悲劇のモスバーガー。値上げと食中毒が招いた止まらぬ客離れ

悲劇のモスバーガー。値上げと食中毒が招いた止まらぬ客離れ

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  • 更新日:2018/11/05
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かつては「高品質」を売りに人気を集めていたモスバーガーですが、消費増税時の値上げで遠のいた客足が戻らない中、今年8月に起きた食中毒事故が決定打ともなり、2019年3月期通期の連結業績は11年ぶりの赤字予想と苦戦を強いられています。店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、自身の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』で、「倒産寸前」とまで囁かれたどん底から見事復活を果たしたマクドナルドが取った戦略を紹介しつつ、モスバーガーが再浮上するために必要な要素について考察しています。

食中毒事故と客離れで苦しむモスが復活するために必要なこと

ハンバーガーチェーン「モスバーガー」を運営するモスフードサービスは10月29日、2019年3月期通期の連結業績予想の下方修正を発表した。純損益は従来予想から33億円少ない8億円の赤字(前期は24億円の黒字)とした。08年3月期以来11年ぶりの赤字となる。

売上高は従来より60億円少ない660億円(前期比7.5%減)、営業利益は34億円少ない4億円(同89.3%減)とそれぞれ下方修正した。

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8月に起きた食中毒事故が響いた。長野県にあるモスバーガーのFC加盟店で腸管出血性大腸菌O121を原因とする食中毒事故が発生したことで収益が悪化すると判断した。また、食中毒事故により収益が悪化するFC店に対して営業補償を実施するため、4~9月期に9億6,100万円の特別損失を計上する。これが純損益の下方修正の大きな要因となった。

もっとも、売上高の下方修正に関しては食中毒事故だけが理由ではない。食中毒事故が発生する前からモスバーガーで起きていた客離れが未だ続いていることも大きく影響している。18年4~9月期の既存店客数はすべての月で前年同月を下回っており、累計では前年同期から7.1%も減っている。なお食中毒事故が発生した月の翌9月は13.8%減と大幅減となった。通期ベースでは14年3月期から18年3月期まで5期連続で前の期を下回っている。客離れが止まらない状況だ。

モスバーガーが長らく客離れで苦しんでいるのは様々な理由が重なったことによる。

まずは値上げが考えられる。モスバーガーは消費増税のタイミングで14年4月に値上げを実施し、それに続く形で15年5月、原材料費や人件費の高騰などを理由に値上げに踏み切っている。主力バーガーの「モスバーガー」は340円(税込み、以下同)から370円に引き上げた。それ以外のメニューでもいくつか値上げしている。

急速に落下するモスバーガーの顧客満足度

消費者の節約志向は弱まる気配はなく、消費者は値上げに敏感だ。単なる値上げは客離れに直結する。実際、値上げしたことで客離れが起きた外食チェーンは少なくない。

牛丼チェーンの「吉野家」は14年12月に主力の牛丼並盛りを300円から380円に値上げしたが、これにより客数が前年同月比で15%ほど落ち込み、長らく客離れで苦しむことになった。

居酒屋チェーン「和民」などを展開するワタミは14年4月に傘下の居酒屋で値上げを実施したところ、国内外食事業の客数が最大12%落ち込むなど深刻な客離れを招いた。消費者を対象に実施したアンケート調査によると、値上げを機に価格に対する満足度が急激に低下したという。こうした状況を受けて15年4月に“値下げ”を実施したところ、ようやく客離れは止まるようになった。

最近では居酒屋チェーンの「鳥貴族」が値上げし、客離れで苦しんでいる。昨年10月に1品280円均一から298円に引き上げたところ客離れが起きた。客数は昨年12月から今年9月まで10カ月連続で前年同月を下回っている。9月は前年同月比15.3%減と大幅に減っており、客離れは止みそうにない。

以上の例が示しているように、値上げは客離れを招く。モスバーガーも例外ではなく、値上げにより割高感が出てしまい、それにより客離れが起きてしまったと考えられる。

もちろん、商品の品質を高めた上での値上げであれば客離れは限定的だっただろう。ただ、モスが値上げした際に商品の品質を高めた形跡は見当たらない。単なる値上げで終わってしまったため、割高感が出てしまった。さらに、近年は「シェイクシャック」など高品質のハンバーガーを提供する店が続々と誕生しており、消費者が感じるモスの商品品質は“相対的に”低下してしまっている。これにより割高感がより高まってしまい、客離れにつながっていったと考える。

かつてのハンバーガー業界は、「高品質のモス、低価格のマクドナルド」という構図で大方見られており、モスの高品質感は際立っていた。しかし近年は高級バーガー店が台頭したことで「高品質の高級バーガー店、中価格・中品質のモス、低価格のマクドナルド」という構図に変移してしまっている。こうしてモスは中途半端な位置に追いやられてしまい、それによりブランド力が低下し、以前のようには顧客を引き付けることができなくなってしまったのではないか。

このことを示すかのように、モスバーガーの顧客満足度が急速に低下している。日本生産性本部・サービス産業生産性協議会の「日本版顧客満足度指数(JCSI)」(2018年度第1回調査)で、モスは飲食店部門の「顧客満足」で首位から3位に転落してしまったのだ。モスは17年度まで2年連続で1位に君臨していた。

マクドナルドの大復活劇

こうしたモスの凋落はマクドナルドの復活も大きく関係しているだろう。マクドナルドは14年7月に期限切れの鶏肉を使用したことが発覚し、それにより客離れが起き、業績が大きく悪化した。しかし、鶏肉問題が発生してから月日が経ったことに加え、打ち出した施策が奏功したことで業績が回復するようになった。既存店売上高は15年12月から18年9月まで34カ月連続で前年実績を上回っている。直近の18年1~6月期の連結決算は、売上高が前年比9.7%増の1,330億円、純利益が26.3%増の135億円と好調だ。

マクドナルドが復活している理由はいくつかあるが、その一つに商品の品質を高めたことがあるだろう。美味しいハンバーガーを開発し投入したことでマクドナルドに足を運ぶ人が増えていったのだ。

既存店売上高が前年を上回りだした15年12月より前は、鶏肉問題で悪化したイメージを回復させるための施策に忙殺されていたこともあり、商品面では強い打ち出しができていなかった。もちろん、商品の打ち出しをまったくしていなかったわけではない。ただ、打ち出したとしても、高品質の商品というよりは“値ごろ感”のある商品を打ち出し、低価格の商品で集客を図ろうとしていた。

例えば、14年10月に売り出した「昼マック」がそうだろう。平日のランチタイムに限りセットメニュー約10種類を値下げし、350円、450円、550円のいずれかで販売した。低価格を訴求していたことがわかるだろう。15年10月には、ハンバーガー単品200円、セットで500円と値ごろ感のある商品群「おてごろマック」を発売している。このように、15年までは価格の安い商品を打ち出す傾向にあった。

ところが、16年以降は価格の安い商品の打ち出しは鳴りを潜めている。高価格だが高品質の新商品を開発したり、品質の良さをアピールするキャンペーンを打ち出すなど、品質面を前面に打ち出す戦略に舵を切ったのだ。

例えば、16年4月に発売した「ギガビッグマック」がそうだろう。定番メニュー「ビッグマック」を極端に大きくした食べ応えのあるバーガーで、単品で740円、セットだと1,000円以上にもなる。同年5月には、ハワイの定番料理「ロコモコ」をイメージした、ハワイ州観光局公認のバーガー「ロコモコバーガー」(単品400円、セット690円)を発売した。こういった高価格・高品質の商品の販売が目立っていた。

名前を公募して新バーガーを販売したり、バーガー総選挙を実施したりするなど、話題性のある販促を打ち出すようになったのも16年に入ってからだ。高品質商品の販売と並行して実施したため、高品質商品の品質面のアピール強化にもつながった。

17年は定番メニューを強化する年と位置づけ、商品品質の底上げを図っている。18年も高品質商品の開発と定番メニューの強化に力を入れており、例えば4月に、ビッグマックに改良を加えた「ビッグマックベーコン」(単品450円、セット750円)や「ビッグマックBLT」(単品490円、セット790円)を発売し、10月には「グランガーリックペッパー」(単品390円、セット690円)など3種類のバーガーを定番メニューに加えている。こういった高品質の商品を投入し、話題性のある販促を実施したことでマクドナルドに客足が戻るようになったのだ。

モスバーガーの客離れが未だ続く要因

もちろん、モスバーガーもただ手をこまねいていたわけではない。当然に新商品を開発し、販促を打ち出してはいる。しかし、マクドナルドほどの話題を呼んだものはなかったのではないか。埋没していた感が否めないだろう。高級バーガー店が台頭し、マクドナルドが復活を遂げつつあるなか、モスは商品と販促において独自色を打ち出せなかったことが、客離れが未だ続いている要因になっていると筆者は考える。

モスは食中毒事故で深いダメージを負ってしまった。今後、悪化したブランドイメージを回復させることはもちろん必要だが、それに加え、高品質の商品を開発し、話題性のある販促を打ち出して集客を図ることも必要だろう。マクドナルドにできたのだから、モスにできないことはないはずだ。モスの復活に期待したい。

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