祝ノーベル化学賞 吉野博士が語ったリチウムイオン電池の本当の凄さ

祝ノーベル化学賞 吉野博士が語ったリチウムイオン電池の本当の凄さ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2019/10/10
No image
No image

繰り返し使っても「性能が落ちない」電池

2019年のノーベル化学賞に、旭化成名誉フェローの吉野彰氏(71)ら3人が選ばれた。授賞理由は「リチウムイオン電池の開発」。日本人の化学賞受賞は9年ぶりの快挙だ。

No image

ノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏/撮影:高山浩数

「リチウムイオン電池」の始まりは1970年代に遡る。今回、吉野氏と共同受賞した米ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(当時はエクソン所属)のマイケル・スタンリー・ウィッティンガム教授が、初めて電極にリチウムを使用した電池を開発した。しかし、反応が不安定なため実用化には至らなかった。

その後、共同受賞した米テキサス大学(当時はオックスフォード大学)のジョン・グッドイナフ教授が、1980年にコバルト酸リチウムを素材にした電池の正極を開発。

さらに、旭化成の研究員だった吉野氏が電気を通すプラスチック「ポリアセチレン」が負極側の素材に適していることを突き止めた。最終的に吉野氏は炭素素材を用いた負極を開発し、1985年ごろに、いまの「リチウムイオン電池」の原型ができあがった。

リチウムイオン電池が爆発的に普及するようになったキッカケの一つが1995年の「Windows95」の発売だ。パソコンが一家に一台置かれるようになり、それを機にノートパソコンや携帯電話などのIT機器の開発が活発化。とくに小型で安全なバッテリーの需要が高まり、リチウムイオン電池に注目が集まったのだ。

では、リチウムイオン電池の何がすごいのか。2016年の週刊現代の取材で、吉野氏本人はその特徴を次のように話していた。

「現在、スマホやノートパソコンなどのバッテリーに使われているのが、リチウムイオン二次電池です。二次電池とは、繰り返し充電して使える電池のこと。他の二次電池は、最後まで使い切ってから再充電しないと、次から電圧が下がってしまう『メモリー効果』の問題がありますが、この電池ではその影響はほぼありません」

環境面でも大きな貢献を果たした

それまでの充電式電池の主流は、ニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル水素電池など。これらの電池は、最後まで放電してから充電をしないと、次第に電池の容量が減ってしまう問題があった。

昔の電池は何回か充電すると、すぐに電池の持ちが悪くなるという経験に心当たりがある人もいるだろう。これは「メモリー効果」が原因なのだが、リチウムイオン電池ではその影響を受けない。つまり「継ぎ足し充電」を可能にしたのだ。

また、繰り返し使える「二次電池」であることも、環境面ではインパクトが大きい。長い間、電池といえば使い捨ての乾電池(一次電池)が当たり前で、希少な金属が含まれる電池をそのつど廃棄することを問題視する声も少なくなかった。しかし、リチウムイオン電池はその課題も解決。現在ではクリーンエネルギー技術の主役として、世界中から脚光を浴びているのだ。

No image

座右の銘は「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。温厚で謙虚な科学者だ。

いまやその市場規模は3兆円以上ともいわれるリチウムイオン電池。しかも、今後さらに需要は増えていくだろうと吉野氏本人は語る。

「現在の主なマーケットはモバイル機器ですが、ドローンや電気自動車のバッテリーとして普及していけば、更に需要が高まるかもしれません。そうやって大容量のリチウムイオン二次電池が世の中に認められ始めたら、次は大型蓄電システムにも使われるかもしれない。まだまだ発展が望める技術なんです」(吉野氏)

ダイナマイトの開発者アルフレッド・ノーベルによって創設されたノーベル賞は「人類のために最大限貢献した人」に与えられることになっている。その定義からいえば、IT社会の現代において、吉野氏以上にノーベル賞にふさわしい科学者はいないのかもしれない。

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

IT総合カテゴリの人気記事

グノシーで話題の記事を読もう!
あまりにお粗末。楽天モバイルが他社からユーザーを奪えぬ訳
新しい完全ワイヤレスイヤホンAirPods Proは50ドル値上げで10月末に発売か
1998年10月21日、反射型TFTカラー液晶を採用した携帯型ゲーム機「ゲームボーイ カラー」が発売されました:今日は何の日?
地上発射型小直径爆弾 サーブとボーイングが試射に成功
航続距離は最大160km!超モダンで美しい電動バイク「Brekr Model B」は高パフォーマンス
  • このエントリーをはてなブックマークに追加