巨額買収失敗でも「懲りない」損保ジャパン、今度は6千億で「売れ残り企業」を買収で「いいカモ」か

巨額買収失敗でも「懲りない」損保ジャパン、今度は6千億で「売れ残り企業」を買収で「いいカモ」か

  • Business Journal
  • 更新日:2016/11/30
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SOMPOホールディングス傘下の損害保険ジャパン日本興亜は10月5日、米国で再保険事業を展開するエンデュランス・スペシャルティ・ホールディングスを買収すると発表した。

エンデュランス株を1株93ドル(約1万円)で全株取得する。買収する価格は3カ月の平均株価に40.3%のプレミアムを上乗せした。買収総額は63億ドル(約6394億円)。

エンデュランスは米ニューヨーク証券取引所に上場しているが、登記上の本社は英領バミューダにある。バミューダの会社法ではTOB(株式公開買い付け)にかけずに全株を買収できる。

買収額は東京海上ホールディングスによる米HCCインシュアランス・ホールディングスの買収(当時の為替相場で9400億円)に次ぎ過去2番目。MS&ADインシュアランスグループホールディングスによる英ロイズ損保2位のアムリン(同6347億円)を上回る。

買収は手元資金で賄う。8月に損保ジャパンが総額2000億円発行したハイブリッド債による調達分も一部充当する。2017年3月末までに買収手続きを終え、完全子会社とする予定だ。

●米同時多発テロを機に誕生した再保険会社

2001年9月11日、米国で同時多発テロが発生した。航空機などあらゆる分野でテロという未知のリスクが強く認識された。英領バミューダでは、投資ファンドから1兆円を超える資本が注ぎ込まれ、保険会社から保険契約のリスクを引き受ける再保険を主な業務とする会社が相次いで設立された。

エンデュランスは、米同時多発テロ直後の01年12月に設立された会社だ。アライド・ワールドやアクシス・キャピタルなど、同じ年に設立された再保険会社をまとめて、「2001年組」と呼ばれている。

エンデュランスはサイバー攻撃や損害賠償請求に備える保険などに強みがある。農作物の価格下落や収穫量の減少に備える農家向けの所得補償保険など農業保険分野では全米5位。昨年は同じバミューダ籍の再保険会社モンペリエ・リ・ホールディングスを買収するなどM&A(買収・合併)で事業を拡大してきた。

エンデュランスの売上高は年平均7%成長し、15年12月期の当期純利益は日本円換算で355億円。買収後、SOMPOグループ全体に占める海外利益の割合は、16年3月期の12%から27%となり、目標の25%を超えるとされている。

買収で生じる「のれん代」は、最大で2230億円程度を見込んでいる。のれん代の償却が来期の利益を押し下げる要因となる。

●仏再保険会社スコールで大失敗

日本の保険会社は国内市場の縮小を背景に、海外に成長の場を求めてきた。SOMPOは今回の買収により、収益源をグローバルに拡大するほか、商品の多様化や人材の獲得を目指すとしている。

しかし、再保険会社の買収には懐疑的意見も多い。SOMPOはフランスの再保険会社、スコールのM&Aで大失敗しているからだ。

SOMPOは15年3月6日、スコールを持ち分法適用会社にする計画を発表した。再保険で世界5位のグローバル企業をグループに取り込むというものだった。スコールの筆頭株主であるスイスの投資会社から議決権の8.1%に当たる株式を取得した後に、市場から株式を追加取得して15%以上を獲得。持ち分法適用会社に組み入れ、取締役を1人派遣する青写真を描いていた。

持ち分法適用会社にすれば出資比率に応じて利益を取り込めることから、年間100億円規模の純利益を押し上げることが可能とソロバンを弾いた。まずスコール株の購入に700億円を投じ、8.1%を保有する筆頭株主となった。

だが、M&Aのプランはわずか9カ月で破談となった。同年12月11日、スコールを持ち分法適用会社にすることを見送ると発表した。断念の理由は「投資の経済合理性および、その後の環境変化などを総合的に検討し決定した」というもの。およそ具体性に欠けていた。

海外メディアは、SOMPOが15%の株式を取得して持ち分法適用会社にすることをスコール側が拒否したと伝えた。スコールはSOMPOのライバルの損保会社と取引があった。「SOMPOの持ち分会社になるなら取引をやめる」と圧力がかかったというわけだ。

●SOMPO、買収は失敗か

世界中の保険会社と取引がある再保険会社は、特定の損保会社のグループ会社になって色がつくことは百害あって一利なし。等距離外交が基本である。SOMPOはスコールのケースでは、投資会社が投下資金を回収するための出口戦略に利用されただけとなった。700億円は無駄金に終わった。

スコールで懲りたはずなのに、また再保険会社の買収に動いた。スコールは持ち分法適用会社とする計画だったが、エンデュランスは完全子会社にする。

エンデュランスも、SOMPOのライバルの損保会社と取引をしている。SOMPOに利益をもたらすエンデュランスの再保険に、競争しているほかの損保が加入するとは考えにくい。

さらに、金融業の海外でのM&Aに共通する問題だが、買収後に有能な人材が流出しやすいという懸念がある。一般的に、製造業の買収は製品と販路を手に入れることが目的となるが、金融業の買収は商権と人材を確保することが最大の狙いだ。

グローバルプレーヤーでない企業が買収したと判断すれは、有能な人材はさっさと辞めていく。腕こきであればあるほど、同業他社から高額で引き抜かれる。結果として平均以下の人材しか残らない。野村證券を傘下に持つ野村ホールディングスが典型例だが、日本の金融業は海外でのM&Aで人材流出の辛酸を舐めてきた。SOMPOがその轍を踏まないという保証はどこにもない。

2001年組の再保険会社に出資した投資会社は、経営が軌道に乗ったことを見届けて、資金の回収に入った。エンデュランスが昨年、バミューダ籍の再保険会社を買収したのは、高値で売りつけるための“持参金”だったとみられている。

エンデュランスは米国の有力投資銀行が日本の損保業界に売り込みをかけていたリストに入っていた会社だ。日本向けのリストに載っている会社の多くは売れ残りだ。

売れ残りの案件に6393億円はいかにも高い。「日本のお人好しの金融機関以外、絶対にこんな高値では買わない」と、国際金融筋はシビアな見方をしている。SOMPOは焦った末に大きな買い物に打って出た感がある。
(文=編集部)

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