【西スポ・甲子園ベンチ裏】楽しみ、楽しませる横浜4番増田の「ワールド」

【西スポ・甲子園ベンチ裏】楽しみ、楽しませる横浜4番増田の「ワールド」

  • 西日本スポーツ
  • 更新日:2017/08/12

大会第4日に登場した8校のうち6校に、春の選抜大会を含めた甲子園優勝経験があった。全4試合が注目カードで、第1試合の始まる1時間半前、午前6時半から満員札止めの甲子園。その場内も横浜(神奈川)の4番増田珠(しゅう、3年)が打席に入るたび、静まった。これだけで注目度がうかがえる場面ながら、グラウンドに流れる空気は、さらに独特だった。

体の前にバットを構え「こいやぁー!」と一声。白い歯が浮かび上がる。「笑ってプレーすると決めていた」と言うが、こみ上げるものを抑えきれないといった様子だ。神奈川大会新記録の4試合連発を含む5本塁打で聖地に乗り込んできた。今秋ドラフトで注目の強打者ながら、笑みを振りまき、また素直に悔しがる姿から、威圧感とは違うものが伝わる。

対した秀岳館(熊本)の左腕二枚看板にも、不思議な高揚感があった。まず先発6回1失点で白星の川端健斗(3年)。増田との対戦は2打席で、死球と中前打だった。「他のバッターとは全く違いました」。力量だけの話ではない。「純粋に野球を楽しんでる感じだった。増田の顔を見ればこっちも自然と楽しめる。そんなバッターでした」。真剣勝負には違いないが、純粋な楽しみという意味で、そこだけ近所の草野球のような雰囲気だった。

一方の田浦文丸(同)は2打席凡退に抑えたが「楽しくやってる雰囲気を感じたし、どこに投げても打たれそうだった」と振り返る。最後は2点リードの9回2死で対戦。チェンジアップで泳がせ、力ない左飛に仕留めた。「本当はストレート勝負したかったですけど、足がつってて。無理せず、チームのために」。暑さと状態が悔やまれた。

増田はセンターの守備に就く際に、毎回、バックスクリーンに向かって腰を折り、じっと祈りをささげる。上体は地面と平行だ。長崎リトルシニアに所属した長崎・淵中時代からの習慣で、いわく、各球場に「センターの神様」がいるらしい。「この回もよろしくお願いします」と頼むそうだ。甲子園の神様とは、昨夏以来の対面だった。「戻ってきました。今日も温かく見守ってください」とあいさつし、試合に臨んだ。

随所に独特の「ワールド」があるが、快活な口調が、周囲にすんなりと世界観を受け入れさせる。最後の夏は自身4打席、3打数1安打で1回戦敗退。試合後、涙はなく、むしろにこやかに取材に応じていた。「泣かないと決めてたんで。宿舎に帰ってから泣こうと思います」。地元を離れ、横浜で勝負した。悔しさは察して余りある。それをさらっと包んで言える度量。彼は、春夏計5度優勝した強豪・横浜の4番だ。

=2017/08/12 西日本スポーツ=

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