北朝鮮が大量に偽造した「'92年製100ドル紙幣」の闇

北朝鮮が大量に偽造した「'92年製100ドル紙幣」の闇

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2018/06/13
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歴史的な米朝首脳会談でアメリカと北朝鮮の間に雪解けムードが漂っている。だが北朝鮮といえば長年、偽札作りを国家事業とし、アメリカを翻弄してきた過去を持つ。そこで今回は、経済ヤクザとして海を渡って活動してきた猫組長が見た「米朝偽札戦争」の一端を紹介しよう。

◆偽ヴィトンのボストンバッグに大量の偽100ドル札が

ラオスの首都・ヴィエンチャンからタイ国境までバスで約30分。タラートサオのバス乗り場には屋台が連なり、人やバイクが喧騒の中で交錯している。

フランスパンを山積みにして売る屋台が多く、この国がかつてフランスの植民地であったことを思い出す。

国境を越えるためのインターナショナルバスは大型で、タイのナンバープレートが付いていた。1日6便運行されているそのバスは、どの便もほぼ満席になるようだ。

黄色い僧服を身に纏った集団やバックパッカーの欧米人に交じり、地元の行商人も多い。料金は日本円で約300円。国境を越えるため、パスポートによる乗客の管理も一応行われている。

土埃を巻き上げたバスがけたたましくクラクションを鳴らすと、あっという間にタイとの国境検問所へ到着した。ここで乗客は全員バスを降りてイミグレーションへ向かう。バスはそのままラオス側の検問所を抜け、タイ側の検問所で乗客を待つ。

出国審査を受ける乗客は、荷物をバスに預けたままの者も多いが、特に荷物検査があるわけでもない。

私はヴァンビエンという街から一緒だった、韓国系の男性2人の後ろに並んだ。彼らの持つヴィトンのボストンバッグにはスーパーノートと呼ばれる、偽100ドル札が詰まっているのだ。

◆北朝鮮製の偽100ドル紙幣「スーパーノート」が世界中に流通

スーパーノートは北朝鮮が偽造する最も精巧な100ドル紙幣で、世界中に流通している。

理由はわからないが、’92年に発行された紙幣番号の100ドル札が特に多く流通している。事態を重く見たアメリカ政府は、真正な一部の’92年製100ドル紙幣を無効にしたほどである。

この’92年製100ドル偽造紙幣が大量に出回ったのは、’01年に起きたニューヨーク同時多発テロの直後だ。

突如、香港の金融機関で大量に出回るようになり大騒ぎになった。その後、ウイルスが伝播するように東南アジアへ広まっていったのである。

◆アメリカ国内で使えば逮捕されるリスクも

アメリカ政府が真正な’92年製100ドル紙幣を一部無効にした時に困惑したのが、大量に保有していた香港のHSBCだった。

あれから16年が過ぎた今でも、’92年製の真正100ドル紙幣はディスカウント価格で取引されている。無効とはいえ真正な100ドル紙幣である。現物を大量に使用することは不可能だが、証券の原資には使えるからだ。

もちろん、多額でなければ現金として使用もできる。ただし、米国内で使えば逮捕される覚悟が必要になる。

◆偽札こそが北朝鮮を支えている

さて、偽ヴィトンのボストンバッグに大量の偽札を詰め込んだ男2人だが、彼らはラオス国籍を持つ北朝鮮民族である。

2人はラオス北部にあるヴァンビエンという街からやってきた。焼き肉店を経営する一家の兄弟だが、正体は北朝鮮の諜報員である。

ラオスには北朝鮮民族が多く、各地で飲食業や貿易業を営んでいる。それらは、諜報員のアジアにおける活動を支援する中継基地となっているのが実情だ。

なぜ彼らは大量の偽札・スーパーノートを、ラオスからタイへ持ち出そうとするのか。答えはラオスの地政学的要素と為替管理制度にある。北朝鮮で製造されたスーパーノートは、陸路で中国からラオスに運ばれてくる。ラオス北部の中国国境は警備もされておらず、出入りは簡単だ。

そして、ラオスには外貨の持ち込み、持ち出しとも制限がない。出入国の管理が甘い上に外貨の規制がないのだから、堂々と大量の偽札を持ち出せるのである。

タイへ持ち込まれた偽札はその後、どうなるのだろう? 実はその行方にこそ、北朝鮮が米ドルを偽造する理由と、ミサイル発射をちらつかせる野蛮な外交が結びつく。偽札こそが、長らく北朝鮮を支える原動力であったのだ。

文/猫組長
兵庫県神戸市生まれ。元山口組系二次団体幹部。若くしてヤクザの世界に身を投じ、仕手戦やインサイダー取引を経験。グレーゾーンのファイナンスやマネーロンダリングを得意とする国際的な経済ヤクザとして暗躍、数百億円を稼ぎ出す。ヤクザ引退後は作家転身を果たし、「週刊SPA!」のコラムを筆頭に健筆をふるう。最新刊『猫組長と西原理恵子のネコノミクス宣言

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