希望の党や立憲民主党の経済政策は若者を絶望に追いやることになる【評論家・江崎道朗】

希望の党や立憲民主党の経済政策は若者を絶望に追いやることになる【評論家・江崎道朗】

  • 日刊SPA!
  • 更新日:2017/10/11
No image

江崎道朗のネットブリーフィング第22回】
トランプ大統領の誕生をいち早く予見していた気鋭の評論家が、日本を取り巻く世界情勢の「変動」を即座に見抜き世に問う!

◆注目の希望の党は経済オンチだった

今回の総選挙では、民進党の一部が合流した「希望の党」がどこまで躍進するのかに注目が集まっている。その「希望の党」の公約を読んだが、これは若者を「絶望」に追いやる経済政策だ。こんな無茶苦茶な政策では経済成長は止まり、再びデフレに陥ることになるだろう。

急速に悪化している国際情勢に対応して憲法改正や安全保障などについて建設的な議論が行われるようになるためにも、健全な野党が必要とされている。そして希望の党には、憲法や安全保障についてある意味、自民党の政治家以上の見識をもつ政治家がいることを知っていて期待しただけに、経済政策の余りのひどさに落胆してしまった。

希望の党の経済政策は何がどう問題なのか。

それを理解するためにも、アベノミクスについてまず解説しておきたい。

自民党は「数字で見る安倍政権の成果」というチラシを作成し、この五年間の成果をこうまとめている。

「名目GDPが493兆円から、543兆円へ、約50兆円増」「株価が8,664円から、2万397円へ、二倍以上に」「有効求人倍率が0.83倍から、1.52倍へ」。

要するに、経済規模が確実に拡大してきたため、会社の業績が上向き、株価が上がり、会社の資産が増えたため、新規雇用を含む設備投資に踏み切る会社が増えた。設備投資を拡大すれば仕事も増え、有効求人倍率も改善し、仕事をしたい人が働くことができるようになっている。

その恩恵は、全国にも及ぶようになってきており、有効求人倍率は全ての都道府県で初めて一倍を超えた。高卒・大卒就職内定率も過去最高水準となっている。自民党を支持する若者が急増しているのも理由があることなのだ。

いくら頑張っても就職の内定をとれないと、「ああ、社会は自分を必要としてくれないのだ」と、自分を全否定されたような気分に追い込まれる。その辛さは、高度経済成長時代に就職した50歳以上の人にはなかなか分からないかもしれない。

◆消費税減税と財政出動が必要

若者の雇用環境を劇的に改善することができたのは、第二次安倍政権が掲げた新しい経済政策、アベノミクスのおかげだ。

このアベノミクスは、次の三本の矢で構成されている。

第一の矢が「大胆な」金融政策。つまり日本銀行と連携して一万円札を大量に刷るということだ。

第二の矢が「機動的な」財政政策。この十数年、公共事業を敵視し、緊縮財政を続けてきたが、それを止めて、政府主導で財政出動をしようということだ。

第三の矢が「民間投資を喚起する」成長戦略だ。規制緩和を通じて外国人観光客を呼び込んだり、働き方改革をしようとしている。

このアベノミクスによって本来なら、もっと経済規模が拡大し、景気は良くなっているはずなのだ。ところが、安倍政権は以下の二つのミスをした。

一つは、2014年に消費税を8%に引き上げたため、GDPの6割を占める個人消費が一気に落ち込んでしまったことだ。だからこそ3年前の総選挙で安倍政権は「消費税増税の延期」を争点にしたのだ。この総選挙で勝利し、安倍政権は消費税増税を延期したが、減税にまで踏み込まなかったので、その悪影響が続き、現在に至るまで景気は伸び悩んでいる。

もう一つは、アベノミクス第二の矢「機動的な」財政出動が不十分ということだ。

安倍政権としては、公共事業などを増やし、景気回復を促進しようとしたのだが、それを妨害してきたのが、菅直人民主党政権の方針であった。菅首相は2010年6月にカナダのトロントで開かれたG20首脳会議において「2015年度にGDP(国内総生産)に対するPB(基礎的財政収支)の赤字額の割合を2010年度比で半減し、さらに2020年度に黒字化する目標」を表明した。この性急な財政再建路線があるため安倍政権は機動的な財政出動ができなかった。

残念ながらこの二つの課題について、自民党の公約は曖昧だ。

安倍首相は、景気悪化の場合は増税を延期する場合もあるとしながらも、増収分の使途変更を前提に消費税増税を予定通り実施すると明言している。もともとこの増税も2012年の野田民主党政権のときの三党合意に始まったわけだが、「民主党も解党するのだから三党合意は無効となり、増税も見直す」となぜ明言できないのだろうか。

また、財政出動を縛ってきた「性急な財政再建路線の見直し」についても安倍首相が会見で述べているだけで公約には明記されていない。

こうした自民党の「限界」を指摘できる野党が日本には必要なのだ。

◆希望の党も立憲民主党も、社会主義政党か

ひょっとしたら、希望の党がその役割を果たしてくれるかも知れないと期待した。

しかし、その期待は見事に裏切られた。

希望の党の政策集『私たちが目指す「希望への道」』には、消費税増税について「凍結する」と明記しているが、同時にこう書いているのだ。

「金融緩和と財政出動に過度に依存せず、民間活力を引き出す『ユリノミクス』を断行する」「日銀の大規模金融緩和は当面維持した上で、円滑な出口戦略を政府日銀一体となって模索する」。

大規模な金融緩和によって現在の景気回復があるのに、その金融緩和を止める方向を模索するというのだ。しかも「財政出動」にも否定的だ。仮にこうした「緊縮財政」政策が採用されたら、日本は再び不景気へと転落することになる。

特にひどいのが「内部留保」課税だ。政策集には「300兆円もの大企業の内部留保に課税することにより、配当機会を通じた株式市場の活性化、雇用創出、設備投資増加をもたらす」とある。

内部留保とは、そもそも法人税(国税)と事業所税(地方税)を払った後の残りだ。これに課税するのは二重課税であり、租税原則に反する。

しかもこの内部留保は、必ずしも現金として手元に残っているわけではなく、設備拡充や技術開発などの再投資に回されている場合が多い。ただし内部留保が積み上がり、現預金の比率が高くなってきていることも事実だ。このため、麻生財務大臣のように「金利のつかない金を貯めて何をするのか。給与や設備投資に回したらどうか」と問題視する声もある。

そもそも企業が設備投資を拡大しないのは、2014年に消費税を8%にあげて個人消費を縮小させてしまったからだ。よって政府がなすべきことは個人消費を拡大する政策、つまり消費税減税と、日銀による更なる金融緩和による環境整備であるはずだ。

ところが希望の党は今回、大企業に対して「設備投資を拡大しないのなら内部留保に課税するぞ」と恫喝する政策を打ち出したのだ。内部留保を積み上げる大企業に対して罰金を課そうという発想は社会主義特有のものであり、極めて恐ろしい。

もしこの内部留保課税が具体化するならば、優良企業は国外へと逃げ出すだろう。そしてそれは、雇用環境の悪化をもたらすだけだ。

なお、民進党の一部政治家が結成した枝野幸男代表の「立憲民主党」の経済政策も見たが、金融政策や財政政策には見るべきものがない。「所得税・相続税、金融課税を含め、再分配機能の強化」と、金持ちに対する税金を上げて、その一部を貧困層に配る典型的な「社会主義政策」が掲載されているぐらいだ。

企業や金持ちに対する課税強化では、景気は回復しない。そして景気が回復しなければ、福祉を充実させる財源も捻出できないのだ。立憲民主党は、民主党政権時代になぜ景気が低迷したのか、なぜ社会保障を充実させることができなかったのか、まったく学んでいないようだ。

デフレ期には、適切な金融政策と政府による財政出動、そして民間企業の活動を妨害する「規制」の緩和で自由な企業活動を支援し、個人消費を拡大することこそが景気回復への道なのだ。そうした経済政策の基本を理解する野党が誕生してこそ、二大政党制は実現できる。

政治家の離合集散による政権交代を訴えるマスコミも存在しているが、各党の公約を読む限り、二大政党制はまだまだ早いようだ。

【江崎道朗】
1962年、東京都生まれ。評論家。九州大学文学部哲学科を卒業後、月刊誌編集長、団体職員、国会議員政策スタッフを務め、外交・安全保障の政策提案に取り組む。著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)など

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

経済カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
JDI、深まる経営危機...アップルをサムスンに奪われ巨額損失、法的整理も現実味増す
ロッシとバトルするロボット? ほか、ヤマハ発動機の東京モーターショー2017出展概要
ケネディ前大使が語った「ゴミは中国、漁業は日本よ」の意味とは
エキスパートたちが明かす“隠れホワイト企業”の見極め方「“最低条件”は5つ」
シチズン時計、デイバックシリーズをイメージした「OUTDOOR PRODUCTSウオッチ」第2弾
  • このエントリーをはてなブックマークに追加