【復活可能性都市へ】(3)外から風、歯車を回す

【復活可能性都市へ】(3)外から風、歯車を回す

  • 西日本新聞
  • 更新日:2018/01/12
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武家屋敷や商家といった旧城下町のたたずまいが残る宮崎県日南市飫肥(おび)地区で、古民家2軒が昨春、宿に生まれ変わった。

「和風の雰囲気がいい」。うち1軒を訪れた香港からの観光客の男女4人が、県の名勝指定の庭を木張りの居間から眺めながら、くつろいだ。1日1組の貸し切り制で、2人だと1泊約3万円。ネットで中国語や英語でも宣伝し、最近は月の半分が予約で埋まる。

仕掛け人は、米金融大手JPモルガン証券社員から転身して起業した徳永煌季(こうき)(30)。市の町並み再生事業を2年半前に請け負い、石垣や水路が残る町を日々駆け回る。外国語を街角で耳にすることも増えた。

「ここでは自分で町を動かせる可能性がある。やればやるほど面白い」。活用できる物件は、少なくともまだ20軒はある。

県南部に位置する日南市は、九州各地からも交通の便は決してよくない。41年前に九州初の国の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定された飫肥への観光客は、ピークの1996年には年40万人だったが、近年はその半分に落ち込む。

それでも5年前に就任した市長の崎田恭平(38)は「100万人まで伸ばせるはずだ」と飫肥の潜在力を信じる。

日南市には、全国的に注目を集めた「成功例」がある。5年前、油津商店街の再生を民間委託し、住民参加型の多彩なイベントなどを通して、シャッター街に飲食店やIT企業など29のテナントを呼び込んだ。ただ「月90万円」の民間委託料の高さが注目され、快く思わない住民もいた。

崎田は、徳永が公募で選ばれた後、新参者の心得をささやいた。「地元の信頼を得るのが先」。徳永はすぐ、地元の夏祭りで露店の店先に立ち、ジャガイモを揚げながら祭りの裏方とも話し込み、顔を売った。

昨夏、飫肥では45年ぶりとなる企業進出が実現した。広告や映像の企画制作と、それを通じて地域企業を支援する会社「プラスディー」(東京)が日南支社を開設し、地元から6人を雇用した。街づくりに関する講演を全国で年40回こなす崎田に吸い寄せられるように、大手企業出身の小田切俊彦(34)も「飫肥は磨きがいがある」と移住し、食や屋外シネマなどのイベント企画を始めた。

木目調の外観が城下町に溶け込んだ居酒屋。店主の小野雄司(35)は東京から故郷の飫肥に戻り、空き店舗に店を出して6年になる。徳永があいさつに来た際、「うわさの再生請負人だ」とぴんときた。年下とは思えない落ち着きに好感を持った。

ある夜、徳永と連れ立って飲み屋に行くと、中学時代の後輩が小野に絡んできた。「あっち側やっちゃ」。悪気はなかったのかもしれない。が、血が逆流した小野はまくし立てた。「何もせず何かが進んじょって、それでいいのか。後で文句だけ言って終わるのは、おもしろーねーやろ」

小野は最近、秘めた決意を妻に打ち明けた。「俺が古民家で何かやれば…」

外部からの風に、地元も歯車を回し始めた。 =敬称略

=2018/01/10付 西日本新聞朝刊=

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