トランプ氏の大統領就任で「フィンテック」はどうなるのか オープン性が失われる?

トランプ氏の大統領就任で「フィンテック」はどうなるのか オープン性が失われる?

  • ZUU online
  • 更新日:2016/12/01
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トランプ氏の次期米国大統領就任は、FinTechにとって歓迎すべき動きとはいい難いようだ。トランプ氏の提案している政策の多くが、FinTechの成長に欠かすことのできないテクノロジーのオープン性と国際化からかけ離れた観点から打ちだされている点を、欧米のメディアや専門家は指摘している。

テクノロジーがもたらす経済成長の可能性に理解を示していたオバマ大統領とは異なり、トランプ氏は「SNS以上のテクノロジーには興味がない」とさえいわれる程、FinTechに関する知識や理解が浅いとの見方が強い。

現時点で議論されているマイナス影響、プラス影響を以下に挙げてみよう。

■オープン・インターネットの危機?――アメリカン・バンカー紙

米大統領選前から持ちあがっている最大の懸念は、トランプ氏が選挙活動中から重要課題のひとつに掲げている「サイバー防衛のビジョン」だ。トランプ氏はウェブサイト上で、米軍、法執行機関、プライベートセクターから確保した人材で「サイバー調査チーム」を結成し、広範囲にわたるサイバー防衛・攻撃対策を打ちだす意向を示している。

またトランプ氏は昨年失効した「米国愛国者法(Patriot Act/テロ活動の阻止・防止を目的に、2001年に制定された情報収集に関する規制を緩和する公立法)」の支持者であることを自認しており、大統領就任後には米国愛国者法を復活させるだけではなく、政府による監視の目をさらに強化させると公言している。

インターネットの自由の制限を意図するトランプ氏の考案が、FinTechの発展には欠かせないオープン・インターネット環境にマイナス作用となることは明白だ。アメリカン・バンカー紙の指摘どおり、「決済、金融サービス産業はオープン・インターネット環境に依存している」。米金融コンサルティング会社、クローン・コンサルタントのリチャード・クローンCEOも、トランプ氏による規制の圧力が、「スタートアップが国際市場にアクセスする機会損失をまねくのではないか」との懸念を示している。

しかし当選後約3週間が経過した現在も具体的な対策については明確にされておらず、サイバー攻撃の脅威が増長しかねないとの懸念すら出始めていることから、トランプ氏のインターネット規制が、どの程度まで、どのようなかたちで実行されるかは予測し難い。

■投資の減速・移民制限による労働力低下――ビジネス・インサイダー紙

ビジネス・インサイダー紙は、トランプ氏の経済政策の影響が表面化するにはかなりの時間を要することを理由に、Brexitへの懸念がUK FinTechへの投資減速の引き金となったように、米FinTechへの投資も落ちこむと見ている。

トランプ氏が「ドッド=フランク・ウォール街改革・消費者保護法(2014年オバマ政権が導入した金融規制強化法)」の廃止を唱える一方で、「グラス・スティーガル法(1999年に廃止された銀行に投資銀行業務の兼業を禁じる法律)」に代わる新たな規制導入を目論んでいる時点で、金融機関にとって大きな不安材料だ。

さらには米国内でFinTech支援に最も積極的な消費者金融保護局(CFPB)を閉鎖する提案まで飛びだし、より一層の発展を目指すために規制の制定を求めていたFinTech産業にとっては、政府からの支援が期待できない状況が現実のものとなりつつある。

暗雲がたちこめる行く手には移民制限問題も広がっている。高度技術者や起業家の多くが他国からの移民である事実を考慮すれば、移民の受けいれ枠の削減が労働力の低下につながることは否定できない。

■唯一の利点は法人税大幅軽減――ITIFロバート・アトキンソン氏

米シンクタンク、インフォメーション・テクノロジー・アンド・イノベーション・ファウンデーション(ITIF)の創設者、ロバート・アトキンソン氏は、上記のデメリットについての見解とともに、唯一の利点として法人税の引き下げを挙げている。

この政策によって最も恩恵を受けるのは、35%の法人税を回避する手段として海外に利益をためこんでいる、AppleやGoogle、Facebookなどの大手企業だろうが、トランプ氏の提案する15%という低税率に不満を唱えるFinTech企業が現れるとは考えにくい。

■学資ローン、リファイナンス、ロボアドには恩恵――インベストピア

「FinTechセクターの中では、学資ローンやリファイナンス(借り換え)業者が最大の利益を得るのではないか」という、インベストピアの見解は興味深い。トランプ氏は政府が融資を行っている学資ローンを再び民営化する方針を打ちだしている。学資ローンが民営化されれば、銀行やオルタナ融資企業の需要が飛躍的に伸びるはずだ。

またロボット・アドバイザー企業も、今のところトランプ氏の新政策の影響は極めて低いと見られている。米労働省が投資コンサルタントに義務化しようと試みていた受託者規制(顧客資産の安全を第一に置いた投資アドバイス)が宙吊り状態の現在、トランプ氏が巻き起こした混乱を逆手にとって、受託者規制を満たすような対応策をひねりだすための時間稼ぎにもなる。(アレン・琴子、英国在住のフリーライター)

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