山口俊に運命を変えられた選手が見せた「男の意地」【プロ野球B級ニュース事件簿】

山口俊に運命を変えられた選手が見せた「男の意地」【プロ野球B級ニュース事件簿】

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  • 更新日:2018/01/12
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DeNA・平良拳太郎 (c)朝日新聞社

気がつけば、2月1日のキャンプインまであと1ヵ月を切った。プロ野球が恋しくなるこの季節だからこそ、改めて2017年シーズンの出来事を振り返っておきたい。「プロ野球B級ニュース事件簿」シリーズ(日刊スポーツ出版)の著者であるライターの久保田龍雄氏に2017年シーズンの“B級ニュース”を振り返ってもらった。今回は「男の意地を見せました編」である。

【写真】山口俊の心境はいかに

*  *  *

『DeNAの山口俊が巨人にFA移籍した』

文字にしてたった18字だが、これが巨人入団4年目を迎えた21歳右腕・平良拳太郎の運命を劇的に変えた。

2017年1月、平良は山口の人的補償としてDeNAへの電撃移籍が決まる。若手投手が不足するチーム事情から、トルネード気味の変則サイドから140キロ台の直球とカットボールを繰り出す“斎藤雅樹2世”に白羽の矢が立てられたのだ。

平良はその前年の4月7日に行われた阪神戦(東京ドーム)でプロ初先発初登板。4者連続奪三振を記録したが、4回途中4失点で無念の黒星デビュー。その後は右肘痛もあり、リベンジをはたせないまま、シーズンを終えていた。

それだけに、トレード通告には、「突然のことでビックリした」という。だが、すぐに気持ちを切り替え、「選んでいただいてうれしく思います。(移籍)1年目からしっかり力を出して、チームに貢献したいです」と新天地での飛躍を誓った。

開幕を2軍で迎えた平良は、5月10日に1軍登録され、同日の中日戦(ナゴヤドーム)で移籍後初登板。得意のカットボールで内野ゴロの山を築き、5回を3安打1失点。勝利投手の権利を得てマウンドを降りた。

そして、リリーフ陣が2点リードを無失点で守りきり、うれしいプロ初白星をプレゼント。人的補償で移籍後、初登板でのプロ初勝利は史上初の快挙である。

「本当にいろんなことがあった。いろんな人の支えがあったから勝てたと思う。こうやって使っていただいて、勝つことが(巨人とDeNAの)どちらに対しても恩返しになる。勝てて良かった」(平良)

平良をプロテクトせずに失う形になった巨人は、FA移籍の山口も不祥事で出場停止の大誤算。「後悔先に立たず」を地でいったような結果になった。

次も巨人絡みの話である。6月18日のロッテ戦(東京ドーム)で、打者としてこのうえない屈辱を何度も味わわされながらも、最後の最後で男の意地を見せたのが、13年目のベテラン亀井善行だった。

この日2打席連続本塁打を放った阿部慎之助が、6回の打席で顔面付近の直球を避けようとして転倒した際に、右膝を痛めてベンチに下がったのが、ことの発端だった。

7回から阿部に代わって亀井が5番に入ると、ロッテバッテリーは「くみしやすし」とばかりに4番・マギーを敬遠し、「亀井と勝負」を繰り返す。

まず3対3の同点で迎えた8回1死一塁でマギーを敬遠し、1死一、二塁で亀井と勝負。マギーは二盗を決め、1死二、三塁とチャンスを広げたが、亀井は捕邪飛に倒れた。

延長10回2死三塁でもロッテバッテリーは当然のようにマギーを敬遠し、亀井と勝負。マギー二盗で2死二、三塁としたが、亀井は空振り三振。悔しさのあまり、ベンチに戻ると、道具を投げつけた。

そして、2点を勝ち越された直後の12回裏、巨人は1点を返し、なおも1死二塁と最後の粘りを見せる。ここでもお約束のようにマギーが3度目の敬遠。1死一、二塁で三たび「亀井と勝負」になった。

「最後打てなかったら、命を取られると思って……それぐらいの気持ちでいきました」と闘志をMAXまで奮い立たせて打席に入った亀井は、大嶺祐太の3球目、フォークをフルスイング。打球は劇的なサヨナラ逆転3ランとなって右翼席に突き刺さった。

泣きじゃくりながらダイヤモンドを一周した亀井は「本当にね……心折れてたんで、奇跡としか言いようがないです。神様がいてくれた」と大感激。

まさに野球の神様がもたらした“3度目の正直”だった。

「今季一番かっこいいホームランだったね!」。阪神・金本知憲監督の口から思わず絶賛の言葉が飛び出した。

ヒーローの上本博紀にとっても、地獄から天国に舞い上がった気分だったことだろう。

アクシデントが起きたのは、前日、9月30日の巨人戦(東京ドーム)。1回無死二塁の先制機に、上本は送りバントを試みたが、巨人の先発右腕・畠世周のカットボールが左耳付近を直撃。そのまま都内の病院に直行した。畠もプレーボールからわずか4球という史上最少投球数での危険球退場となった。

幸い上本は頭部の軽い打撲と診断され、翌10月1日の巨人戦にも支障なくスタメン出場。ここから因縁ドラマの第二幕が始まる。

初回に四球を選んだ上本は、3回にも右前安打と2打席連続出塁。そして、阪神が3対2とリードした5回1死、この回から先発・田口麗斗をリリーフした畠と対戦する。

見ている側にとっては、前日の危険球の記憶がまだ生々しく、残酷にも受け取れる因縁対決だったが、上本は頭部死球の影響もなく、ためらうことなく左足を踏み込んで初球の真ん中の直球をフルスイング。気迫を乗せた打球は、左翼席上段に突き刺さる9号ソロとなった。

これには金本監督も胸を熱くした。「昨日ああいうことがあって、特大ホームランなんて……」。実は、自身も現役時代の2008年5月7日の巨人戦で、木佐貫洋から後頭部への死球を受けた次の打席で、門倉健から本塁打を放った経験があった。

「オレのはまぐれ。逃げながら打ってたから(笑)。上本はちゃんと踏み込んでるから」

だからこそ、「カッコいい!」のである。

●プロフィール

久保田龍雄

1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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