セックスワーカーを経験した中村うさぎに聞く、売春はなぜ“いけない”ことなの?

セックスワーカーを経験した中村うさぎに聞く、売春はなぜ“いけない”ことなの?

  • サイゾーウーマン
  • 更新日:2017/12/06
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世界最古の職業といわれる「売春」。現代の日本では売春防止法によって禁止されている行為だが、法的な規制を抜きにしても、多くの日本人が「売春はいけないこと」という意識を持っているのではないだろうか。

2017年9月に『エッチなお仕事なぜいけないの?』(ポット出版プラス)を上梓した作家の中村うさぎさんは、恐らく世間一般では少数派であろう“売春賛成派”。同書には売春の是非について、中村さんと有識者たちによる対談が収められているが、実際のところ、売春がいけないといわれているのはなぜなのか? ご本人に聞いてみた。

■「不特定多数に性を売ること」への嫌悪感

まず、売春が悪だという認識が浸透している背景には、「不特定多数に性を売る」という行為そのものが、嫌悪の対象になりやすいからだと中村さんは指摘する。

「そもそも、なぜ不特定多数に性を売ることが悪とされるのか? ひとつは、男性が生み出した“貞淑”という幻想によるものだと思います。それは、自分の子孫を確実に残したいという、男性たちによる本能レベルの欲求ではないでしょうか? なにしろ、女性のほうは、父親が誰であろうと自分が産んだ子どもは100%の自分の子であるという確信がありますが、男性は、女性の腹から出てくる赤子が自分の種じゃない可能性もあるわけです。そんな危機感が働いたからこそ、夫以外の男性と寝る女性を嫌悪し、“不貞”というレッテル貼りをしたのではないでしょうか」

歴史を振り返ってみると、後家が権力を握っていた室町時代をはじめ、政治でも女性の影響力がある程度強かった14世紀ごろまでは、セックスを売り物にする女性も差別の対象にはならなかったという。

「たとえば平安時代から鎌倉時代にかけて『白拍子』と呼ばれる女性たちがいましたが、彼女らは歌舞を演じるだけでなく、男性の夜の相手もしていたことがわかっています。容姿端麗で芸に優れた白拍子は男性の憧れの的で、彼女たちをめとることは男性にとってもステータスでした。一方、武家時代に入って男性優位の社会になってくると、遊女などの地位が途端に低くなるのです」

つまり、男性が権力を握り、彼らにとって都合のよい倫理観が出来上がった結果、性を売ることへの嫌悪感が浸透していったとも考えられるのだ。そうした中で、性を売る人はいやしいという差別感情が生まれ、「遊女という職業はけしからん」という暗黙の了解が出来上がって、売春への忌避感が生まれたのだという。

一方、女性が売春をする女性に対して差別することも、世の中にはある。それはもちろん、男権的な価値観から生まれた“貞淑”という観念が世間一般に浸透した結果ともいえるが、それ以前の問題として、女性が売春をよしとしないのには「もっと感情的な理由がある」と中村さんは話す。

「売春が嫌われるのには、“女を売るのはズルい”という同性からの視点もあるのだと思います。キャバクラなんかでも枕営業するホステスは下に見られる傾向にあるようですが、要は性を使ってのし上がった同性に対して、イカサマをされたような理不尽な感情が湧くんですよね。それこそ、安い時給のアルバイトなんかでコツコツ稼いでいる女性が、売春で大金を稼いでいる人に対して“反則”だと感じることもあるでしょう」

ほかにも、一部のフェミニストたちによる売春反対の声もある。売春を男性による「性の搾取」と見なし、倫理的に到底認められないという意見だ。

「売春は女性性の搾取であり、男性優位社会の産物だという考え方ですね。ただ、親に遊郭に売られたり、暴力による売春の強制があった昔ならいざ知らず、現代では自分の意志で性を売る仕事を選び取っている人も多いわけです。そうした女性の立場はどうなるのか? 男権的な価値観に洗脳されて、無自覚に性を売っているのだと話すフェミニストもいます。しかし、仮にそれが刷り込みであったとしても、刷り込まれた価値観を、そのまま肯定するか否定するかは、その人の自由でしょう」

女性の売春や風俗ビジネス は、男性の性欲なしには成り立たないものであり、その性欲そのものを否定してしまえば、それはフェミニズムというより、もはやミサンドリー(男性嫌悪)ではないか、というのが中村さんの見方だ。

「結局のところ、風俗に対する過剰なバッシングを繰り返すフェミニストたちは、単に男性の性欲が嫌いなんだと思います。しかし、自らの意志でセックスワークを選んだ人たちまでも、『被害者』として一括りにすることは、彼女たちの自由意志を無視した差別といえるのではないでしょうか」

女性の不貞に対する男性の嫌悪感にしろ、男性に対するフェミニストの憎しみにしろ、売春を否定する人の根底には「不快」という感情が存在しているのだと中村さんは言う。

「人間の快・不快というのは、感情の中でも根深いもの。そして、どんなに売春が不道徳であるかを理論武装しようとしたところで、感情的なものが根底にある限り、必ずほころびが出てくる。たとえば、売春は『性の搾取』だといわれていますが、そもそも売春以外でも、労働力や時間を搾取する企業なんて、ごまんとあるわけです。なぜ、性の搾取だけが特別視されるのか? また、『性は神聖なものだから、売り買いするのはタブーだ』と言う人もいますが、なぜセックスだけが神聖になるのか? どれも理論で突き詰めることができない。そうした意味でも『売春がいけない理由』については、明確な答えが、今のところ私の中に存在しません」

ただし、冒頭でも少し触れたように、売春は売春防止法により、法的には違法と定められている。法律では売春をすることも、そして買春することも禁止されているのだ。では、女性を買う男性についても、「社会の風俗を乱すような」不道徳な輩といえるのか?

「先に話したミサンドリー的な考えだったら『男の性欲そのものが汚らわしい』ということになりかねませんから、それこそ金を払って性欲を発散する男性はアウトになる。そうでなくとも『買春は、性欲を持て余した気持ちの悪いオッサンがするもの』というイメージを抱いている女性は、一定数いるのではないでしょうか?  かつては、私も風俗を利用する男性に対して、偏見を持っていましたから」

実は、中村さんは、デリヘルでセックスワーカーとして働いた経験がある。そしてセックスワークを体験する中で、風俗を利用する男性に対して、ある種の理解を抱くようになっていったのだという。

「実際デリヘルで働いてみると、客の大半が至って普通の人で、まったく暴力的でも居丈高でもなかった。そして、彼らは単に性欲の発散だけでなく、彼女や奥さんにさらけ出せない性的ファンタジーを満たしてくれる相手を求めて、風俗店にやってくることに気がつきました。セックスワーカーはお金をもらって、そのファンタジーを満たしてあげるわけです。少なくとも私は、一方的に男性に性を搾取されているという感覚はなかったですね」

社会全般に浸透している偏見や差別意識から、なんとなく「いけないこと」だと思われている売春。しかし、売春の是非についてハッキリと答えられる人はいないのかもしれない。それならば、法的な規制はともかくとして、当事者以外の人たちが、セックスワークに関わる人たちを勝手に裁く権利もないのではないだろうか?
(松原麻依/清談社)

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