今年の「東京モーターショー」を振り返って思うこと

今年の「東京モーターショー」を振り返って思うこと

  • @DIME
  • 更新日:2017/11/25

■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ

先月から今月初旬にかけて、東京モーターショーが行なわれた。出展メーカーが減り、入場者数が減り、メディアの評価もあまり芳しくなかった今回の第45回東京モーターショー。次回の詳細はまだ明らかにされていないが、これまでの経緯を踏まえて、ここでいくつか提言を行ってみたいと思う。

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まず、会場について。2019年開催予定の次回は、オリンピック&パラリンピックの準備予定がすでに入っており、東京ビッグサイトを同じようにモーターショー会場として使うかどうか未定だと伝えられている。主催団体は、「ビッグサイトの一部を用いながら、会場を分散させ、同地区で開催する」と発表している。

これは良い決定だと思う。展示を無理に1か所に集めることにこだわらず、分散も選択肢に入れるのは現実的だ。ただ、その際に、中心となるホールは今回までの東京ビッグサイトの東館や西館ではない方が望ましい。東京ビッグサイトは東館と西館が離れていて、来場者は天井の低い通路を延々と移動しなければならないからだ。

また、それぞれの館の中も蟻の巣のように小さく分かれていて、コマ切れにされている。ホテルの催事場で行うようなイベントをハシゴしているようで、モーターショーの特別感や高揚感をまったく感じることができない。以前にも本連載で書いたことがあるけれども、モーターショーの会場というのは疑似的に世界を一望できなければならない。

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世界の自動車メーカーや関連用品メーカーが一堂に会するわけだから、その様子を眺めることができなければならない。その点、幕張メッセは理想的だった。二階の廊下から見下ろせることができた。ジュネーブモーターショーが行われるパレクスポという催事場も1階フロアと2階フロアをつなぐ複数のエスカレーターとその周辺から一望することができたし、フランクフルトやパリでも、そうした場所があった。

実は、東京ビッグサイトにも一か所そういうところがあるのである。ボルボやシトロエンが展示を行なった、西館1階のピロティだ。東館からの通路を渡って来て、エスカレーターで降りたところ。エスカレーターで降りていく数十秒の間、ゆっくりと上から眺めることのできる絶好の場所なのだ。ここを上手く整備することは検討されてもいい。

東京ビッグサイトは、他のイベントには適しているのかもしれないが、東京モーターショーの規模においては狭苦しく、それでいて一体感と“一望感”に欠けている。どこか他の会場をメインホールとするべきだろう。メルセデス・ベンツが、以前から「CASE」という概念を提唱している。Connectivity(インターネットへの常時接続)、Autonomous Drive(自動運転)、Sharing(シェアリング)、Electrification(電動化)の頭文字をつなげたものだ。

メルセデス・ベンツだけでなく、今後の自動車が開発の目標に設定していて、モビリティを大きく変えていく4つの要素である。これらが実現されることによって交通事故がなくなり、省エネが進み、人間の負担がなくなっていく。これまでクルマが宿命的に抱え込んで来たネガがほぼ解消され、運転に費やされていた時間とエネルギーを自分のために有効に用いることができる。

アウディは今回のショーに持ち込んだ、レベル4の実現を目指すコンセプトカー『Elaine』を、「『Elaine』は1時間生み出すことができて、1日を25時間に増やせる」と比喩的に説明していた。たしかに『Elaine』に限らず、レベル4や5の自動運転が実現すれば、クルマと人の関係は大きく変わるだろう。今回のショーでも、そのことを各自動車メーカーはそれぞれの方法で展示していて、トヨタや日産のコンセプトカーには見応えがあった。

しかし、CASEで説明されている4つの概念とそれを実現するための技術はすべてデジタルによるものだから、眼に見えないのだ。眼に見えないものを展示し、説明することは簡単ではない。わかりやすく伝えようとすればするほど、技術者以外には理解できない難解なものになってしまう。ブラックボックス化しているからだ。

クルマや技術そのものを説明するのではなくて、“そうしたクルマがあると、暮らしや世の中がこのように便利で快適で安全なものに変わります”というシミュレーション例を示すことが重要になってくるのではないだろうか?

クルマをクルマというワクの中だけで説明しても説得力を持ちにくい時代なのだから、他のものとコラボした展示も考えてもいいかもしれない。アウトドア用品メーカーやIT企業などと積極的にタッグを組み、近未来のクルマの使用例とライフスタイルを提示するのだ。

毎年、1月にアメリカで行なわれるInternational CESと逆のパターンだ。家電&ITショーとして始まったCESに自動車メーカーも参加するようになったのだから、その逆を行う。電気やガスなどのエネルギー企業、住宅やファッションメーカー、あるいは地方自治体などだってクルマと大いに関連してくるのだから、コラボ方法はたくさんあるだろう。

さらに、モーターショーの不振ぶりは、近年、自動車ディーラーに人が集まらないことともリンクしている。それを打開すべく作られた『メルセデスベンツ・コネクション』や『BMW東京ベイお台場』などの新たな試みにもヒントが潜んでいるような気がする。

新車や新技術をアピールし、自らのブランドを訴求する機会はインターネットの出現以降に多様になった。モーターショーだけ昔からのやり方を続けていて良いわけがない。ショーそのもののあり方が問われているのである。次回の東京モーターショーが新しく生まれ変わることを期待したい。

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文/金子浩久

モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。

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