不穏になるばかりのネット空間、見え始めた「答え」

不穏になるばかりのネット空間、見え始めた「答え」

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/12/06
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――筆者のクリストファー・ミムズはWSJハイテク担当コラムニスト

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米国はようやく、インターネットがビジネスを行う場所として、また時間をつぶしたり友人と情報をシェアする場所として、ますます不穏かつ危険になっているという現実に気付き始めた。

問題の中心はソーシャルメディア・ネットワークであることが多い。具体的には、ツイッターやユーチューブ、フェイスブックだ。そこではロシア発の「ボット」やフェイクニュース、気味の悪いトラッキング広告、政治的な両極化、怪しげな動画、そして多くの荒らしが見られる。ネット広告収入は依然として増えているが、人々がネット上でのシェアや交流を制限しつつあるのは不思議なことではない。

メッセージアプリ「スナップチャット」の生みの親であるスナップのエバン・スピーゲル最高経営責任者(CEO)はニュースサイト「アクシオス」への寄稿で、この問題を利己的かもしれないが上手にまとめて見せた。「ソーシャルとメディアの組み合わせは驚くべき業績を生み出してきたが、結局のところ、我々と友人たちとの関係、我々とメディアとの関係をむしばんでしまった」と。スピーゲル氏はスナップチャットの設計変更を発表した。プロが制作したコンテンツと個人的な情報の共有を切り離すためだ。

新種のアプリやサービスは、これを肝に銘じている。大手ネット企業の過ちから学んだ彼らは、インターネットの嵐の中で島のような存在となりつつある。筆者は彼らを「安全な空間」と呼ぶ。こうしたアプリやサービスは、我々に個人情報を求めることなく、また広告主ばかりが儲かるネットへの没頭サイクルに我々を引き込むことなく、コンテンツをフィルタリングしている。より狭義に言えば、彼らはアルゴリズムの助けを借りた人間のチームであり、その逆ではないのだ。

こうしたトレンドを示すいくつかの例を以下にまとめた。

Jellies(ジェリーズ)

このアプリを開発したケン・ヤルモシュ氏は6歳に満たない4人の子を持つ父親だ。子供向け動画視聴アプリ「ユーチューブ・キッズ」が直面している多くの問題を回避する「Jellies(ジェリーズ)」の着想は、子どもたちから得たという。

月額利用料5ドルのジェリーズに広告は一切表示されない。ユーチューブなど他サイトからストリーミングする全動画は、2人のエディターの目を通して選び出されている。ヤルモシュ氏によれば、動画を見つける作業はアルゴリズムの手を借りるが、アプリ内の年齢別チャンネルに流すコンテンツは最終的には人が判断する。ジェリーズで現在視聴できる動画は約3000本と、膨大な本数を有するユーチューブに比べると微々たるものだが、ヤルモシュ氏はそこは問題ではないと話す。つまるところ、子供たちが視聴するコンテンツは限られたものであるべきなのだ。

10月にジェリーズがローンチされた直後、ユーチューブ・キッズでは怪しげな動画の存在が表面化した。商品を箱から開けて出すだけという玩具の広告のような動画や、ミッキーマウスなど人気キャラクターを良からぬ使い方で登場させる動画などだ。

ユーチューブは内容が不適切であることを理由に一部の動画を削除したとしているが、コンテンツを選ぶ作業を自動フィルターやユーザーからのフィードバック・評価に頼るだけでは明らかに不十分だ。

Neverthink(ネバーシンク)

ミレニアル世代にフォーカスしたサイト「Neverthink(ネバーシンク)」には、15人のエディターが毎日インターネット中から集めてきてストリーミングする動画コンテンツの「チャンネル」がある。動画のスキップはできない。コンテンツが極めてインターネット的である点を除けば、まるでケーブルTVのようだ。

共同創業者のアビブ・ジュノ氏によれば、テレビをまったく見ない若者にとって、それは革命的であるようだ。「彼らにとって、次に何をクリックするかの選択肢がないことは、ストレスがかなり減ることを意味する」という。「あらゆる選択肢があることは、常に見続けてしまうことを意味し、それ故に止めどなくスクロールとスワイプにはまることになる」

フィンランド生まれのネバーシンクはジェリーズと同様、多くのツールとアルゴリズムを使って人間のエディターがコンテンツを選びやすいようにしている。しかし、ジュノ氏は同社のアプローチと大手ネット企業のやり方を区別している。

「フェイスブックでバイラル化するコンテンツが必ずしも知っておくべき内容であったり、興味深かったり価値があったりするという訳でもない。しかし、最もエンゲージメントの高いコンテンツであるため、ユーザーはプラットフォームに滞在し続けることになる」

ジュノ氏は、ユーチューブも同様だと指摘。ユーチューブのアルゴリズムはユーザーに「ベスト」なコンテンツを提供する以上に、最もクリックを誘いそうな動画や、広告主にとって適切な動画を優先しているようだと付け加えた。

フェイスブックの広報担当は「フェイスブックへの投稿に信ぴょう性や有益性、娯楽性があり、そして最終的に有意義かどうかは、ニュースフィードのランキングがどう機能するかの原則だ」と説明。さらに「人々がフェイスブックで日々シェアするストーリーの圧倒的多数は、バイラル化が意図されたものではなく、友人とつながるために意味を持つものだという事実を無視するのは誤りだ」と述べた。

ユーチューブを傘下に持つグーグルの広報担当は、検索結果や「あなたへのおすすめ」は、その動画が利益目的がどうかによって決まるものではないと述べた。

Otto Radio(オットーラジオ)とNPR One(NPRワン)

2014年にローンチされたポッドキャスト「Otto Radio(オットーラジオ)」のスタンリー・ユアンCEOは、人間の手によるキュレーションこそ最高の品質を確かにするものだと語る。同アプリが提供するのはニュース速報から娯楽や情報まで幅広い。ユアン氏によれば、アルゴリズムはコンテンツの分類には役立つが、質に関する適確な判断はまだできない。

非営利の公共ラジオ放送制作会社ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のアプリ「NPR One(NPRワン)」も、同様の方法で人間とコンピューターの「編集者」が動いている。どのコンテンツを流すかは人間が決め、アルゴリズムはパーソナライズ機能を担う。

その目的の1つは、「フィルターバブル」を防ぐことだとNPRワンの編集長タマル・チャーニー氏は語る。フィルターバブルとは、アルゴリズムがユーザーの視野を広げてくれるような情報ではなく、ユーザーの望む情報だけを選択的に提供し続ける傾向にある現象を指す。

スナップチャット

スナップチャットが主としてメッセージンングのプラットフォームであり、広告を通じて儲ける上場会社のアプリであることに変わりはないが、スピーゲルCEOはこうした風向きを上手に読んでいる。

他の大手アプリと同様、スナップチャットも人間がコンテンツのすべてを吟味することはできない。しかしスナップの広報担当者によると、スナップチャット上に流されるニュースはファクトチェックが行われている。アプリの見直しにはアルゴリズムでキュレートしたニュースも含まれるが、そうしたニュースは実際に流される前にすべて人間の目を通すことになる。

こうした「安全な空間」がビジネスとして存続できるかどうかは、ひとえにユーザーを引きつけられるかどうかにかかっている。10代の若者向けソーシャルアプリ「tbh」はポジティブな投稿しかできないという特徴があり、多くのユーザーを獲得した。そして、こうした風向きを明らかに理解しているフェイスブックが傘下に収めた。

人々は今後、現在のインターネットで支配的な延々とスクロールするような中毒性のあるサービスではなく、「安全な空間」を選ぶようになるのだろうか。そうなるためには、さらなるテクノロジーではなく、恐らくは時間がかかって難しい文化的変化が必要となるだろう。

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