受賞分野に予算を集中させない

受賞分野に予算を集中させない

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  • 更新日:2017/10/13
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ノーベル賞を受賞したことで、国の研究予算がつきやすくなったが…(※写真はイメージ)

ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥氏が、クラウドファンディングで研究活動資金を募っていることをご存じだろうか? 国による研究費の予算配分が影響しているというのだ。同研究所特定准教授の八代嘉美さんに聞いた。

【写真】ノーベル賞のメダルはこちら

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2012年にCiRAの山中伸弥所長がノーベル賞を受賞したことで、iPS細胞の臨床応用に国の研究予算がつきやすくなり、実用化が加速した。それ自体はよかった。

一方で、課題も残した。

ひとつは、国の実用化政策が戦略性を欠いていたことだ。

実際の治療につながる開発を進めた一方で、実用化に不可欠な、安全性や規制の研究の重要性が認識されず、十分な人や予算が確保されなかった。iPS細胞の臨床応用第1例目となった加齢黄斑変性症の臨床研究では、ここが足かせになった。

研究費の予算配分で国が「選択と集中」をしてしまったことも疑問だ。

大学の管理費や人件費の元となる「基盤的経費」が削減され、研究者は公募に応募して競争的資金を得る必要がある。

だが、国からの研究費でも企業の製品開発のようにあらかじめ最終成果が規定され、進捗(しんちょく)管理も厳密な「委託研究事業」という研究費が増えて、萌芽(ほうが)的な研究をしにくくなった。そのため、臨床応用を目指した研究に偏りがちになった。

再生医療研究でも、研究者は研究費を取りやすそうなテーマに駆り立てられる傾向がある。ひとつのシーズに研究が集中すると、多様性が失われる。生命科学研究はさまざまな分野の技術が互いに支えあっているものなので、ひとつのシーズではなく、その周辺を支える領域に広く予算を配分するべきだった。

いま振り返ると、予算の過剰な集中を避けるためのブレーキ役や、冷静に判断するための方法論がなかった。

「選択と集中」の弊害はすでに出ている。競争的資金は短期間しか予算がつかないので、研究者が育たないし定着しない。瞬間最大風速的には雇う人が増えても、安定雇用ができない。

CiRAの山中所長は、研究時間を削ってまで継続雇用のためにクラウドファンディングや寄付などを募り責任を果たそうとしている。

以前の医学生理学賞は、すでに実用化された過去の研究が受賞していたが、最近は生命科学研究のタイムスパンが短くなり、iPS細胞のようにまだ応用が進んでいないものの受賞も、今後は増えてくるだろう。ノーベル賞受賞のインパクトは大きく、社会認知も広がるため、臨床応用を加速しようという流れになる。

それ自体は悪いことではないが、臨床応用だけに集中投資すると、研究領域の多様性を損ない、新たな研究の芽をつんでしまいかねない。(構成 編集部・長倉克枝)

※AERA 2017年10月16日号

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