「家族レベルでも分裂」。バルセロナ在住日本人が見たカタルーニャ独立騒動

「家族レベルでも分裂」。バルセロナ在住日本人が見たカタルーニャ独立騒動

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2017/11/12
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DasWortgewand /pixabay(CC0 Public Domain)

プチデモン・カタルーニャ前州首相がベルギーで逮捕、保釈されるなど、カタルーニャ独立騒動はとうぶん収まりそうにない。

前回に引き続き、筆者の友人でカタルーニャ在住の日本人・佐藤美佐江(仮名・敬称略)の独白を続けていこう。

「私の周りを見ても半分以上が独立反対だし、独立したらポルトガルより豊かになれるとか威勢のいいことを言っている人もいるけど、私にはそうは思えないな。でも、独立賛成派のほうが響きがいいから、若者が取り込まれている感じがするよね」

実際に自治権停止、そしてカタルーニャ州首相が解任そして反乱罪で訴追、その当人が国外逃亡と事態が進んでいる。下手をしたら“名誉ある撤退”で終わった「スペイン版加藤紘一の乱」である。

「あったあった、日本にもそんなのあったよね。次の選挙が12月(註:12月21日の州議会選挙のこと)なのね。そのときに独立志向が強い自治政府になるのか、逆のほうにいくのか、そこで大きく変わる気はする」

ちなみに、この会話は美佐江の職場で食事休憩の間に行った。

「やっぱり困るのはまたゼネストが起きそうなことで、今週もバスが止まる、メトロの本数が減るという話で、今日は無事職場に来れたけど明日はどうなることやら……」

いま美佐江がいちばん憂いているのが個人レベル、家族単位での分裂だという。

「うちの家族の中にはそんなに過激な人はいないけど、親戚の若い子で独立派に取り込まれちゃったのはいるよ。一種の祭りというか、独立ってやっぱり熱いから感化されちゃうのよね。“数か月前なら投票に行かなかったけど、オレは完全に独立派になったぞ”みたいな感じでフェイスブックにも最近すごい書き込みしてるよ」

そして、独立か反独立かとは別の対立軸が生まれつつあるという。

「さっき(前回)州警察の話をしたけど、こういう騒ぎになったら仕事量も時間も増えるじゃない。だけど、残業手当みたいなのが全然出ないって。そもそも残業なんか滅多にないはずの国で一日12時間・13時間労働になって手当ても出ないわ、家族も置き去りにされるわで、そこの不満が募っているみたいよ」

さらに“州警察の憂鬱”は続く。

「親しい知人の中に、息子が警察の特殊部隊に属している人がいて、何かあったら真っ先に投入されるわけよね。親御さんは気が気じゃないって。被害者になる可能性もあるし、加害者になる可能性もあるわけじゃない。でも攻撃されたら反撃するしかないからね」

◆「子供たちに独立思想を植えつけられたら……」

そのとき筆者はかつてイスラエルで見てきた実例の話をした。完全武装のイスラエル軍に対し、インティファーダを起こしたパレスチナ人は石を投げて抵抗する。もちろん、被占領者が抵抗するのはある意味で人間の尊厳というか、基本的人権の一つと言える。ただ、忘れてはならないのはこの「投げてくる石」は下手したら赤ちゃんの頭くらいの大きさがあり、結構な速度で投げてくるということだ。

言ってみれば野球における「確信犯的ビーンボール」のようなもので、ヘルメットを被らないまま当たり所が悪かったら文字通り命に関わるのだ。こうなったら、イスラエル軍兵士としても発砲して鎮圧せざるをえない。これは政治的に問題をどう解決するかとは全く別次元の話で、個人の命が今危険にさらされているとするなら、そうするしかない。

美佐江は、「できれば本当の独立派の人の声も聞いてみたいんだよね」と言う。周りにそういう人が一人もいないので、よくわからないのだという。もし取材の結果そういう人がいれば紹介しようか、と私が水を向けると、「それはいらない」という。

「そりゃ私だって街のど真ん中でデモやっている人に話そうと思えば話せるけど、あちらが冷静じゃないから。それだったら、タカが独立賛成派の人の声を聞いて、それを記事にしてくれたのを読むほうがいいかな。直接は話したくない。間接で十分よ」

身近なところの分裂で言うと、次のようなこともあったらしい。

「私の姑が通っているジムがあって、ジム仲間何人かでWhattsappのグループを作っていたらしいんだけど、いつの間にか政治の話を持ち込む人があらわれて仲間割れ、とかね。同じく職場仲間の飲み会とかの連絡に使っていたグループが同じく仲間割れ、とか。家族同士でも仲間割れがおきているよ」

バルセロナ在住の日本人の中にも、「連れ合いがガチガチの独立派だから、完全にカタルーニャ独立に染まって感化された人もいる」という。可能なら、筋金入りの独立派であるFCバルセロナのジェラール・ピケと結婚したコロンビア人歌手・シャキーラの声を聞いてみたいものだ。

そして美佐江は来月三歳になる一児のママとして、今後のカタルーニャの教育に深い懸念を示した。

「今でも学校の教育は全部カタルーニャ語でやっているんだけど、子供たちに過激な独立思想を植え付けられるとしたら、ちょっと怖い。実際、投票所になったのが小学校で、その小学校で流血事件になってしまったから、親も子供も大きなショックを受けているんだよね」

「そういえば、“ペップ”がツィッターで訴えていたけど、指を折られた女のコがいたんだろ」
(註:ペップ・グアルディオラ 現マンチェスター・シティ監督のこと。カタルーニャ人で筋金入りの独立派である)と筆者が水を向けると、「あれは違う」と美佐江は言う。

「あの後、指を折られたはずの女性がテレビに出て、“ちょっとすり傷ができました”って言っていたもん。思わず、“指を折られたんじゃないんかい”とツッコミたくなったけどね」

実際、ペップのツィッターアカウントには「あれは誤報だったではないか。取り消して、謝罪しろ」という書き込みが殺到している。11月1日時点で、ペップ側からの取り消し・謝罪はまだない。

今後も何人か専門家の声ではなく、カタルーニャの一般人、市井の人の声を拾い、紹介していく予定である。

【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。
雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト

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