産総研と琉球大、日本産セミ15種の共生菌はセミ寄生性の冬虫夏草が起源

産総研と琉球大、日本産セミ15種の共生菌はセミ寄生性の冬虫夏草が起源

  • マイナビニュース
  • 更新日:2018/06/12
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産業技術総合研究所(産総研)と琉球大学は、日本産セミ類24種を調査し、うち15種が冬虫夏草のセミタケ類にごく近縁の細胞内共生真菌と共生していることを明らかにしたことを発表した。

この成果は、産総研 生物プロセス研究部門の深津武馬首席研究員、同部門生物共生進化機構研究グループの森山実主任研究員、琉球大学 熱帯生物圏研究センターの松浦優助教が、米国モンタナ大学と協力して明らかにしたもので、6月11日(米国東部夏時間)、米国の学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences USA」にオンライン掲載された。

セミ類の系統関係と共生微生物の進化過程(出所:産総研ニュースリリース)

アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシなどのセミ類は、特徴的な大きな鳴き声から夏の風物詩としてなじみがあるが、体内に複数の共生細菌との内部共生系を保有している。

近年、主に米国のセミ類についての研究から、セミ類の体内には菌細胞塊という共生器官があり、その細胞内にサルシアとホジキニアという2種の細胞内共生細菌が局在することがわかってきた。

今回、日本産セミ類の大半を網羅する24種について内部共生系を調べたところ、ニイニイゼ ミ、エゾゼミ、エゾチッチゼミ、クロイワゼミ、ツマグロゼミなど9種は従来の報告の通り、サルシアとホジキニアの2種の細胞内共生細菌を保有していた。しかし、アブラゼミ、ミンミンゼミ、クマゼミ、ヒグラシ、ツクツクボウシ、オオシマゼミ、オキナワヒメハルゼミ、イワサキクサゼミなど他の15種では、サルシアは持っていたがホジキニアは検出されず、代わりに酵母のような 形の細胞内共生真菌を保有していた。

次に、セミ類の系統樹を作成し、サルシア/ホジキニア/共生真菌の有無を解析したところ、日本産セミ類の進化過程においてホジキニアから共生真菌への共生体置換は少なくとも3回独立に起こったと推定された。

また、共生真菌が見つかったセミ類からDNAを抽出し、真菌類の遺伝子を増幅して塩基配列決定、分子系統解析をおこなったところ、セミ類の共生真菌はエゾハルゼミタケ、ヤクシマセミタケ、セミ タケなどのセミ寄生性の冬虫夏草類ときわめて近縁であることがわかった。

宿主セミ類と共生真菌 の系統樹を比較したところ、両者の系統関係はほとんど一致せず、しかもさまざまなセミ類の共生真菌の間にセミ寄生性の冬虫夏草類が位置する複雑なパターンを示し、セミ類の進化過程で冬虫夏 草から共生真菌への進化が繰り返し起こってきたこと、そして共生真菌がさらに別の共生真菌に繰り返し置き換わってきたらしいことが強く示唆された。

セミ共生真菌と冬虫夏草の進化生態的関係(出所:産総研ニュースリリース)

研究グループは、これらセミ類の共生真菌の単離培養を試みたところ、ほとんどのセミ類の共生真菌は培養困難であったが、ツクツクボウシの共生真菌だけは寒天培地上で単離培養することができた。 この共生真菌の培養株について概要ゲノム配列を決定したところ、ホジキニアの機能と考えられている必須アミノ酸合成系やビタミン合成系を保持していた。

今回、寄生関係から共生関係への進化が繰り返し起こったことが実証され、寄生微生物と共生微生物の間の予期せざる深い関係が明らかになった。冬虫夏草や近縁の菌類はしばしば漢方薬として利用され、免疫抑制剤など生理活性物質の産生菌としても知られており、主に亜熱帯地域に生息する多様なセミ類の共生真菌も、新たな生物遺伝子資源として利用できる可能性があるとしている。

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