昨季11.5差を逆転されたソフトバンクはなぜ雪辱のV奪回を果たせたのか

昨季11.5差を逆転されたソフトバンクはなぜ雪辱のV奪回を果たせたのか

  • THE PAGE
  • 更新日:2017/09/18
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ソフトバンクは開幕前の予想通りに優勝したが、工藤采配が5人の勝利方程式を作った。

ソフトバンクが2年ぶり20度目の頂点に立った。マジック「1」で迎えた敵地、メットライフドームでの西武戦に7-3で快勝。西武時代に何度も美酒に酔った場所で7度宙に舞った工藤監督は、恒例の監督優勝インタビューに臨み、「今は、正直言ってほっとしています。リーグ優勝を昨年はできず、クライマックスでも負けて、1年弱、このことだけを思って……」とまで言うと、涙があふれ、少し言葉に詰まり「……1年やってきました。みなさん、ありがとうございました」と続けて上を向いた。

まるで何かに引き寄せられるかのように「16」尽くしの1日になった。

2015年に自らが作った史上最速記録を1日更新する9月16日に背番号16の東浜がマウンドに立って16勝目をマークして優勝を決めた。もっと言えば、9月1日にマジック「16」を点灯させてから16日目。西武と獅子(しし)をひっかけて4×4(しし)=16という球団関係者までいた。
勝負の世界では、特定の数字を関連づけて、まるで運命のようにポジティブに捉えようとする人が決して少なくないが、今年のソフトバンクには「16」がラッキーナンバーだったようである。

話が脱線したが、昨季最大11.5ゲーム差を日ハムにひっくり返されたソフトバンクの雪辱は、なぜ成功したのか。
いくつかのデータを昨年と比較すると浮き彫りになってくる点がある。

26試合もあった逆転負けが12試合に減ったこと、サヨナラゲームの勝敗が3勝9敗から5勝2敗に改善されたこと。つまり、ブルペンが強固になり、勝ちパターンを確立できたのである。
先行逃げ切りゲームも、昨年の60勝23敗4分から、71勝8敗0分と大幅に増えている。
チーム防御率を見ても明らかで、先発の防御率は、昨年が3.13で今季が3.33と落ちているのだが、救援防御率となると、2.98から2.54と良くなっている。

ビールかけ取材を終えた評論家の池田親興さんが言う。

「8回の岩嵜、9回のサファテの2人が安定したことで、7回までにリードしておけばいいという考え方で戦えるようになった。加えてシーズン途中から左腕のモイネロが加わり、腕を下げる工夫をした左腕の嘉弥真、森がブルペンをより強固なものにして、さらにもう1イニング勝ちパターンが伸びた」

確かに岩嵜は68試合に投げて防御率1.84、セーブ記録を更新したサファテが63試合に投げて51セーブで防御率は1.14、嘉弥真、モイネロも防御率は1点台。2点を取られないのだ。サファテは、昨年は同点機に使われると7敗もしたが、今季の負けはわずか2敗である。工藤監督も「何連投しても文句を言わずに最初から最後までいい働きをしてくれた」とブルペン陣を絶賛したが、スアレスや五十嵐を故障で欠くなか、うまくやりくりして5人の勝利方程式を確立させたのだ。

打線に目を向けると、偶然にも昨年とチーム打率は.261で同じなのだが、本塁打数が114本から150本に飛躍的に増え、代わりに盗塁数は107個から67個に減った。
いわばベンチはリスクのある動き方をせずとも、ドッシリと構える王道野球ができたのである。
このデータを象徴するかのように優勝を決めた試合で、デスパイネが33号、柳田が30号のアベックアーチ。ケガもあり昨年は、18本と低迷した柳田が12本プラスさせ、昨年はチームにいなかったデスパイネが33本と量産するのだから、チーム本塁打数が、飛躍的にアップしているのも無理はない。

うまく投打がかみ合ったのである。
16勝4敗。一人で12個も貯金を作り優勝投手となった東浜が、優勝会見で「出来過ぎだと思ってます。これだけの勝ちをつけてもらえたのは、点を取ってくれる野手や、僕の後に投げてくれる中継ぎの人たちのおかげ。素直に感謝したい」と語ったが、チームにプラス連鎖が生まれ東浜のようなエースが誕生したのである。

前述の池田さんはソフトバンクというチームの背景にある組織力に注視する。

「今年は、武田、スアレス、五十嵐、和田、高谷、内川ら8人も主力にケガが出た。工藤監督はかなりやりくりに苦しんだ。ローテーション投手と4番がいなくなったのだ。しかし、そこにうまく若手をはめこんだ。ソフトバンクは3軍制を敷き、育成をメインに選手層の充実を図っているが、その選手層の違いが、ペナントレースを戦う上で際立った。成長した甲斐や、育成上がりの石川、3年目の松本らが戦力になった。これがソフトバンクというチームの組織力だと思う。そういう若手が目立っている間にケガ人が徐々に終盤に帰ってきた。8月に落ちた楽天と対照的に、8月下旬から勝負の9月にソフトバンクのチーム力が上がってきた理由は、そこにあると思う」

ペゲーロを2番に入れ、ウィーラー、アマダーと3人を並べた強力打線で旋風を巻き起こしていた楽天を8月18日から仙台で3タテ、9月1日からのヤフオクでの3連戦でもまた3タテを食らわせて引導を渡したが、東浜、千賀、武田、東浜、千賀、和田と、いずれも表のローテーションをぶつけて守り勝った。

優勝会見で柳田は、「去年の秋からの努力が報われた」と言った。
池田さんは、ブレイクした東浜についても、「彼は、昨秋からウェイトトレーニングに本格的に取り組み、体幹を鍛えていた。その成果は球速アップと共にぶれないフォーム作りにつながり、コントロールの精度につながった。9月のこの時期までバテずに1年間ローテーションを守ったスタミナとも無縁ではないと思う。残り2試合で18勝するんじゃないか」と言う。日ハムに負けた悔しさをそれぞれが昨秋から形に変えていたのである。

工藤監督は「まず夢はかなえたが、最終目標は日本一奪回」と次なる目標を口にした。
だが、シーズンはまだ13試合を残し89勝41敗の成績で、1955年に南海ホークスが作った99勝のシーズン最多勝利数更新の可能性が残っているのだ。
「残り13試合で10勝3敗という数字は、今のソフトバンクなら不可能ではないのでは」と池田さん。クライマックスシリーズを前に、もうひとつの挑戦が残っているのである。

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