありますがシェアが高いベンダーであれば多くのお客様が信頼して利用しているということになるため、まず安心できるレベルにあります。

仮に1件でも情報漏洩事件が発生したり頻繁にサービスが落ちて利用できないといった状態になると、そのSaaSベンダーの信用がなくなり顧客離反が一斉に起こるので大手のSaaSベンダーは数十億円~数百億円というレベルで可用性やセキュリティ対策に投資をしています。自社だけでセキュリティにそれだけの投資を行うのは不可能なので、セキュリティという観点でも定評のあるSaaSを利用することにはメリットがあります。

SaaSは無償で定期的に機能追加をして使えるため、常に時代の最先端の技術を利用し続けることができます。従来のシステム開発の場合はリリースした時点を頂点として時がたつほど古臭いシステムになっていくため、ITを武器に生産性の高い仕事をしたい業務部門としてはSaaSのほうが好都合なはずです。

SaaSベンダーのビジネスの生命線は契約の継続率なので、ログイン率など利用状況のデータを参照しながら顧客ごとに最適な活用支援のアドバイスや新機能の紹介を行ってくれる定着化支援部隊(CSM:カスタマーサクセスマネジャー)を持っていることもSaaSならではのメリットです。オンプレミス型のパッケージ製品の場合は契約時に一括でライセンス費用を支払うモデルのため、どうしても既存顧客へのフォローがおろそかになりがちな面はあると思います。

SaaSの本質的なメリットは「事業価値の創造」

「SaaSはランニング費用を支払い続けるため、5年という期間で考えたら既存のオンプレミスシステムのほうが安く済むのでわざわざシステムを切り替える必要がない」という声を聞くことがありますが、それはITを課題解決やイノベーションを起こすために必要な投資ではなく単なるコストとしか見ていない考え方です。

もちろんコスト削減に大きく貢献するケースもあるのですが、SaaSのメリットは本来コスト面にあるわけではなく、時流に合った最新のバージョンアップ機能やカスタマイズの容易性を活かして、定期的に変わっていく業務要件にシステムを合わせたり適用領域を広げていけることによる「事業価値の創造」にあります。

経営的な観点でいうと、SaaSは従来のIT投資とは違い初回に大きな出費がないのでキャシュフロー上のメリットがあるのと、ユーザ数によるシンプルな課金体系なのでサーバリプレースやソフトウェアのバージョンアップなどにかかる費用は考慮する必要がなく、将来のコストが見える化できるため予算を組みやすくなります。

通常、SaaSベンダーは数回のヒアリングを通して顧客の課題を整理し、自社のサービスでどのように課題を解決できるのか、その効果を定量的なものだけでなく数字では表せない定性的なものまで投資対効果の提案を行いますので、提案を受ける側もコストより大事なポイントに着目して投資の判断をしていただければと思います。

ベストオブブリード戦略

このようにSaaSには上記のメリットがあるため、自社での作り込みを極力排除する「クラウドファースト」(さらにいうと「SaaSファースト」)を方針とする企業が増えてきました。たいていのSaaSはREST APIという非常にシンプルで実装しやすいAPIを公開しており、連携用のプログラムを実装したりEAIのような連携ツールを利用することでシステム間のデータ連携が比較的容易にできるようになっています。

一昔前はシステム連携を実装するにもかなりの工数がかかっていたので、できるだけシステム連携が発生しないようSAPやOracleのような巨大ベンダーの製品で業務アプリケーションをすべてそろえるという風潮もありましたが、現在は各カテゴリーのベストの製品を利用し、必要に応じてシステム連携するというやり方のほうがメリットが大きいため主流となっています。

各カテゴリーでトップのSaaSベンダーはどこもプラットフォーム戦略をとっており、自社のSaaSと連携可能なアプリケーションをどんどん増やしてエコシステムを築いています。これはユーザの利便性を高めて自社から離れないようにするのが目的です。また、シェアが高いベンダーは顧客数が多いためユーザ会が発達していて、そのSaaSベンダーのユーザー企業同士でベストプラクティスの共有やお悩み相談を随時行っています。

例えば生産性向上としてOffice 365、CRMではSalesforce、コンテンツマネジメントはBoxといったベンダーが各カテゴリーでトップのSaaSベンダーになっています。バックオフィス系のERPは要件が複雑でSaaSのメリットを最大限に享受できないためか、現状ではあまりSaaSが普及していませんが、例えばオンプレミス版のSAP ERPをAWS上で稼動させてインフラ管理の部分だけをクラウドに任せるといった事例は増えてきています。

ご参考までに、下記はBoxで利用しているアプリケーションの一覧です。

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図1. Boxで利用しているアプリケーションの一覧

シングルサインオンの基盤であるOktaにログインするとこの画面が表示されて、アイコンをクリックするだけで該当のアプリケーションにアクセスできます。各カテゴリーでそれぞれ定評のあるアプリケーションを利用しており、まさにベストオブブリードの実践例といえるでしょう。私はBox Japanの社員としてこの環境のおかげで生産性高く仕事ができていると感じているため、ベストオブブリード戦略は企業の競争力を高めるという意味だけでなく、社員の満足度を高めて人材を定着化させる効果もあるのではないかと思います。皆様の企業でも、ぜひ企業価値向上の手段としてSaaSの利用をご検討いただければと思います。

株式会社Box Japan
セールスエンジニアリングマネジャー
志村裕司

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