東京に次ぐ世界2位!人口2850万人の首都圏を持つ大都市・デリーに秘められた巨大エネルギーの正体

東京に次ぐ世界2位!人口2850万人の首都圏を持つ大都市・デリーに秘められた巨大エネルギーの正体

  • @DIME
  • 更新日:2019/08/14
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30回以上訪問したからこそわかるインドの主要都市紹介「デリー」編

今年の7月上旬、「カレーハウスCoCo壱番屋が本場インドに進出」というニュースが話題になった。その後、インドにおいて「セブンイレブンが3〜5年以内に500店舗」「住友不動産がオフィスビルに700億円投資」「ユニクロは今年10月に初出店」、そして「JCBカードの発行開始」と身近なニュースが続いている。

さすがに仕事でも話題に上るので「これまでのイメージだけでインドを理解していると出遅れそう。国をひとくくりでなく、どんな都市があるのか具体的に知りたい」という声をよく聞く。ビジネスにも役立ち小ネタにもなるインドの都市について、私が見て体験したことも入れて紹介しよう。今回は、首都デリー(正式名はデリー連邦直轄地)をピックアップ。

首都デリーを中心とした首都圏の人口は2,850万人*で東京に次ぐ世界2位だ。デリーから空路でかかる時間は季節により偏西風の関係で変動があるが、日本まで直行便で約8時間のインド北部に位置している。シンガポールまでは6時間、香港5時間半、ドバイ3時間半、ロンドン9時間半かかり、アメリカ大陸以外の各方面へは満遍なく移動しやすい。

デリーは12世紀に首都と定められ、ムガール帝国の支配で一時は首都ではなくなった。その後再び首都となり、現在は世界第2位の総人口13億人以上という大国インドの中心だ。

グルガオンやノイダの2つの近隣都市を巻き込み、大きな経済圏を持つ首都圏を形成している。日本企業の進出も盛んで、3都市を合わせると日系企業の拠点が860ある(インド大使館:インド進出日系企業リスト-2018)。大手ではインドの自動車シェアを50%以上持つスズキや、社として海外で初の取締役会をデリーで開催した日立製作所を始め、ソニー、パナソニック、ダイキン、NTTデータ、商社系などがインドの本部オフィスを首都圏に構えている。

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© moonlink Inc.

*国連のWorld's Cities in 2018
https://www.un.org/en/events/citiesday/assets/pdf/the_worlds_cities_in_2018_data_booklet.pdf

インドの首都デリーは、世界の未来を占うグローバルシティ

デリーに空路で近づくと、窓から見える緑の多さに驚く。実際に市街にも公園が多く、例えば各国大使館のある官庁街近辺の道路には多くの木々が配され、静かで落ち着いた街並みが造られている。

そして、近代的でいわゆるグローバルシティの国際空港へと降り立つ。エレベーターで下ると大きく開けた明るい入国審査場が待っている。「ウェルカム!」と心から歓待されている気分になる、オープンで美しいエリアだ。左の壁にはインド独自の手のジェスチャーを模したオブジェを配し、機能的だが自然光にあふれて落ちついた空間が広がる。

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デリーのインディラ・ガンジー国際空港は、インドの伝統と未来を象徴する。年間乗降者数は、約7,000万人(2018年)で世界6番目。2018年の英国のコンサルティング会社Skytraxの調査では、インド・中央アジア地区で最高の空港と称された。(写真:Bharatahs

デリーとはどのような都市なのか? デリーで生まれ育ち、現在もそこで働く知人に問いかけてみた。「インドの首都であるだけではない、デリーは唯一無二のグローバルシティだ」とマーケティング・PR会社グーテンベルグのハジーブ・シンCEOは言う。「インドは他国とも陸続きで、様々な宗教や文化が出入りしてきた。デリーは英国支配の時代の首都だったために世界への窓口となり、外部からの影響を受ける先鞭となった」。例えば三権分立といった国家統治制度は英国に習い、独立後に民主化を推進し、近年は世界各国との対話に積極的に行われ、インドのグローバルな影響力が増してきた。このように、デリーを起点に国全体が変化してきた。

「デリーは文化、社会、スピリチュアルな分野で古くからの伝統的なインドを現代に受け継いできた。歴史を経る過程で、それらは変化を余儀無くされてきたが、その積み重ねを含めて自分たちのアイデンティティとしてきた。今後、不透明で予測のつかない未来においても、デリーは堂々と変化の荒波を切り抜けて行くだろう」。超大国インドの首都として、揺るぎない。海外での経験も豊富なシンさんの説明には、説得力がある。

デリーにある3つの世界遺産は歴史の証であるだけでなく、未来のデリーの歴史も見守っていくのだろう。

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デリー都心に佇む世界遺産『フマユーン廟』。都会にいながらも古からの生命力に触れられる贅沢がある、地元でも人気の場所だ。夕焼けが特に美しい。© moonlink Inc.

2019年、最高気温は48℃に塗り替えられたデリー。賑わう街のエネルギーもヒートアップ!

デリーには官公庁街以外にも落ち着いたエリアとして、南デリーの高級住宅街がある。一方で、近代的に整備されていない人口密度の高い小さな区画が、コミュニティとして市内に点在している。
それ以外にも17世紀から続く旧市街、小さな店が道路いっぱいにひしめく商店街、巨大なショッピングモール、大学や美術館、ホテル、ゴルフ場、様々な宗教の教会、歴史的建造物などが渾然としつつも一体化している。軽自動車から高級欧車まで多様な自家用車、バス、バイク、リキシャが行き交い、どこに行っても、人、ひと、ヒトでにぎわう。最高気温が45℃以上の夏はともかく、最低気温が7℃前後まで下がるデリーの寒い冬でも、まるで湯けむりを感じるほどの熱量だ。

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巨大なモールには地元ブランドだけでなく、ヨーロッパの高級ブランドから、米国の美容やスポーツウェア、コンピューター、カジュアルアパレルまで、多様なブランドが店を構えている。このシティセレクトモールに隣接するモールにユニクロが出店予定。© moonlink Inc.

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都会の一角にある開発されていない小さなコミュニティは、アーバンビレッジと呼ばれている。老若男女が生活し、建物の境目や電線の配線状況も混沌としている。 © moonlink Inc.

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南デリーの高級住宅街にある『Manor ホテル』のカフェから、緑豊かな庭を望む。© moonlink Inc.

「他のアジアの国とは異なる、沸騰レベルのエネルギーだ」と、初めてインドを視察した、海外赴任歴が長くASEAN各国に詳しい日本メーカー勤務の日本人が印象を教えてくれた。そう、インドの混沌は東南アジアのそれとも異なる。文化が異なり、国の公用語以外に憲法で22言語が指定されており、1万人以上の人が使う言語が合計121存在する(2011年の国勢調査)そうで、使う言葉も様々だ。さらに宗教も生活様式さえ違う人々がいるのはインドでは日常だ。逆にいえば、多様性を認めなければ生きていけない。だからこそ見た目はありふれた混沌さの中でも環境に左右されず、他人を排除するのではなく、自分の思いに正直に生きていると感じる。

グローバルシティのデリーでは、今のインド興隆を一手に反映して前のめりで自信を持ち始めた若者たちが、熱気を振りまいている。単なるお祭り騒ぎではなく、混沌には目をくれずに真っ直ぐに突き進む。その姿は、現地で体感されることをお勧めしたい。

巨大スタートアップを10社以上輩出してきたデリー首都圏は、衛星都市とともに魅力が倍増中。

デリーの都市圏を構成する都市に、グルガオン(正式名称はグルグラムだが旧名のグルガオンと呼ばれることが多い)とノイダがある。デリーと有機的に関わり、首都圏の魅力向上につながっている。

例えば、スタートアップの視点では3都市はユニコーン(非上場の10億ドル以上の企業価値を持つスタートアップ)を合計10社以上輩出している(インドソフトウェア・サービス協会『NASSCOM』の2018年の資料参考)。首都圏として投資家はインド国内外から集まりやすい上、インドで最難関の工科大学はじめ優秀な人材が集う教育機関が充実している。さらに、10年間で1万社のテクノロジー系のスタートアップの育成を目指すプロジェクト『10,000 Startups』を主催するNASSCOM本部はデリーにあり、新ビジネスを育てる多角的なサポートへの理解も深い。

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2013年から開始した『10,000 Startups』の現在のパートナーとして世界的に名だたる企業が名を連ねる。日本企業では、NECやソニーが参画。(NASSCOMのホームページより)

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『10,000 Startups』の取り組みのひとつ、世界に通用するディープテックのスタートアップを支える『Accelerate 10X』のパートナー。メンタリング、世界展開の戦略、技術開発、資金調達などのアドバイスを、グローバルで実績のある企業が行う。(同上)

さらに企業や可処分所得が高い人が多く、新しいビジネスを試すのにも適しているのだろう。例えばカレーハウスCoCo壱番屋(ココイチ)が2020年に最初に進出するのはデリー、そしてユニクロも初の店舗を今年10月に3店舗同時にデリーにオープンするように、飲食や小売業を引きつける魅力的な市場が存在している。

デリーとその近郊には会場やホテルのハード面が整備され、様々な分野のカンファレンスや大型見本市も開催される。インドに初めて訪問する方にはアクティビティの一つとしてお勧めだ。

日本にとっての東京と同じく、国の行政機関との対話が欠かせない企業にはデリーは効率的で安心といえよう。また海外からの進出メーカーにとっては、近郊エリアに工業地帯が次々と整備されているために、今後もさらに魅力が増してくる。また日本政府や企業も大きく関わっている、今後建設予定の西海岸のムンバイと結ぶ交通網によって、人の往来や物流がさらに促進されていく。デリー首都圏の動きは止まない。

デリーの課題解決に関わる、日本企業のメリットは何か? デリーはあなたを待っている!

「経済成長が著しい大国の首都」として夢を語る立場のデリーだが、一方で急激な人口増加や生活の変化によりインフラ整備が追いつかず、深刻な課題が存在する。例えば、経済発展により車両が増え、交通渋滞や空気汚染が日常の問題となっている。また地球温暖化による気候変化で、モンスーンでの降雨への対策がさらに必要なのか。その他にごみ処理、水資源確保などの基本的な生活インフラ整備が市民からも期待されている。デリーがどのようにこれらの課題を解決するかは、多くの巨大都市を抱えるインドの今後を左右すると言っても過言ではない。

そして日本にとっては、高度成長時代から続く同様な経験をしてきた身として、最新の技術も携えてこれらの現実的な課題の解決のためにインドに関わっていく機会とならないだろうか。それは、知恵がしぼられイノベーションが生み出される場でもあり、同時に大きなビジネスのきっかけとなるに違いない。インド西海岸の大都市『ムンバイ』等、今後ご紹介する都市にも乞うご期待。

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国際空港に飾られている『ムドラ』というインドの伝統的なダンスやヨガに見られる手のジェスチャー。祈り、挨拶、安全に過ごせるように守る等、個別に意味を持ち、旅人をあたたかく迎える。

取材・文・写真/望月奈津子
日欧米のグローバル企業でマーケティングや広報に一貫して携わる中、10年間勤めたP&Gのインド人上司の影響で、日印の共創をミッションとするムーンリンク社を設立。インドを30回以上訪問して築いた信頼やビジネスネットワークと現地家庭の訪問や滞在での洞察を活かし、リサーチ、視察、研修等で企業をサポートしている。

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