中村アン、ROLA...「筋肉女子」はいつから出現したのか

中村アン、ROLA...「筋肉女子」はいつから出現したのか

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/11/18
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ここ数年、モデルの中村アンやROLA、泉里香など、筋肉美を誇示する女性芸能人をメディアで多く見かけるようになった。彼女たちに倣って、パーソナルトレーナーつきのジムに通い、筋トレをする女性も少なくない。

いったい私たちは、いつから筋トレに魅せられたのか。筋トレにハマり、世間から「筋肉女子」や「腹筋女子」と呼ばれる女性たちを社会学的視点から取り上げた本、『筋肉女子』の著者である米澤泉氏が考察する。

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「筋肉女子」はいつから登場したのか

今年の6月、雑誌『ターザン』の表紙にモデルの中村アンが登場した。誌名が表すように、筋トレのバイブル的な雑誌のカバーを人気ファッションモデルが飾ったのである。もちろん中村アンは、いつにも増して美しい筋肉がついたボディを披露していた。

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『ターザン』に中村アン。本人も筋トレを始めて以来、『ターザン』の表紙を飾るのが目標だったと述べているが、これはある意味、画期的な出来事だったのではないだろうか。なぜなら、モデルという女性が憧れる身体の持ち主が、筋肉を誇示しているのだから――モデルという流行にいちばん近い存在が服のように筋肉をまとっているのだから、数年前から盛り上がっている筋肉女子、腹筋女子ブームを象徴する一枚とも言えるだろう。

このように、女性たちが美しい筋肉を求めて筋トレに励むようになって久しいわけだが、そもそもいつ頃から女性たちは筋肉に魅了され始めたのだろうか。

「紀香バディ」から「走る女」へ

今から12年前の2007年に『紀香バディ!』(講談社)という本がベストセラーになった。コスメ、エステなどの美容情報からエクササイズ、食事まで、女優・藤原紀香のナイスバディの秘訣を余すところなく公開した同書は、女性たちの絶大な支持を集めたのであった。

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紀香は趣味が「女磨き」で目標がルパン三世のヒロイン・峰不二子だと公言するぐらい、美しい曲線を描く「エレガンス・カーヴィー」なカラダの持ち主だ。そんな紀香バディが羨望の的だったということは、いわゆるバストとヒップにボリュームがある女らしい身体に女性たちはまだ憧れていたということになる。

ところが、翌年には女性たちの身体美の新たな指標が登場する。

『FRaU Running 走る女は美しい』――2008年、『FRaU』特集から発展した一冊の本が出版されたのだ。有森裕子や高橋尚子といった「スポーツ・ヒロイン」の登場でマラソンへの関心はすでに高まっており、いよいよ本格的に一般の女性たちも「走ること」に参入する時代が到来したのである。

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『FRaU』は女性たちを焚きつけた。「気になるカラダも人生もきっと変わる!」「セレブもモデルも今みんなが走り始めている」「シューズ一足で、人生だって変わっちゃう!」……同じ努力をするならば、不毛な女磨きよりも人生を変えるランニング。運動とは運を動かすことなのだ。なるほど、走ることで開運するならば、すべてが上手く回り出すならば、もう走るしかないではないか。

ついに、女性たちは走り出した。「走る女」であることを売りにするタレントも現れた。代表格なのが、野菜ソムリエの資格を芸能界で初めて取得した長谷川理恵である。彼女はいち早く「走ること」を実践し、「美・ジョガー」として『FRaU』の誌面を何度も飾っている。

「肩甲骨がくっきり浮き出た背中」「肩から二の腕にかけてのキリリとしたライン」「しっかりと大地を捉える強さと意志を感じさせる脚」――それは、「愛と熱血の紀香バディ!」とは異なった新たな「美」を女性たちに示すこととなった。現在の筋肉ボディへとつながる鍛えられた身体が持つ美しさが評価され始めたのだ。

新たな流行「エフォートレス」に合う、鍛えられたカラダ

鍛える女は美しい――長谷川理恵らの活躍もあって、健康的で強さと意志を感じさせる鍛えられたボディは、しだいに女性たちの羨望の的となっていった。

ただ細いだけでは健康的ではない。ダイエットやエステや美容医療でつくりあげる人工的なボディはもう、過去のものになろうとしていた。過剰な女らしさを感じさせる「紀香バディ」はファッショントレンドにも馴染まなくなっていった。

2010年代に主流となった、抜け感を感じさせる自然体でエフォートレスな、身体に心地よいコンフォートなファッション。流行りのスニーカーやゆるいコーデに似合うのは、ヘルシーに鍛えられたボディである。もう、ラグジュアリーなブランドバッグやゴージャスなアクセサリーはいらない。それよりも、割れた腹筋、意志を感じさせる脚が輝きを放つ。こうして、筋肉こそ、最高のアクセサリーの時代がやってきたのである。

3.11が変えたライフスタイルとファッション

2011年、すでに女性たちの間に芽生えていた健康志向、ナチュラル志向をさらに加速させる出来事が起こった。東日本大震災である。

一見、筋肉女子とは無関係なように思えるが、やはり震災が人々の意識に与えた影響は大きかった。それはライフスタイルやファッションの分野にも顕著に表れている。端的に言えば、震災以前・以後でとりわけ女性たちのライフスタイルやファッションは大きく変化したのだ。

例えば30代主婦向けファッション誌『VERY』では、震災を契機に今までにない理想の読者像「ミセスオーガニックさん」が登場するようになった。

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「ミセスオーガニックさん」とはその名の通り、オーガニックへの関心が高く、「オシャレは都会的でも、気持ちはオーガニック志向で素材や心地よさ、丁寧な暮らしを大切にするママたちのこと」(『VERY』2011年5月号)である。より具体的には、「リネンやコットンなど、天然素材の服が好き」「スーパーでは積極的に有機野菜、無農薬野菜を選ぶようにしている」「自家用車はプリウス」「フェアトレードの商品を意識して買い物している」といったライフスタイルを送る人たちである。

このように、震災直後に発売された号では、衣食住のすべてにおいてオーガニックなものを求める意識の高いライフスタイルを送ることが推奨されており、『VERY』流に言うならば「オシャレな人ほど、今、気持ちはオーガニック!」ということになる。

とはいえ、ついこの間までのライフスタイルとは正反対に思えるオーガニック志向になぜ、『VERY』読者が行きついたのか。なぜ、かつての彼女たちの高級ブランドやシャンパンへのこだわりが、オーガニックコットンやビオワインに向けられるようになったのか。

ひとつには、震災という出来事を経て、もともと『VERY』読者の中に芽生えていた環境問題への関心やエコ意識が、いっそう高まったからだと言えるだろう。もちろん、震災直後でもファッション誌を存続させていくためには、ラグジュアリーな路線よりも、地球環境や自らの健康にも配慮したオーガニック路線の方がサステナブルだったということもある。

だが『VERY』だけでなく、震災後に路線を転換した雑誌は他にもある。例えば、男性誌『ブルータス』の建築特集から生まれた『カーサブルータス』などがそうだ。

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2000年の創刊当時は毎号、安藤忠雄やル・コルビュジエといった有名建築家やその作品の特集が目白押しであったが、震災以降は「美しい収納術」(2011年6月号)、「理想の暮らしが買える店」(2011年7月号)、「やっぱり、動物と暮らしたい!」(2011年8月号)、「おいしいパン、理想のパン屋。」(2011年12月号)など、今までの『カーサブルータス』ではほとんど取り上げられることのなかった身近な暮らしがテーマとして浮上してくる。

『カーサブルータス』の主要読者である男性もまた、『VERY』読者と同じように、ラグジュアリーなファッションとしての建築を楽しむ路線から「美しい暮らしをデザインする」方向へと意識が変化したのだ。

このように、震災をターニングポイントとして、人々はファッションよりもライフスタイルを充実させることにエネルギーを注ぐようになった。震災という出来事を経て、自分の欲望のおもむくままに生きるのではなく、地球環境に配慮し、自らの健康に配慮し、ていねいに暮らすべきだという意識がいっそう高まりを見せるようになったのだ。

うわべだけのラグジュアリー、物質的な豊かさだけを追求しても、「本当の豊かさ」を手にすることはできない。そこで人々は、「本当の豊かさ」を求めて、「ていねいなくらし」に勤しむようになった。

筋肉女子は「ていねいなくらし」の副産物

心身ともに健やかな、オーガニックで、ヘルシーなライフスタイル。そこにはきっと本当の豊かさがある――。その「ていねいなくらし」志向の一環として、とりわけ女性たちは究極のヘルシーである筋肉女子を目指し始めたのである。

筋肉女子になるには、毎日の規則正しいトレーニングはもちろん、食べるものにも相当気を配らなくてはならない。質のよい睡眠も重要だ。クロスフィットトレーナーのAYAも「ライフスタイルが変わってこそのフィットネス」だと述べている。

つまり、意識の高いライフスタイルを送らなければ筋肉女子なれないのだ。逆に言えば、「ていねいなくらし」が筋肉女子を作るのである。インスタグラムなどで筋肉女子は自らのトレーニングの様子や筋肉のついたカラダを公開しているが、彼女たちは美しい筋肉ボディだけでなく結果的に、その意識の高さも誇示しているのである。

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