小池百合子「ヒラリー氏敗北の理由は“共感”」

小池百合子「ヒラリー氏敗北の理由は“共感”」

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2016/12/01
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トランプはヒラリーより130万票も少なかった

アメリカ大統領選挙の結果には、とても驚きました。事前の報道では民主党のヒラリー・クリントン氏が優勢だと伝えられていましたが、実際には共和党のドナルド・トランプ氏が、次の大統領に選ばれました。私は「大義と共感」を政治信条としていますが、今回の選挙についてもこの言葉がキーワードになったと思います。

もしヒラリー氏が勝っていれば、アメリカ初の女性大統領でした。そこには「大義」があります。ヒラリー氏も「ガラスの天井を打ち破る」といって女性登用の必要性を訴えていました。政治やビジネスでの多数派は、日本でも米国でも男性であり、残念ながら女性は「万年野党」です。ヒラリー氏が大統領になれば、そうした状況を打ち破る象徴になります。私自身、同じ女性として「ヤッホー」と叫んだことでしょう。

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敗北後の講演にヒラリー氏は「すっぴん」で登場 米大統領選で敗れたヒラリー・クリントン前国務長官は11月16日、選挙後初めて公の場で講演し、「選挙後は二度と家から出たくないときもあった」と話した。ほぼノーメイクであらわれたクリントン氏に対し、SNSでは「好感をもった」との意見が相次いだ。(写真=AFP=時事)

ヒラリー氏に足りなかったのは「共感」です。彼女の演説やテレビ討論は、トランプ氏よりはるかにスマートで完璧でした。しかし、その様子は完璧すぎたのではないでしょうか。夫は元大統領で、自身も前国務長官。誰もが優秀だと認める人物ですが、有権者からすれば、あまりに遠すぎる存在です。現状に不満をもつ人たちから「共感」を集めるよりも、「反感」を買ってしまいました。

一方、トランプ氏は「米国を再び偉大にする」という「大義」を掲げながら、誰も口にできなかった「本音」で語りかけました。繰り返した言葉は「アメリカファースト」。「メキシコ国境に壁を造る」という過激な発言もありましたが、アメリカ人のためなら何でもするという姿勢が、米国経済で取り残されてきた白人中間層の「共感」を集めました。

選挙のテクニックでも、トランプ陣営は優れていました。米メディアの報道によると、総得票数ではトランプ氏はヒラリー氏より約130万票も少なかったのです。ところが米国大統領選は、直接投票ではなく、州ごとに割り当てられた計538人の「選挙人」を積み上げていく間接投票です。このため得票数より、州ごとの勝敗が重要なのです。トランプ氏は、共和党と民主党の支持者数が拮抗する州で確実に勝利を収め、過半数をはるかにこえる290人の選挙人を集めました。落としてはいけない州で、きっちり勝ったのです。

暴言が多いといわれていますが、選挙戦が進むにつれて中身は穏当になっていました。演説でもプロンプターを使うようになり、用意された原稿を読み上げるようになっていました。選挙対策のプロが、トランプ陣営にどんどん集まるようになっていたのでしょう。

今後、トランプ次期大統領がどんな政策を実施していくのか、現時点ではまだわかりません。ただ、「ビジネス」の観点が重要視されることは間違いないでしょう。

たとえば選挙中には、法人税の引き下げや相続税の廃止といった施策について発言しています。現在、米国の連邦法人税は最高で35%、地方税を加えた法人実効税率はカリフォルニア州などで40.75%です。これは、イギリス20%、シンガポール17%と比べても高い水準です。連邦税分の35%を半分以下の15%にするという発言もありました。

もし米国が法人税率の引き下げに踏み切れば、企業の海外流出を食い止めるため、世界中で法人税の引き下げ競争が加速するでしょう。アジアでは、シンガポールや香港、上海といった都市が柔軟に対応してくるはずです。日本の法人実効税率は29.97%で、この数年で段階的に引き下げられてはいますが、こういった世界の潮流を踏まえた議論が必要です。

東京を国際金融都市に、「当面の対応」は年内

私は、日本が世界の大きな流れに乗り遅れることがないように、東京発の取り組みを加速させていきたいと考えています。かつて東京は「アジアナンバーワン」の国際金融都市でした。その地位を早急に取り戻す必要があります。このため東京都では「国際金融都市・東京」の実現に向けた検討体制を準備しました。具体的には長期と短期の2つの視点で会議体を設置します。

1つ目は、「国際金融都市・東京のあり方懇談会」。これは中長期の視点です。金融の活性化や海外の金融系企業が日本に進出するにあたって障害となる構造的な課題を洗い出したうえで、その解決に向けた抜本的な対策を検討します。ここでは税制の改革も議論の対象になるでしょう。日本人だけでなく海外の方からも意見をうかがいながら、私も参加して、金融の専門家や企業経営者と議論します。会議は公開で実施し、約1年をかけて構想を取りまとめていく予定です。

2つ目は、「海外金融系企業の誘致促進等に関する検討会」。こちらは、来年度から着手可能な短期の視点で議論をします。海外の資産運用会社・フィンテック企業の誘致や、行政手続きの英語でのワンストップ支援、特区を活用した生活環境支援などが対象です。日本人向けこそ必要かもしれませんが。実務者レベルで施策の立案に向けた意見交換を行うため非公開で実施し、年内に「当面の対応」を取りまとめて公開します。

日本の国内総生産(GDP)に占める金融・保険業の割合はわずか5%にとどまっています。英国ではGDPの約12%を金融業が占めています。仮に日本がその割合を10%まで引き上げられれば、GDPを約30兆円押し上げることになります。安倍政権の「成長戦略」には「GDP600兆円を2020年頃に達成する」という項目がありますが、経済成長のエンジンとして、首都東京が担う役割はあまりに大きいと思っています。国際的な状況を踏まえ、「今回がラストチャンス」という危機感で、スピード感をもって進めていきます。

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。

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