日本の企業を蝕んでいる病の正体が分かった

日本の企業を蝕んでいる病の正体が分かった

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/04/22
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東芝、シャープ、三菱自動車や神戸製鋼、そして、森友学園の国有地取得をめぐる公文書改竄事件――相次ぐ大企業の不祥事・経営危機や、国家を揺るがす事態の裏側には、ある病巣があった。
ソニーのカンパニープレジデントや、グーグル日本法人元社長を経て独立起業した実業家・辻野晃一郎氏と佐高信氏の新刊『日本再興のカギを握る「ソニーのDNA」』では、組織に従順で挑戦しないものが出世し、「個」を大事にしない日本型大企業や現政権の問題について鋭く斬り込んでいく。

「戦争で儲ける国にしないために」

佐高さんと知り合うきっかけになったのは、『週刊文春』の連載だ。2014年10月から2016年12月までの2年ほど、私は週刊文春にビジネス連載を持っていた。

安保法制はじめ、安倍政権が次々と強引に進める施策と、それにただ迎合するだけの経済界に強い失望と危機感を覚え、警鐘を鳴らす意味で、同誌の2015年10月1日号の連載に「戦争で儲ける国にしないために」というタイトルの寄稿を行った。

その中で、佐高さんがテレビ番組で言及されていた中山素平など、平和主義を貫いた戦後の経済人の話を引用させていただいたのだが、それが縁となって佐高さんと知り合うことになり、以来、親しくさせていただいている。

佐高さんと私のバックグラウンドはまるで違うが、「反戦」「平和主義」ということにおいては完全に一致している。

私は、1984年4月に新卒でソニーに入社した。以来、20年余にわたって、同社で働くことは自分の生き甲斐であり人生そのものであった。

しかし、2006年3月に同社を退社し、翌年4月から米グーグルに転じた後、2010年10月には自分で独立起業した。

すなわち、私自身は、ソニー、グーグル、自分が創業したベンチャーという3つのまったく異なるステージを通じて世の中に関わり、グローバルビジネスの世界に身を置いてきた立場だ。

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辻野晃一郎

私が全力疾走で駆け抜けたかつてのソニーという会社は、今の時代でいえばグーグルやアップルを凌ぐほどの勢いを持つ、まさに日本の珠玉ともいうべき誇らしくて偉大な会社だった。

井深大と盛田昭夫という傑出した二人の創業者に率いられた個性豊かなエンジニアたちが、チャレンジを厭わず、困難から逃げず、数々の革新的な家電を生み出し続けて世界を席巻した。

そして何より、井深大は、中山素平などと並んで平和主義を貫いた戦後経済人の代表格でもあった。佐高さんは、かつて井深にインタビューしたときに、「アメリカのエレクトロニクスは軍需によってスポイルされる」と井深が言い切ったことが忘れられない、という。

そんなソニーを辞めた時、私は深い失意の中にあって、同社の将来に対する悲観的な見通しを禁じ得なかった。

創業者が二人とも亡くなり、ソニーがソニーでなくなっていく過程に翻弄されながら、なんとかソニーをソニーであらしめようと奮闘したが、結局自分の無力さを思い知らされただけだった。

当時の挫折感は今でもまだ時おり古傷のように痛む。

しかしながら、ソニーを辞めたことによってはっきりと見えた光景がある。

大企業と日本国が罹った「病」

それは、当時ソニーが抱えていたある種の病は、なにもソニー固有のものではなく、日本の電機業界や製造業全体、あるいはあらゆる産業セクター、さらには日本国全体に蔓延している「日本病」とでもいうべき病であったということだ。

原子力災害であらわになった東京電力の実態、東芝の粉飾決算と巨額損失、シャープの経営危機と台湾資本による買収、三菱自動車や神戸製鋼の不祥事など、表に出る症状こそさまざまに違っていても、裏には共通の病巣がある。

そしてついには、森友学園の国有地取得をめぐる公文書改竄事件を始めとした数々の政治スキャンダルによって、今や国家全体や日本の民主主義そのものが大きく揺らぐ事態に至ったが、これも基本的には同じ病巣に起因している。

今回、佐高さんと対談することによってその病巣を立体的に捉え直してみたいと思った。

戦後、数多くの経済人や文化人、政治家の行状をつぶさに観察し続けてこられた佐高さんのお話を伺うと、時系列でさまざまなことが繋がっていくようで実に学ぶことが多い。

佐高さんと語り合う中で、私が多くの日本企業や日本国の病巣として感じてきたことがかなり鮮明に検証できたような気がする。

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佐高信

その病巣とは、①個人が組織や主君に滅私奉公する関係性の中で萎縮し思考停止した自己犠牲的受け身型障害、そして②過去の成功体験から抜け出せないまま時代の変化に適応できなくなった重度の適応障害、とでも表現すべきものだ。

そしてこの①と②の病が、まるで合併症のように今の多くの日本企業、経済界、政界、日本国全体を蝕んでいるのだ。

佐高さんから、日本会議とも関連のある「修養団」という明治期から存在する国家主義的な公益財団法人の存在と、そこが行っている「禊研修」の話を伺った。

日本企業が自社の新入社員に対して愛社心を養生することを目的に、寒い時期に伊勢神宮の五十鈴川に浸かって明治天皇が詠んだ歌を全員で唱和するような内容の研修だという。

そのようなある種露骨な洗脳研修をありがたがる組織は、上層部に逆らわず、個人の主義主張や倫理観よりも、組織の都合や組織防衛を優先する従順な集団を常に求めているのだろう。

確かにそのようなまじめで従順な集団がこの国の成長と繁栄を支えてきた面があるのは事実だ。

しかし同時に、それが社長三代にわたって続いた東芝の粉飾決算や原子力ビジネスの巨額損失を生み出した体質そのものと深く関連している。佐高さんによると、実際、東芝は禊研修に参加する常連企業のひとつだという。

さらには、森友・加計問題などで暴走する政権を守るためだけに虚偽答弁を行い、情報を隠蔽し改竄する官僚たちの所作にも繋がっている。痛ましくも森友の公文書改竄事件では、近畿財務局の現場職員が自ら命を絶っていることも報道された。

東芝は、過去に華々しい成功体験を積み上げて繁栄した日本企業の代表格であり、官僚主導政治も、日本の目覚ましい経済成長を牽引した成功体験の大きな要因であった。

安倍政権は、官邸主導の名のもとに、内閣人事局を発足させてその官僚たちを取り込んだ。

しかし、東芝や森友の事例は、過去の成功体験の延長線上には、もはや破綻か自滅しかないことを何よりも雄弁に物語っているのではないか。

「群衆の叡智」の時代に

先日、日本にも投資先を多く持つ著名な米国人アクティビストと懇談する機会があった。

彼は、「日本企業で経営者になる人材というのは、社内政治を勝ち上がってきたというだけで、本来の経営能力があるわけではない。だから日本には『ゾンビ企業』が多い」と辛辣な言い方で彼なりに日本病を見抜いていた。

米アマゾンが第二本社を作るということで、米国の多くの地方都市はその誘致合戦にしのぎを削っている。自治体の中には、同社にその地域の行政判断の権限を与える提案をする動きまで出ている。

また、グーグルの親会社アルファベットは、グーグルのカナダ本社移転に伴い、トロント市の行政と一緒になってIT化された未来都市構築の計画を推進している。

すなわち、米国やカナダでは、力のある民間企業が行政から請われて政治にも大きな影響力を発揮する新たなステージに入っているのに対し、日本では、相変わらず民間が行政の権力者に擦り寄って利益誘導に躍起になっている旧態依然としたありさまなのだ。

経団連をはじめとした日本の経済界も、次世代に向けて毅然としたイニシアチブを執るどころか、アベノミクスに浮かれて安倍政権べったりだった。それが、働き方改革の不調や森友問題で政局が風雲急を告げる状況になったとたんに現政権の批判を始めている。

現代は、インターネットを始めとした技術革新によって、個人がエンパワーされ解放された時代だ。いわゆる、Wisdom of Crowds(群衆の叡智)の時代なのだ。

個人が組織や主君の犠牲になるのではなく、個人を最大限に尊重して活かすことが組織や主君の繁栄に繋がらなければならない。

グーグルには、don’t be evil(邪悪になるな)という言葉があったが、実際、正義感の強い人が多かった。組織内で発生する不祥事を見逃さずに、芽が小さい段階から問題の真相を究明し再発防止につなげていく健全な自浄能力がはたらいていた。

まさにWisdom of Crowdsが機能する企業風土に、これからの組織のあるべき姿を見るような思いがしたものだ。

最近も、ドローンの軍事利用に関する開発行為(Project Maven)を進めていることに対し、数千名のグーグル社員が反発の声をあげている。

ニューヨーク・タイムズの報道によると、社員らはサンダー・ピチャイCEOを非難する共同声明をまとめ、4月11日現在で既に3100名以上が署名したという。

抗議声明には「グーグルが戦争ビジネスに関わることはあってはならないことだ。我々はProject Mavenの中止を求め、グーグルやその関連企業が今後、戦争関連のテクノロジー開発を一切行わないことを宣言するよう要請する」とある。

日本再興に向けた勇気を喚起するもの

政局の変化によって改憲の発議は微妙になってきたが、何より憲法とは国民が国家を律するためのものであることが前提なのを忘れてはならない。

時の権力者やその権力を利用しようとする一部の人々の意向で改憲が進むようなことは決してあってはならない。

そもそも、「主権在民」や「国民主権」を謳う現在の日本国憲法は、まさにWisdom of Crowdsの時代を先取りした優れた憲法であることを再認識しておきたい。

日本病を食い止めるのは、良識ある個人一人ひとりの叡智や行動でしかない。

その時に我々に勇気を与えてくれるのが、世間の常識に捉われず、異端であることを厭わず、自由闊達を標榜し、個を尊重して世界から尊敬され繁栄したかつてのソニーだ。

日本病払拭と日本再興には、現代のグーグルにも通底する、かつてのソニーが育んだDNAが参考になるのではないか。その思いを佐高さんとの対談に込めてみた。

日本でも、いわゆるデジタルネイティブ、ネットネイティブなどと呼ばれる世代から、若く優秀な技術者や起業家、元気な新興企業がたくさん生まれている。

また昨年、経済産業省の若手官僚達がまとめた『不安な個人、立ちすくむ国家~モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか~』という提言が話題にもなった。

新しい時代を作るのは常に若者たちだ。日本の古い体質とは無縁な新たな世代から、次世代の日本を担う前向きなエネルギーが沸き上がることに期待したい。

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かつてのソニーの企業風土から、カルト化する日本企業を斬る

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