「オリコン1位」はなぜ巨大な影響力を持つのか? 編集主幹が明かす

「オリコン1位」はなぜ巨大な影響力を持つのか? 編集主幹が明かす

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/01/23
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かつて、オリコン年間ランキングからは「その年のヒット曲」を振り返ることができた。しかし、複数枚購入する「AKB商法」が広まったことで、「本当の流行歌」が見えなくなった。

実際、2010年代に入ってからのオリコン年間ランキングはすべて、AKB48の楽曲が1位を獲得している。

では、そもそも、なぜCDを売るのか? なぜその売り上げ枚数を競うのか? なぜ勝ち負けがそこに生じるのか? ロングセラー『ヒットの崩壊』より特別公開。

オリコンはなぜ権威となり得たか

10年代に入り、AKB48関連のグループがオリコンランキングを独占するようになった。

そのCDには、メンバーとの「握手会」に参加できる握手券や、選抜メンバーを決める「シングル選抜総選挙」の投票券が封入されている。

それを求めてファンは複数枚のCDを購入し、そのことがセールスを押し上げる。コアなファンは何枚、何十枚、時には何百枚ものCDを買うようになった。

こうした状況を揶揄する「AKB商法」という言葉も広まった。

なぜAKB48は握手会の参加券や投票券「そのもの」を販売するのではなく、それをCDに封入して出荷するのか。

一つの答えとして、「オリコンランキングが今もなお権威を持っているから」ということが言える。

オリコンが毎週発表するCDの売り上げ枚数やランキングの数字が、いまだにメディアに対してのプロモーション効果を持っていると業界全体にみなされているからだろう。

では、そもそもなぜオリコンは権威となり得たのか? そして、オリコン側はこの10年代の状況をどう捉えているのか?

オリコン株式会社の編集主幹、垂石克哉に取材した。

「オリコンがシングルランキングをスタートしたのは1968年の1月でした。その当時、僕は中学生でしたが、初めてラジオ番組でオリコンランキングを知った時の衝撃は大きかった。ものすごく画期的なランキングだったんです」

垂石はこう語る。

オリコンの登場以前もレコード売り上げランキングはあった。ただ、それは山野楽器などのレコード店が独自に集計していた、その店の売り上げ枚数のランキングでしかなかった。しかも売り上げ枚数は企業秘密なので、当然公表されなかった。

ラジオ局が放送していたリクエスト番組のリクエスト数を集計したベスト10も発表されていたが、「本当に売れている曲」を知るためには、そういうバラバラな情報を組み合わせて推測するしかなかった。

そんな時代において、オリコンは、初めて全国各地のレコード店の売り上げを集計したランキングを作成した。そのことが日本のポピュラー音楽の歴史において、大きな意味を持った。

「それまで、売り上げ枚数という統一基準で、徹底して正確な尺度で作られたランキングというものはなかったんです。そこが一番画期的なところでしたね。

僕がこの会社に入ったのが1975年頃なんですけれど、最初に入ったのが集計部という、まさにランキングの制作を担当している部署でした。

その当時はパソコンなんて当然ない。ファックスもない。毎週月曜日に日本各地のレコード店に電話して、そのお店の売り上げ枚数を手書きでメモしていくんです。

それを電卓で手作業で計算する。そこから全国の売り上げ枚数の推定値を出していくという作業でした」

当初は売り上げ情報を教えることに抵抗を示すレコード店もあったそうだが、開始してまもなく、オリコンの発表するランキング自体にプロモーション効果があることが実証される。

1位になった楽曲は話題を呼び、それを歌った歌手の知名度も向上し、レコードの売り上げも増した。その相乗効果でオリコン自体のブランド力も上がっていった。

オリコンランキングの大きな特徴は、それが「指数」ではなく「枚数」だったことにある、と垂石は言う。そのことがオリコンランキングの価値担保につながった。

「当時、うちの他にレコード売り上げのランキングを作っていた会社が2社あったんです。ミュージック・リサーチとミュージック・ラボというその後発2社と違って、うちは毎週の『推定売り上げ枚数』を出していた。他の会社は『指数』だったんです。指数って、結局のところ何を表しているのかわからない数字ですよね。

でも、売り上げ枚数は出荷しているレコード会社側も把握している。市場に出荷したうちの何割かが売れたと推定して、その数字と比較すれば、オリコンの正確さがわかる。

実は、毎週毎週のチャートは、レコード会社やプロダクションにとっての検証の場でもあったんですね。一般のリスナーからは見えない部分ですが、それを積み重ねてオリコンは信頼を得ていったんです」

「人間の対決」が注目を集める

オリコンというのは、創業時の社名でもあった「オリジナルコンフィデンス」の略称。コンフィデンスというのは、すなわち「信頼」という意味だ。

正確な売り上げ枚数の推定により信頼性あるチャートを作ってきたことが、オリコンの権威の源泉となった。

では、なぜレコードの売り上げ枚数のランキングが話題を呼び、社会的な影響力を持つようになったのか?

「シングルランキングはレコードの売り上げ枚数のランキングだから、一見すると『モノのランキング』に見えますよね。でも、実はこれって、『人間のランキング』なんですよ」

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オリコンランキングは「人間のランキング」だから強いという〔PHOTO〕iStock

垂石はこう指摘する。

「やっぱり『人間のランキング』が一番興味を持たれるんです。たとえば、うちでも書籍のランキングをやっていますが、やっぱり音楽に比べるとなかなか話題にならない。それはあまり人間のランキングとして見られていないからです。

それに比べると、レコードやCDのランキングはそれを歌っている人の人気を並べたランキングになる。だからこそ、ランキングで1位になることに大きな意味がある。

それに、発売日が重なると熾烈な戦いになりますよね。たとえば80年代の松田聖子と中森明菜がそうだった。00年代の宇多田ヒカルと浜崎あゆみもそう。それらのランキングが注目を集めたのも、それが『人間の対決』だからなんですよね」

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宇多田ヒカル〔PHOTO〕gettyimages

モノの売り上げの数値を並べることが、そのままスターの人気の指標になる。そのことは、オリコンの創業者である小池聰行が最初に持っていた発想でもあった。

小池聰行は同志社大学在学中に、あるきっかけで人気のメカニズムに興味を持つ。目に見えない人気というものを数値化しようというアイデア、それをビジネスにしようという発想が、オリコンのスタート地点になった。

「先代社長の小池聰行は、もともと京都の修学旅行生に、大学生のアルバイトとして名所の絵ハガキを売っていたことがあったんです。その時に『絵ハガキの売り上げって、ものによってえらい差があるな』と気づいた。

そこから人気というものを解明してみようと思い立った。その後いったんは就職しますが、人気解明への想いが強くなり独立し、会社を始めたんですね」

オリコンランキングは、そもそも絵ハガキ販売から発想が生まれたものだった。モノの売り上げを集計することで人気を数値化することこそが、その価値の根本にあったのだ。

ヒットチャートがハッキングされた

では、10年代に入ってからのAKB48を巡る状況にオリコンはどう対応したのか。垂石はこう語る。

「握手会や即売会ということ自体は、70年代からずっとあったんですね。たとえば演歌歌手は各地で握手会をやってレコードを売ったりしていた。ランキングにはその数字もある程度加味していました。

けれど、AKBが出てきてからはそういうレベルの話ではなくなってきた。そうなったときにオリコンはどうすべきなのかということを考えて、我々なりの基準を整備して対応しました。

即売会の売り上げの数字を一度全部確認させてもらって、通販会社には一般ユーザーの手元に本当に渡っているかどうかのデータも見せてもらいました。

その上で、明快な基準を設けて、そこに合致しているものは数字に反映していこうということになったんです」

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オリコンランキングで上位になる意味とは?〔PHOTO〕gettyimages

前述の通り、オリコンのランキングの価値を担保してきたのは、それが売り上げ枚数という一つの基準で徹底して正確な尺度で作られたものである、ということだった。そして、オリコンはその一貫した基準を守り続けることを選んだ。

シングルが売り上げ上位に入ることで話題を呼び知名度が拡大するという、ランキングの持つプロモーション効果もいまだ変わっていないと垂石は言う。

「ランキングは、今もアーティストブランディングにはとても有効に働いていると思います。AKB48だけでなく、乃木坂46にしても欅坂46にしても、やっぱりオリコンランキングで上位になることによって急激に知名度を上げました」

そういう意味では、オリコンは自らのやり方を守って誠実にチャートを作り続けてきたと言っていい。

しかし、それが持っていた「人間の対決」という魅力は、いつの間にか、ランキングの中ではなく、その外部に移行していた。

AKB48がシングル選抜総選挙を初めて行ったのは2009年だ。

秋元康自身は、選抜総選挙を始めた理由について、テレビなどで「ファンから『わかってない』と言われたから」と語ることが多い。

メディアに露出するメンバーを運営側の恣意ではなくファンの意見をもとに選抜するというコンセプトが選抜総選挙の出発点となった。

しかし、まもなくそれは、グループにとって大きな意味を持つ巨大イベントに成長する。前田敦子と大島優子のライバル関係、指原莉乃の逆風からの復活と初の二連覇など、数々のドラマが生まれた。

総選挙開票イベントはテレビの地上波で生放送され、高視聴率を見込める人気コンテンツに成長した。

「AKB商法」がオリコンランキングをハッキングしたと捉える見方は多い。

ただ、それを単に握手会などの特典を目当てにしたファンの複数枚購入を煽ること、それによってセールス枚数を稼ぎ宣伝効果にすることだけだと捉えると、実はその指摘は半分しか当たっていない。特典商法は他のアイドルやアーティストもやっていることだ。

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AKB48は二重の意味でオリコンをハッキングした〔PHOTO〕gettyimages

むしろハッキングの本質は選抜総選挙にある。

AKB48のみが「人間の対決」という仕組みをそのプラットフォームの中に内在している。人気の指標を、明確な基準によって集計された数字によってランキング化する。その独自のシステムを持っている。

かつて小池聰行が絵ハガキを売りながら気付いた「人気を数値化する」システムは、少なくともAKB48においては年に一度のシングル選抜総選挙に代替されるようになっていた。

人々の耳目を集めるランキング対決も、グループ内部で行われるようになっていた。

しかも、その投票券を封入したシングルは毎年圧倒的な売り上げ枚数となり、2010年から2017年に至るまで7年連続でオリコン年間ランキングの1位を記録している。

オリコンランキングは二重の意味でハッキングされたのである。

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