安倍首相が「嫌い」でも取材は礼を尽くせ

安倍首相が「嫌い」でも取材は礼を尽くせ

  • PRESIDENT Online
  • 更新日:2017/10/13
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10月8日、与野党8党首の討論会が東京・内幸町で開かれた。ここで行われたメディアとの質疑応答で、安倍晋三首相などに横柄な態度で質問するベテラン記者がいた。ジャーナリストの沙鴎一歩氏は「記者として残念だ。これでは信頼を失う」という。取材者はどのような態度を心がけるべきなのか。各紙の報道姿勢を問う――。

朝日の論説委員と安倍首相が論争?

10月8日、与野党8党首の討論会が東京・内幸町で開かれた。党首同士の討論が行われたあと、主催の日本記者クラブの企画委員との質疑応答があった。この企画委員とは新聞各社の論説委員や編集委員といったベテラン記者なのだが、その態度が横柄で、非常に残念だった。討論会の模様はNHKでも中継されていたので、同じような感想を持った視聴者も多かったのではないか。

記者が公約の中身について党首を問い詰めるのは当然だ。しかし党首が丁寧に答えているに、尊大な口調で聞き返したり、答えを遮って質問したりするのはどうだろうか。党首に対し、無礼ではないだろうか。これだから新聞社が信用を失うのかもしれない。

沙鴎一歩の愚見だが、新聞の社説やコラムはどう書いているのか。読み解いていこう。

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毎日新聞の2面の企画記事(10月9日付)。見出しは「気色ばむ首相、朝日批判 加計問題で応酬」。

毎日は「安倍首相の説明は説得力を欠く」と批判する

9日の毎日新聞の社説は、問題の党首討論会を正面から取り上げている。

「首相の討論会発言 これが丁寧な説明なのか」との見出しを付け、書き出しから「唐突に衆院解散に踏み切った安倍晋三首相の説明は相変わらず説得力を欠いた」と安倍首相を批判する。

そのうえで「臨時国会での質疑を封じて解散を表明した際、首相は国会など必要ないといわんばかりに『選挙は民主主義における最大の論戦の場だ』と言い切り、加計学園や森友学園問題の『疑惑隠し』ではないと力説した」と書き、次に「それでは討論会での説明が国会に代わるものだったろうか」と追及する。

安倍首相の答弁やその姿勢を「加計問題に関して首相は『私が影響力を行使したわけではない』と、これまでの国会答弁を繰り返した。加えて、首相寄りの関係者の証言がもっと報じられていれば国民の理解は進んだ――とマスコミに責任を転嫁するような反論も展開した」とまで酷評する。

権力への「追及」には大賛成だが……

さらに「また森友問題では、首相の妻・昭恵氏の国会招致について『私が代わって十分に説明している』と引き続き拒否する考えを示した」とも書き、こう指摘する。

「『丁寧に説明する努力を積み重ねたい』という首相の約束はどこへ行ってしまったのか。これでは国民の不信感が消えるはずがない。こうした首相の姿勢も含め、引き続き衆院選の焦点となるだろう」

8日の討論会でも毎日新聞の専門編集委員は追及の手を緩めることなく、安倍首相の疑惑に迫った。権力に対する新聞記者の追及は当然な行為であり、取材の原点でもある。この沙鴎一歩も大賛成である。

かつてのロッキード事件やリクルート事件でも、記者会見場は鋭い質問が次々と飛び交い、疑惑を解明して国民の前にさらけ出してやりたいという記者たちの熱気が渦巻いていたものである。

続けて毎日社説は北朝鮮問題もお得意の論調を展開する。

「首相は北朝鮮問題を挙げて『国難突破解散』だと言う。討論会では今後、北朝鮮情勢はさらに緊迫するとの見方を示した。今のうちに衆院選を行い、国民の信を得て乗り切りたいとの考えかもしれない」
「だが、そうした情勢分析をしているのなら、まず国会できちんと説明するのが筋だ。説明もなく『国難』と不安をあおって選挙に臨むというのは、やはり順番が逆だ」

「首相が気色ばんで朝日を批判した」

毎日新聞は前述の社説が掲載された9日付紙面の2面で、こんな選挙企画の記事を載せている。

冒頭が「『ぜひ国民の皆さんに、新聞をよくファクトチェックしていただきたい』」で、見出しは「気色ばむ首相 朝日批判」「加計問題で応酬」だ。

記事は「8日の党首討論会では、安倍晋三首相が衆院解散の判断に至った要因の一つとされる森友学園・加計学園の問題も取り上げられ、首相が気色ばんで朝日新聞を批判する場面があった」と書いた後、こう説明していく。

「きっかけは日本記者クラブの企画委員の質問。加計問題での首相の説明が『不十分』とする回答が79%を占めた朝日新聞の調査に触れた。応答で首相は7月10日の加計問題に関する国会の閉会中審査に言及。参考人で出席した加戸守行・前愛媛県知事の発言を『次の日に全く(朝日が報道)していない』と続け、『胸を張ってしていると言えますか』と聞いた。『はい、できます』と応じられると、首相が『チェック』を呼びかけた」

毎日のように書き進めると、安倍首相がかなり攻撃的になっていたような印象を受ける。しかし沙鴎一歩が見たところ、朝日の論説委員の質問とそれに対す受け答えで安倍首相が「気色ばんでいた」ようには見えなかった。安倍首相は時々、笑顔も見せながら余裕を持って答えていた。

決して安倍首相の肩を持つわけではない。朝日の論説委員に限らず、質問する記者側が、かなり横柄な態度だった。そこが残念でならないのである。

毎日は安倍首相が「嫌い」なのか

さらに毎日の企画記事はこう続く。

「この問題では、希望の党の小池百合子代表も『情報公開が足りない』と指摘。共産党の志位和夫委員長は『冒頭解散強行の理由は疑惑隠し以外にない』と追及した。別の企画委員も『一番偉い人の友達が優遇された。ゴルフも会食もした方が厚遇を受けたことに、何の反省も問題も感じないんですか』と質問した」
「首相の答えはこれまでと同様で、『私自身がもっと慎重であるべきだった。しかし私が何か(権限)を行使したとは、前川さん(喜平・前文部科学事務次官)を含めて誰も証言していないことが明らかになっている』と繰り返すにとどまった」

こう書かれると、どうしても安倍首相にマイナス点が付いてしまう。毎日は安倍首相その人が嫌いなのだろう。

朝日の論説委員が「噴飯」質問?

最後に産経新聞のコラム(10月9日付)を取り上げる。筆者は阿比留瑠比・論説委員兼政治部編集委員である。こちらは10月8日に「産経ニュース」にも掲載されている。

阿比留氏は「8日の日本記者クラブ主催の党首討論会は、会場にいて赤面する思いだった。学校法人『加計学園』をめぐるベテラン記者(記者クラブ企画委員)らの質問があまりに噴飯もので、聞くに堪えなかったからだ」と指摘する。

どこが口の中の飯を吹き出してしまうほど「おかしかった」のだろうか。沙鴎一歩と同様に質問する記者の態度が横柄なところを問題視しているのか。

そんなことを思いながら阿比留氏のコラムを読み進めると、毎日の選挙企画記事が取り上げたのと同じ朝日の論説委員と安倍首相のやりとりをそのひとつに挙げている。

「会場から笑い声が漏れる中、(中略)社の論調と異なる加戸氏らの意見もきちんと報道していると言い張っていた。安倍首相も苦笑を浮かべつつ、国民に新聞のファクト・チェックをするよう求めるにとどめていたが、実際はどうだったか」
「朝日がいかに『(首相官邸サイドに)行政がゆがめられた』との前川喜平・前文部科学事務次官の言葉を偏重し、一方で前川氏に反論した加戸氏らの証言は軽視してきたかはもはや周知の事実である。それなのに、どうして胸が張れるのか全く理解できない」

前川氏の証言と加戸氏の反論のどちらが正しいか、この2人を直接取材したことがないのでいまの沙鴎一歩には分からない。それに「会場の笑い」「安倍首相の苦笑い」など毎日の企画記事と阿比留氏のコラムにも、多少の違いがある。人間である以上、証言や文章の表現には、どうしても主観が入ってきてしまうからだろう。

ここで一言、いわせていただこう。朝日の論説委員が正しいのか、あるいは安倍首相の対応に間違いがないのかが、大きな問題ではない。

新聞記者には社のスタンスに関わりなく、真実を追及することが求められる。それを忘れ、「安倍首相が生意気だから」「安倍首相と仲良くしたいから」といった思惑で取材を進め、記事を書くことは避けなければならない。

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