有名企業の幹部らに聞く「日大の宮川くん、御社なら採用しますか」

有名企業の幹部らに聞く「日大の宮川くん、御社なら採用しますか」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/06/14
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たしかに300人の報道陣の前で、あれほど誠実に謝罪できる二十歳の学生が日本に何人いるだろうか。罪が消えることはないが、その資質は確かである。就活シーズンのいま、企業は彼をどう見たか。

腹が据わっている

「大学に早く来てほしい」

日本大学アメフト部の宮川泰介選手(20歳)が在籍する、スポーツ科学部の同級生はそう語る。

「普段の宮川君は口数も少なく、クラスでも決して目立つような存在ではありませんでした。でも、授業に真面目に出席していて、試験前にはクラスの友人から頼りにされていましたよ。常に礼儀正しいので、教授陣からも好かれていたと思います。

まだ新入部員だったころの宮川君が『監督が声をかけてくれた』と喜んでいたことを覚えています。よく聞くと、『オマエは(日大)豊山にいたヤツか?』と監督に尋ねられただけなのに、彼はとても嬉しそうでしたね。

事件後、グループLINEで『大丈夫?』『学校おいでよ』と仲間が呼びかけても、彼から返信はありません。このまま退学してしまうのではないかと、みんな心配しています」

日大アメフト部の現役選手も5月29日に発表した声明文で、「再びチームに戻ってきてもらい、一緒にプレーできれば」と宮川選手への思いを明かした。

5月29日、日大の大塚吉兵衛学長が公式サイトで、企業の採用担当者に向けて、日大生に対してこれまでと変わらぬ配慮を呼びかけた。

悪質タックル事件における大学側の不誠実な対応によって、大学自体のイメージ悪化は止まらず、日大の就活生にまで悪影響が及んでいるのだ。

その一方で宮川選手の記者会見は立派だったと、大手企業の採用担当者の間で、「彼なら採用確実」との声もあがっているという。

本誌は大手有名企業で人事・採用にかかわる現役社員たちに取材を敢行。宮川選手を自分たちの会社で、新入社員として採用するか否かを聞いた。

まず、パナソニックの幹部A氏はこう話す。

「宮川君の会見を見て、私は涙が出ました。あれだけのカメラ、報道陣を前にして自らの過ちを謝罪できる度胸には驚きました。

今どきの若い社員は、失敗したら尻尾を巻いて逃げ出して、公の場で時系列に説明なんかできませんよ。宮川君のように腹が据わっていない。

彼が持っているスキル、能力については未知数ですが、希少価値のある学生だと思います。アメフトのトップクラスの選手なのですから、馬力があることはすでに明らか。十分に採用に値します」

日大アメフト部の内田正人前監督の自己保身に満ちた記者会見と対比されたことで、宮川選手の価値はさらに高まった。A氏はこう続ける。

「内田前監督とは対照的に宮川君は、自らの過ちを全面的に認めたうえ、アメフトはやめる、自分にはやる権利もないと潔く断言した。その覚悟は見事の一言です。不祥事を起こした企業のトップでも、あの謝罪会見はなかなか真似できません。

ウチの会社の社会人チームは日本一を何度も獲得した名門なので、アメフト部出身の社員は多いんです。

彼らは二つに分かれます。体力に自信があり、営業部門で自己犠牲を厭わないタイプ。もう一方は、物事を理路整然と考えて組織のリーダーシップをとるタイプ。どちらも貴重な戦力で、宮川君は双方で活躍できる可能性がありますよ」

他人を批判しなかった

あの記者会見はビジネスマンたちの心にも響いていた。明治安田生命の管理職B氏もこう指摘する。

「記者会見で注目すべきは当意即妙が問われる質疑応答です。宮川君は自分の立場で、何を言ってはいけないかをよく理解していました。

たとえば、テレビのリポーターたちは、宮川君から監督やコーチへの恨みや怒りのコメントを引き出そうとして、質問を繰り返しました。しかし、彼は『自分が言うことではない』と毅然と答え、謝罪会見で他者を批判することを徹底的に避けた。

これは事前に頭の中で物事を整理できていた証左です。彼はロジカルにモノを考えられ、プレゼン能力も高いと言えるでしょう」

宮川君のこうした理解力の高さは、優秀なアメフト選手ならではのものだとB氏は続ける。

「アメフトは、チームの戦略に基づいて自分の役割を子細に理解したうえで、どういう行動が合理的かを考え抜くスポーツです。アメフトの試合はワンプレーごとに区切られ、ひとつのプレーごとに戦略的な動きが求められる。

宮川君は日本代表に選ばれるレベルの選手で、ポジションはディフェンスライン。守りの要であり、チームの戦略を頭に叩き込める能力がないと、まず代表選手には選ばれない。また事前の打ち合わせも重要で、試合ではその準備の差が如実に出てくる。

つまり計画的に実行する能力も求められます。こうした彼の能力は、営業職はもちろんですが、幹部候補としてもほしいと思う経営幹部は多いでしょう」

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トヨタ自動車の幹部C氏は、宮川選手の会見を評価しつつ、難局での対応力にも期待する。

「ウチにもアメフトチームがあるんですが、3部リーグなので、日本代表クラスの選手は来ない。宮川君がうちに応募してきたら?うちのカラーに合えば採用したい。実直さは魅力ですが、どの部門が適性なのかは記者会見だけではわからない。

企業社会では白黒だけでは突っ走れずに、グレーな状況もある。その場合にどう対応するか。正義感だけでは問題の解決にいたらないこともあるんです。

ただ宮川君の場合は、今回の経験が貴重な糧になるでしょう。自分を支えてくれる両親や弁護士と上手くコミュニケーションがとれていたからこそ、あの危機的状況で記者会見ができた。グレーな問題にも対応できるかもしれません」

人生はこれからだ

アメフトの社会人リーグにおいて国内屈指の強豪チームを擁するのが、大手メーカーの富士通である。同社の採用に関わる中堅社員D氏が言う。

「うちには日大、関学、立命館といったトップレベルの大学アメフト部OBが入社しています。アメフト出身者にかぎらず、体育会系、それも全日本クラスの選手だと、中学から大学までずっと周囲からチヤホヤされてきますから、企業に入ると環境の変化に戸惑う人がほとんどです。

あの会見を見て、宮川君は日大の体育会系でありながら(笑)、きちんと一般社会の常識を持ち合わせていると思いました。

弊社ではアメフト出身者は営業、総務といった部門に多く配属されています。宮川君はあの会見で全国に顔が知られて、営業部門で活躍しそうな気もしますが、弊社の場合、クライアントは大手金融機関や官庁ですからそう甘くはない。

知名度や熱意だけでは営業はできません。ただビジネスマンとして基本的な素養があることがあの会見でわかっていますから、お会いして話してみれば、向いている職種がきっとあると思います」

人事コンサルタントの新井健一氏が分析する。

「いまの大手企業では体育会系の需要が以前に比べて高まっています。とにかくいまの若者は縦の関係を結ぶのが苦手。逆に横の関係はSNSで広いというのが特徴です。

体育会出身者は『縦の関係』をしっかり叩き込まれている人材として重宝されるのです。タフさに加えて、自分の役割を認識して忠実に行動ができる点で、宮川君は大きな組織に身を置くことで大成できる人材だと思います。

ただし彼がいま世間の共感を集めているのは、学生という立場だからこそ、という面があることを忘れてはならないでしょう。従順な性格だと、コンプライアンスの意識が希薄な上司に利用されてしまうこともある。未熟な部分を律していくことが求められます」

大手企業のヘッドハンティングを担っている半蔵門パートナーズ代表・武元康明氏が言う。

「企業が学生に求めているのは『主体性』『ねばり強さ』『コミュニケーション能力』です。彼はこの3つを兼ね備えていると思います。さらに緊急事態にどのような対応を取ったか、ということが重要な要素となります。

これは天性の資質。謝罪会見を逃げずにやりぬいたことで、宮川君は企業の経営者には信頼に足る人物と映っていることでしょう。今後はさらに判断能力を磨くことが求められていきます」

宮川選手はまだ二十歳。人生はこれからだ。

「週刊現代」2018年6月16日号より

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