北朝鮮高官が初証言!金正男暗殺「実行役の4人はすでに消された」

北朝鮮高官が初証言!金正男暗殺「実行役の4人はすでに消された」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/03/20
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金ハンソル氏が自身の映像を流したことで、アメリカがバックについて亡命政権を樹立する可能性が出てきた。そんな中、「平壌奥の院」から初めて証言者が現れ、北朝鮮国内の混乱ぶりを明かす。

邪魔で仕方ない存在だった

――平壌には、2月13日午前中に起こった金正男暗殺事件は、いつどのような形で広まったのか?

「その日の午後には、私の耳に事件の一報が飛び込んできた。内部での発表などは一切ないが、実は平壌の口コミ社会は非常に発達しているのだ。

おそらく他の朝鮮労働党や朝鮮人民軍の幹部たちも、私と同時期くらいに知ったことだろう。翌々日の15日に、平壌体育館で開かれた『金正日同志誕生75周年慶祝中央報告大会』に参加した党や軍の幹部たちは、すでに全員が知っていたはずだ」

――北朝鮮の一般市民も知っているのか?

「一般市民は、元帥様(金正恩委員長)に兄弟がいることすら知らない。まして外国暮らしの異母兄のことなど、まったく知らない。存在すら知らないのだから、死亡したことなど知るわけもない」

世界に衝撃を与えた金正男暗殺事件から1ヵ月が経過し、現場となったマレーシアと北朝鮮との間で、激しい外交戦が続いている。

3月8日には、金正男氏の息子・金ハンソル氏(21歳)が、ユーチューブに自身の動画をアップし、すでに家族ともども亡命していることを匂わせた。

そんな中、中国を経由して質問を託す形で、初めて朝鮮労働党幹部との接触に成功した。

北朝鮮は、アジアを揺るがせた今回の事件をどう捉えているのか。以下、朝鮮労働党幹部との一問一答である。

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――金正恩委員長にとって、金正男氏は、どのような存在だったのか?

「想像するに、長年にわたって邪魔で仕方ない存在だったろう。

正男は、'01年に日本で、みっともない形で拘束された時、将軍様(故・金正日総書記)の逆鱗に触れた。

その時、父親から出国禁止を言い渡されたが、正男はしばらくすると、その命令を無視して、再び海外生活を始めた。それで将軍様に、『二度と平壌に戻って来るな』と厳命されたのだ。

だから将軍様が、'11年12月に逝去された時も、正男は祖国に戻っていない。いまの元帥様も父親と同様の方針を貫いており、正男の帰国を許さなかった。

元帥様は、正男の海外での放蕩ぶりと、天衣無縫な発言を案じておられた。それでも張成沢(金正恩の叔父の党行政部長)と金敬姫(金正日総書記妹の軽工業部長)夫妻がパトロンとなって、正男に送金を続けていた。

それが'13年12月に、張成沢が処刑されたことで、正男への送金も途絶えた。

正男は、北京やマカオなどに、計4つもの家庭を持っていたと聞いている。そのため、パトロンを失った後は、さぞや生活を維持するのに苦労したことだろう」

秘密を知った者は、殺す

――そのような正男氏に、金正恩委員長はなぜ、殺害指令を出したのか?

「私が聞いているのは、正男が米帝(アメリカ)に担がれて、亡命政府を樹立するのを、元帥様が危惧されたということだ。

正男がこれまで、外国で好き勝手にしゃべってきたのは事実だが、それだからと言って、殺す必要まであったのか。その辺りの気持ちは、元帥様に伺わないと分からない」

――金委員長の命令を受けて、実際に犯行に及んだのは、北朝鮮のどの機関だったのか。

「中心になったのは、朝鮮人民軍偵察総局の19課だと聞いている。彼らは血の気の多い連中ばかりだから、久々の海外での大仕事ということで、はりきって遂行したのだろう。

加えて、国家保衛省がサポートしたとも聞いている。その意味では、偵察総局と国家保衛省の『共同事業』と言える」

――猛毒のVXガスは、北朝鮮からマレーシアまで運び込んだのか?

「それについては、まったく知らない。おそらくそうだろう。いろんなところに分散して忍ばせれば、少量の薬品をマレーシアまで運ぶのは、それほど難しいことではないと思う」

――マレーシア警察は、実行役として、呉ジョンギル、李ジェナム、洪ソンハク、李ジヒョンの4人の北朝鮮人を指名手配した。だが4人はすでに、ウラジオストクなどを経由して、北朝鮮に帰国済みであることが確認されている。

この4人は帰国後、金委員長の命令を完遂した栄誉を称えられ、「共和国英雄勲章」を授かったりしたのか?

「おそらく先代の将軍様の時代ならば、そうなっていただろう。

例えば、将軍様は幹部同士の密告を奨励していた。そして、その密告が正しかった場合、対象者を粛清した後、必ず密告者に褒美を与え、抜擢していた。そうすることで、幹部たちに忠誠心を植えつけていたのだ。

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ところが、いまの元帥様の統治方法は違う。父親同様に密告を奨励しているが、密告が正しかった場合、対象者を粛清した後、密告者をも粛清するのだ。なぜなら密告者は、知ってはならない秘密を知ってしまっているからだ。

今回の正男の暗殺事件でも、元帥様は、帰国した4人の実行役を、直ちに抹殺するよう命じたと聞いている」

金ハンソルも危ない

――それでは、マレーシアを追放された北朝鮮の姜哲大使や、逮捕後に釈放されて、やはり国外追放になった李ジョンチョル氏も、北朝鮮に帰国すると粛清される運命にあるのか?

「二人がこの事件の一味だったり、事件の真相について知っていたとしたら、そうなる可能性が高いのではないか。

姜哲大使の前任の張勇哲駐マレーシア大使も、ただ張成沢の甥だというだけで、張成沢の処刑後に帰国を命じられ、一家で処刑された。

今回、李ジョンチョルは、自分がマレーシア警察に逮捕されれば、マレーシアの監獄に繋がれるものの、命は助かると思っていたのではないか。だからマレーシアに残って逮捕された。

それが釈放されてしまったことで、家族もろとも強制帰国となったのだから、内心では喜ぶどころか、粛清を恐れていることだろう」

――金正男氏の息子、金ハンソル氏も今後、暗殺の対象になるのか?

「ハンソルが共和国(北朝鮮)に対して不穏な動きを少しでも見せれば、当然ながら元帥様は、ハンソルを抹殺せよとの指令を出すだろう」

――2月初旬には、金正恩委員長の最側近の一人で、幹部粛清の実行責任者だった金元弘国家保衛相が1月に解任されたと、韓国メディアが一斉に報じた。実際、2月以降、金元弘保衛相は公の場に姿を現していない。何があったのか?

「金元弘は、部下たちと元帥様の陰口を叩いていたと、党中央組織指導部から元帥様に進言があったようだ。

本当に陰口を叩いていたのかは不明だが、金元弘は、幹部を粛清する責任者だったため、多くの幹部たちから恨まれていたのは事実だ。特に組織指導部と確執があった。
ともあれ、金元弘はすでに、国家保衛省の側近の部下たちとともに処刑されたと聞いている」

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――世界で金正恩委員長ほど、部下を次々と粛清している国家指導者はいないだろう。ついには実の兄や、秘密警察のトップまで殺してしまった。

そんなことを繰り返していて、自身は危うくならないのか?

「元帥様の体制は、いささかも揺らいでいない。それどころか、兄まで殺した指導者ということで、幹部たちは畏れおののいている。

それは、'13年末に叔父の張成沢を処刑した時も同様だった。金日成-金正日-金正恩と続く『白頭の血統』は、それほど強固なものなのだ」

核実験は必ずやる

――3月1日から、丸2ヵ月にわたる史上最大規模の米韓合同軍事演習が行われている。空母やステルス戦闘機などを駆使して、約32万人もの兵士が連日、参加している。

北朝鮮は、この演習が実戦と化すことを恐れているのか。

「それは大きな脅威と感じている。だからこそ、対抗措置としてミサイルを発射し、内外に朝鮮人民軍の威力を誇示しているのだ。

いまの朝鮮人民軍の最大の問題は、軍に食糧と燃料が回らなくなってきていることだ。

だがそれでも、わが国は1953年に朝鮮戦争に勝利して以降、これまで64年間も、常に戦時体制で生きてきた。そのため、耐えることには慣れている。わが国民は精神力の強さでは、アジアのどの国にも負けない」

――北朝鮮は他にも、米韓合同軍事演習に対抗する手段を持ち合わせているのか。

「太陽節(4月15日の故・金日成主席の誕生日)の祝日までに、米帝に対抗するため、世界に轟く『二つの大事業』を抜かりなく準備しておくようにというのが、元帥様の指示だ。

それは第一に、6回目の核実験だ。わが国の核兵器はすでに小型化し、核弾頭としてミサイルに搭載できるレベルまで達していることを、改めて見せつける。

もう一つは、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験だ。巨大なミサイルを太平洋に向けて撃ち、ハワイの向こうまで届くことに、世界は驚愕するだろう」

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――北朝鮮は今後、引き続き米韓とのチキンレースを続けていくつもりなのか?

「その通りだ。どこまでも強硬路線を貫いていき、進めるところまで進んでいく。こちらが殺らなければ殺られてしまうというのが、元帥様の主張だ。

元帥様を推戴する全朝鮮人民も、元帥様とともに進んでいくことこそが、自分たちの使命だと信じている」

――2月18日、これまで北朝鮮の「後見人」だった中国が、ついに北朝鮮産の石炭の輸入を禁止した。北朝鮮最大の輸出品を、最大の輸出国から禁止されたことで、経済的に一層厳しくなったのではないか。

「中国が石炭の輸入を禁止するという本当の意味は、石炭の輸入を減らすということだ。実際、輸出量はこれまでの半分くらいになったが、中国は引き続き、わが国の石炭を受け入れてくれている。

米帝が南の傀儡(韓国)にTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)を配備しようとしている現在、朝中の友好が損なわれることはない。

南の方が、よほど国内が混乱しているではないか」

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「週刊現代」2017年3月25日・4月1日合併号より

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