au、ソフトバンク、MVNO各社はなぜHUAWEI製スマホを発売したのか?ドコモはどう動く?

au、ソフトバンク、MVNO各社はなぜHUAWEI製スマホを発売したのか?ドコモはどう動く?

  • @DIME
  • 更新日:2019/08/19
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2019年5月、国内向けに投入されることが発表されたファーウェイのスマートフォン「HUAWEI P30シリーズ」。今年の夏商戦の目玉になると期待されていたが、米中貿易摩擦の影響で、一部の販路を除き、国内ではHUAWEI P30シリーズは販売や予約が見合わせられていた。

ところが、8月に入り、auやワイモバイル、UQモバイルが相次いで新製品の発売を発表し、MVNO各社もこれに続いた。その一方で、NTTドコモは夏モデルとして発表したファーウェイ製スマートフォンの予約停止を解除していない。なぜ、各社の対応はこのように違いを見せているのだろうか。各社の動きから、その背景を探ってみよう。

エンティティリストへの記載により、各社が販売を見合わせ

現在、グローバル市場ではシェアNo.1のサムスンを猛追するファーウェイ。その主力シリーズのひとつ「HUAWEI P」シリーズの最新モデル「HUAWEI P30」シリーズは、今年3月にフランス・パリで開催されたイベントでグローバル向けに発表された。

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「HUAWEI P30」シリーズは2019年3月にフランス・パリで開催されたイベントでにグローバル向けに発表された

そして、今年5月、各携帯電話会社及びサブブランドから発表された夏モデルでは、NTTドコモが最上位モデルの「HUAWEI P30 Pro HW-02L」、auがグローバル向け普及モデルを強化した「HUAWEI P30 lite Premium HWV33」、UQモバイルとワイモバイルがグローバル向けの普及モデル「HUAWEI P30 lite」を取り扱うことが発表された。

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5月16日の「NTTドコモ 2019夏 新サービス・新商品発表会」では、吉澤和弘代表取締役社長がハイスペックモデルのひとつとして、「HUAWEI P30 Pro HW-02L」を紹介

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5月13日の「au発表会 2019 Summer」では、取締役執行役員専務 コンシューマ事業本部長の東海林崇氏がコストパフォーマンスモデルとして、「HUAWEI P30 lite Premium」を紹介

5月21日に開催されたファーウェイの国内向け発表会では、SIMフリーモデルとして、「HUAWEI P30」と「HUAWEI P30 lite」も発表され、MVNO各社ではIIJmioや楽天モバイル(MVNO)、LINEモバイル、mineo、イオンモバイルなど12社が取り扱い、家電量販店ではヨドバシカメラやビックカメラ、エディオン、ヤマダ電機など7社、オンラインショップではAmazonやNTT-X Storeなど9店がそれぞれ販売することがアナウンスされた。

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日本向けには5月21日開催された発表会で、「HUAWEI P30」や「HUAWEI P30 lite」などが発表された

ここ数年、ファーウェイ製スマートフォンはカメラ機能などが高く評価され、SIMフリー端末を扱うオープン市場で高い人気を集め、販売ランキングでは一時的にiPhoneをも上回るほどの勢いを見せている。

なかでも普及価格帯の「HUAWEI P20 lite」は、2018年6月に発売されて以来、SIMフリースマートフォンとしてのベストセラーを記録するほどの人気ぶりで、その後継モデルとなる「HUAWEI P30 lite」にはMVNO各社や販売店なども大きな期待を寄せており、多くの販路で取り扱われると発表されていた。

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日本向けの発表会では多くのMVNOや家電量販店、オンラインショップが販売することが明らかになったが……

ところが、各携帯電話会社やファーウェイの国内向けの発表と前後する形で、米商務省産業安全局がファーウェイと同社の日本法人など、関連企業68社を「エンティティリスト」(禁輸措置対象リスト)に加えたことが明らかになり、状況は一変する。エンティティリストは米国の国家安全保障や外交政策の利益に反することなどを理由に作成されているもので、このリストに掲載されると、何らかの取引をする際、米商務省に申請をして、許可を得なければならなくなる。

しかも米国企業との取引のみを制限するものではなく、米国の技術を利用した外国製品も対象になり、米国製品を他国経由で対象者に輸出することも制裁の対象になるため、リストに記載された企業や団体、個人は、商取引だけでなく、様々な経済活動を制限される。

この発表を受け、Googleが一時、取引停止をアナウンスし、英ARMなど、他の関連企業も取引の見直しをしたことが報じられると、各携帯電話会社とMVNO各社、一部の家電量販店は一斉に発売延期を発表。NTTドコモは「今夏発売」と発表していた「HUAWEI P30 Pro HW-02L」の事前予約の受付を停止し、auは「HUAWEI P30 lite Premium HWV33」の発売を延期。UQモバイルとワイモバイル(ソフトバンク)も「HUAWEI P30 lite」も発売が延期された。

また、SIMフリーモデルの「HUAWEI P30」と「HUAWEI P30 lite」を扱う予定のMVNO各社もこの動きに続き、IIJmioや楽天モバイル、mineo、LINEモバイルなどが相次いで発売延期を発表したが、なかにはDMM mobileのように、一時は「予定通り発売」とアナウンスしながら、発売日前日の深夜に「取り扱いを延期」を発表するなど、混乱も見受けられた。

家電量販店も軒並み、発売延期をアナウンスしたが、ヨドバシカメラとビックカメラはオンラインショップでの販売も含め、SIMフリーモデルの2機種を予定通り、発売した。そのため、MVNO各社などでの購入を検討していたユーザーは、ヨドバシカメラとビックカメラでの購入に流れることになった。

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ファーウェイのデバイス部門 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏は、サポートに問題がないことをアピール

こうした動きに対し、ファーウェイの日本法人は「発売済みや販売中の製品、発表済みの製品については、セキュリティアップデートやアフターサービスに影響はない」と声明を発表したものの、各携帯電話会社やMVNO各社、家電量販店の対応がすぐに変わることはなかった。

販路は制限されても売れ行きは順調

各社が発売の延期を発表した後、5月27日にはイオンモバイルが「HUAWEI P30」と「HUAWEI P30 lite」の販売を再開し、6月4日にはAmazon.co.jpでファーウェイ製品の取り扱いが再開されたが、それ以外に各携帯電話会社やMVNO各社の目立った動きはなく、ここ2か月ほどは膠着状態が続いていた。

その一方で、6月以降、「HUAWEI P30」と「HUAWEI P30 lite」はSIMフリーモデルとして、家電量販店やオンラインショップで販売され、限られた販路ながら、順調な売れ行きを記録していたという。米中貿易摩擦のゆくえやAndroidプラットフォームのサポートなどが気になるものの、カメラをはじめ、優位性のある機能が多いことから、「HUAWEI P30」と「HUAWEI P30 lite」を指名して、購入する消費者も多く見受けられたという。ここ数年、ファーウェイが積極的に日本市場への取り組んできた姿勢を評価する消費者が増えてきた裏付けとも言えそうだ。

また、Androidプラットフォームについては、Googleも「セキュリティパッチやソフトウェア更新がされない端末が増えることは、かえってリスクを負うことになる」とホワイトハウスに進言したと報道されたが、ファーウェイ自身も販売中の端末のソフトウェア更新などを着々と進め、国内市場ではSIMフリーモデルの「HUAWEI nova 3」や「HUAWEI MediaPad T5」などのソフトウェア更新を提供し、auの「HUAWEI P20 lite HWV32」、UQモバイルとワイモバイルの「HUAWEI P20 lite」については、最新のAndroid 9へのアップデートも実施するなど、積極的にAndroidプラットフォームをサポートする姿勢を示した。

突如、auやワイモバイルが販売開始

6月以降、具体的な動きが見られなかった「HUAWEI P30」と「HUAWEI P30 lite」の販売見合わせだが、8月5日、突如、auが「HUAWEI P30 lite Premium HWV33」、UQモバイルが「HUAWEI P30 lite」を8月8日に発売することが発表された。翌日の8月6日にはワイモバイルが「HUAWEI P30 lite」の発売を発表し、楽天モバイル、mineo、LINEモバイルなど、MVNO各社も「HUAWEI P30」や「HUAWEI P30 lite」の発売を明らかにした。

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UQモバイルやワイモバイルに続き、MVNO各社も「HUAWEI P30 lite」の販売を開始

発売直前に販売見合わせという異例の対応から一転、突如発売されることになったファーウェイ端末だが、なぜ、このタイミングで発売されることになったのだろうか。

まず、ひとつのきっかけになったとされるのが大阪で開催されたG20サミットでの6月29日のトランプ米大統領のコメントだ。G20サミットにおいて、中国政府と話し合いが持たれ、トランプ米大統領は多くの米国製品がファーウェイに供給されていることを挙げ、「ファーウェイと米国企業が取引することを許可する」とコメントした。このコメントは具体的に米商務省産業安全局のエンティティリストから外すといった内容ではないが、事実上の制限緩和と受け取られた。

この制限緩和のコメントを機に、ファーウェイと各携帯電話会社やMVNO各社は、実際に端末を発売した場合、どのようなリスクがあるのかなどの検証を本格化させたようだ。例えば、発売延期を発表した時には、Androidプラットフォームを提供するGoogleがファーウェイとの取引停止を発表していたため、端末を販売した場合、購入した消費者がどのようなリスクを追うのかがわからないとされていたが、現在販売中の製品や発表済みの製品についてはその制限を受けないことがアナウンスされ、Googleもこれを追認した形となったため、問題はクリアされたと判断されたようだ。

また、これは推測の域を出ないが、過去の携帯電話業界の慣習を鑑みると、もし、何か不測の事態が起きた時は、ファーウェイ自身が対応できる体制を整えたことも考えられる。例えば、万が一、強制的に販売が停止されるような事態におちいった時は、各携帯電話会社やMVNO各社が抱えている在庫の端末を引き取るくらいの構えは見せている可能性はある。特に、UQモバイルやワイモバイルが扱う「HUAWEI P30 lite」は、SIMフリーモデルとして販売されているものと基本仕様は同じであり、仮に引き取るような事態になっても自らオープン市場で販売したり、補償サービス向けの端末として利用することも十分可能だからだ。

なぜ、NTTドコモは発売しないのか?

auやUQモバイル、ワイモバイル、MVNO各社が販売を開始したのに対し、NTTドコモはその後も方針を変更しておらず、「HUAWEI P30 Pro HW-02L」の事前予約の受付停止は解除されていない。原稿執筆時点でも同社のオンラインショップなどでは「今夏発売」と表記されたままとなっている。なぜ、NTTドコモは発売しないのだろうか。

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5月の発表会では「HUAWEI P30 Pro HW-02L」がNTTドコモのアプリもプリインストールされ、準備万端でお披露目されたが、未だに発売されず

NTTドコモがファーウェイ製端末を発売できない背景には、NTTグループとしての姿勢が影響していることが考えられる。auやUQモバイルなどがファーウェイ製端末の発売を発表した直後、NTT(持株会社)の澤田純社長は、8月6日の2019年度第1四半期決算において、次のように述べている。

「ファーウェイがエンティティリストに追加され、現在は一時的な許可として、取引停止について、90日間の猶予が与えられている状況。現在の米中の関税問題をはじめ、農産物や金融の貿易政策などを考えると、一般論として、延伸されたり、変更される確度は低い。このような状況でファーウェイ端末を売ることは、お客様に迷惑をかける可能性が高い。同業者としてもおかしな取り組みではないかと感じている」

もう少しわかりやすく表現すると、ファーウェイはエンティティリストによる取引規制の猶予期間中であり、このまま端末を販売すれば、取引規制開始後に消費者が被害を被るため、販売することは好ましくなく、KDDIやUQコミュニケーションズ、ソフトバンク、MVNO各社が販売に踏み切ったことは、同業者の立場から考えてもおかしいと捉えているわけだ。あらためて説明するまでもないが、NTTは株式の約35%を政府及び地方公共団体が持つ企業であり、そのトップが同業他社を否定するような表現まで持ち出して、こういった内容のコメントをすることは非常に珍しい。裏を返せば、政府としての立場の兼ね合いもあり、NTTとしては、NTTドコモやNTTレゾナント(goo Simseller)が端末を販売することを認められない状況にあるのかもしれない。

このように考える背景には、NTTグループが置かれている環境が変化してきたことが関係している。現在、国内市場はいずれの業種も少子高齢化の影響を受け、縮小傾向にある。当然のことながら、通信事業も同じような状況にあり、NTTグループとしてはグローバル事業の拡大に取り組み、グループ内の事業会社の再編も推し進めている。今年、NTTグループは北米最高峰の自動車レース「インディカー・シリーズ」の冠スポンサーを務め、インディカーのテクノロジーパートナーになることが発表されたが、これらもグローバル戦略の一環と言われている。

こうした取り組みを進めている中で、グループ内の企業(NTTドコモやNTTレゾナント)がエンティティリストに記載されている企業の製品を販売するという状況は、立場的にもあまり好ましくないわけだ。ひとつ間違えれば、米国政府に米国での事業を制限されてしまうリスクもある。

現に、NTTドコモは今年の夏モデルにおいて、これまでファーウェイ製を採用してきたモバイルWi-Fiルーターにおいて、新たにシャープ製をラインアップに加えたが、これは法人顧客などに対応する時、ファーウェイ製品のみで提案するのではなく、選択肢を用意するという配慮に基づいている。

また、もうひとつの理由として、NTTドコモの「HUAWEI P30 Pro HW-02L」が他社の扱う「HUAWEI P30 lite」と大きく内容が異なることが挙げられる。UQモバイルやワイモバイルが販売する「HUAWEI P30 lite」は基本的にグローバル向けモデルとほぼ共通仕様の製品であり、国内で販売されているSIMフリーモデルとも基本的に差異はない。ところが、「HUAWEI P30 Pro HW-02L」はグローバル向けモデルの「HUAWEI P30 Pro」をベースに、おサイフケータイを追加した独自仕様となっており、NTTドコモのみが取り扱うことになっている。そのため、前述のような「万が一の事態」に陥った時、「HUAWEI P30 lite」のような使いまわしができないわけだ。

例えば、一般的にあまり売れ行きがかんばしくなかった製品は、携帯電話業界の場合、多額の販売奨励金を付け、安価に売りさばくことができるが、今年10月以降は改正電気通信事業法で制限されるため、そういった売りさばき方ができない。また、法人向けなどにまとめて採用されるようなケースもあるが、これもファーウェイが置かれている状況を考えると、国内で法人用として採用されるケースは限られる。これらのことを総合すると、おそらく発売したくてもできないというのがNTTグループの本音だろう。

では、今後、「HUAWEI P30 Pro HW-02L」が日の目を見ることはないのかというと、そうでもない。実は、澤田社長のコメントにもあるように、エンティティリストに追加されたファーウェイと関連68社との取引規制は、制限開始まで90日間の猶予が与えられている。この猶予期間は5月20日から8月19日までとなっており、早ければ、8月19日(日本時間では8月20日)には何らかの動きが出てくる可能性が考えられる。

前述のように、澤田社長は「一般論として、延伸されたり、変更される確度は低い」と述べていたが、すでにG20サミットの段階で、ファーウェイとの取引を容認する制限緩和のコメントが出されている。これに加え、米国では8月13日に、中国からの輸入品に課す10%の追加関税について、一部の商品は年末商戦への影響を避けるため、12月15日まで延期することが発表されている。この一部の商品にはスマートフォンが含まれており、中国で生産したiPhoneの輸入に配慮したと言われているが、一般消費者に影響が及ぶような制限は好ましくないという判断をしたと受け取ることもできる。もし、猶予期間終了後、エンティティリストから削除されるような状況になれば、NTTドコモの「HUAWEI P30 Pro HW-02L」の発売が開始される可能性も十分にあり得るだろう。

今後、米国政府や中国政府がどのような発表をするのか、NTTグループがどのような判断を下すのかなど、動向が注目される。ユーザーとしてはファーウェイだけでなく、各携帯電話会社やMVNO各社の対応状況も含め、しっかりと動きをチェックしていく必要がありそうだ。

取材・文/法林岳之(ほうりん・たかゆき)
Web媒体や雑誌などを中心に、スマートフォンや携帯電話、パソコンなど、デジタル関連製品のレビュー記事、ビギナー向けの解説記事などを執筆。解説書などの著書も多数。携帯業界のご意見番。

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