「離島マラソンでサブスリーをどうしても達成したい!」タカ大丸の珍道中 続・加計呂麻島編

「離島マラソンでサブスリーをどうしても達成したい!」タカ大丸の珍道中 続・加計呂麻島編

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2017/09/17
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奄美では普段、なかなか目にすることのない五右衛門風呂を体験(写真はイメージです)

前回書いたように大会前々日に最終調整のダッシュが100mできなかった私は、レース前日にあらためて日中に少しだけ走ることにした。

スタート地点となる港と今滞在している於斉は山で隔てられていて、ちょっと軽く走りに行こうかという距離ではない。直線距離にすれば5~6㎞だと思うが、前日は足を休めるのが大鉄則である。なので会場偵察はしないことにした。

部屋に戻ってからは、ひたすら横になって読書に励みつつ、少しずつ炭水化物を補給していく。具体的には、奄美のスーパーで発売していた「じょうひ餅」である。国産もち米と水あめ、黒糖を練り上げたいかにも奄美な餅である。色も黒糖と同じ茶色をしていて、甘味が強い餅である。食事の合間に何個か食べたがレース用に二個残して走っている最中に食べることにした。

もう一つ奄美で忘れてははならない飲み物がある。「みき」といって、奄美のスーパーに行けばどこでも売っている。本土の感覚からすればてっきり「みき」といえば「神酒」かと思ってしまうが、アルコールは入っていない。

原材料は白米、砂糖、サツマイモで、味は米をといだ汁に甘味を加えたような感じの発酵飲料である。といっても「ヤクルト」のような甘酸っぱさはない。正直、毎日飲みたいかと聞かれれば疑問符をつけざるをえないが、1㏄あたり1億個の乳酸菌が入っているらしく、奄美大島の平均寿命を延ばすうえで一役買っているという説もある。

そういえば、私が幼いころに泉重千代というじいさんがいた。120歳まで生きてギネスブックにも掲載された人物である。どこまで本当か知らないが、下世話なワイドショーのレポーターに「好みの女性は」と聞かれて「年上の女だ」と答えたという伝説をお持ちの御仁である。もちろん、翁より年上の女などいるはずもない。

本当に120歳だったのかどうかは後年疑問を呈されるようになったが、三ケタの年齢まで長生きしたことは間違いない。そんな泉重千代翁が生涯を過ごしたのは奄美大島からごく近い徳之島であった。翁も折にふれみきを飲んでいたから長生きできたのだろうか。

ところで前回に登場した「ピッ子さん」だが、関東からわざわざ加計呂麻に引っ越してきただけあって、変わり者である。さすがに家の中に電気と水道は通っているが、これだけは譲れないというこだわりが一つあり、諸々の理由で家には絶対ガスを引きたくないのだという。もっとも、この離島で都市ガスなどあるはずもないが、それでもプロパンガスというものも存在する。

前回触れた通り、普段は水を日光で温めて湯浴みしているらしいが、さすがに到着以来一度も風呂に入っておらず翌日にレースを控える私に憐れんで、特別に五右衛門風呂を焚いてくれることになった。

五右衛門風呂など、たぶん35年ぶりくらいである。もうとっくの昔に亡くなった祖父母宅で入ったことがあるくらいである。あの山奥の家でさえ、一応本州だったのでいつの間にかトイレも洋式水洗便所となり、風呂も電化された。

もう日は暮れていたから、七時過ぎだっただろうか。ピッ子さんから「お風呂沸いたよ」と声がかかった。

◆「加計呂麻ではガスがなくても十分生活できる」

この五右衛門風呂は母屋から出たハナレにある。自家農園をつっきって徒歩約15mくらいのところに風呂つきの小屋がある。

いつも湯浴みをしていたということは、この五右衛門風呂は今まで一度も使っていなかったということだ。したがって、照明灯もなければ扉もない。あちらも別に私の裸には興味がないだろうし、元々彼女は一人暮らしだからそれで問題もない。

五右衛門風呂がある小屋に入ると、濡れても平気な懐中電灯が一つ置いてある。その中で服を脱いで浴槽につかる。

かつて入った五右衛門風呂では、かまどの口は建物の外にあった。しかし、ここのかまどの口は小屋の中、風呂釜の真下にある。ということは何がおきるか。湯船につかったときに、下からわき上がってくる煙がそのまま目を直撃するということだ。都会のホテル、一般の民宿などでは絶対にできない貴重な体験である。これが、手作り感あふれるAirbnbの魅力でもあるのだ。

風呂を出てからピッ子さんに礼を述べた後、あらためて「プロパンガスを入れたら?」と水を向けてみた。初期費用が約十万円らしいが、民泊を運営して、ある程度売り上げ見込みは立つし、近くの信用金庫などにいけばそれくらい簡単に貸してくれるだろう。もっといえば、十万円くらいなら貸し倒れになっても金融機関が目くじらを立てるとも思えない。

すると、「今回、五右衛門風呂を焚いてみてあらためてガスがなくても生活できることがわかったから、やっぱりガスはいらない」とそこだけは意固地であった。

レース当日は、スタート四時間前くらいに起きるのが鉄則である。とすれば、9時スタートなので五時過ぎには起きていなければならない。したがって、夜九時過ぎに就寝だ。

翌朝目覚めると、まだ外は暗かった。マラソンにおいて決しておろそかにできないのが「排便」である。レース前に一度出しておかないと悲惨な事態になる。したがって前日から胃腸薬を飲んでおいた。

この薬が効いていたからか、起床後まもなく便意が発生した。トイレに行こうと母屋を出て、何の気なく上を見た。すると、満天に星が広がっていた。

空気が汚れていないからか、見える星の数が全く違う。比喩ではなく、本当に東京の夜空より五倍の星が見える。この星だけでも、加計呂麻まで来たかいがあった、と私は思った。

【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)は12万部を突破。最新の訳書に「ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。
雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。公式サイト

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