メジャー流の評価指標でみれば、沢村賞の菅野より則本が優れている“事実”

メジャー流の評価指標でみれば、沢村賞の菅野より則本が優れている“事実”

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  • 更新日:2017/11/13
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楽天・則本 (c)朝日新聞社

ソフトバンクの2年ぶり8度目の日本一で幕を閉じた今年のプロ野球。個人タイトルについても今月9日にはゴールデングラブ賞が発表され、残す発表は20日に行われるプロ野球年間表彰式「NPB AWARDS 2017」で発表されるMVP、新人王、ベストナインとなった。

各賞は記者投票によって決められているが、選手の成績を表す指標は多様化が進んでおり、中でも統計学的にあらゆる数値を分析した「セイバーメトリクス」も一般的になってきている。打者であれば、いかにアウトにならずに得点に貢献したか。投手であれば、いかに走者を出塁させずに、または本塁に帰還させずに失点を防ぐことに貢献したかという指標が重宝されていた。

しかし近年、メジャー・リーグではそのような数値を組み合わせてチームの勝利数にどれだけ貢献したかを示す『WAR(Wins Above Replacement)』で選手を評価するようになっている。

WARが特徴的なのは、打撃成績だけではなく守備、走塁といった成績も数値化し、またポジションごとに勝利に対する貢献度の大きさが異なるという考えから係数をかけて全ての選手を比較しているという点である。

また“Replacement”という言葉が入っていることからも分かるように、代替可能な平均的なレベルの選手と比べてどれだけ勝利数を積み上げられるかという数値になっている。WARがマイナスになるということは、いわば一軍レベルの成績ではないということである。あらゆる数値を組み合わせるため、ポジションによっての係数も発表している機関によって異なるが、今回は株式会社DELTA(http://deltagraphs.co.jp/index.html)が発表している数値を基準として、WARの視点から今年のプロ野球の個人成績を計ってみたいと思う。

まずは投手についてだが、NPBで最も名誉ある賞としては先発完投型の投手に対して7個の基準をもとに選出される沢村賞がある。今年は両リーグ最高の17勝、防御率1.59をマークした菅野智之(巨人)が受賞したが、各部門で近い成績を残した菊池雄星(西武)が同時受賞を逃したことに対してダルビッシュ有がツイートしたことで議論となった。

しかしWARでは、このふたりを上回る数値を残した選手がいる。それが則本昂大(楽天)だ。

菅野が6.8、菊池が6.6のWARに対して則本はただひとり、7を超える7.4を記録している。則本が菅野、菊池を上回った理由は、味方の守備に関係なくアウトを取ることができる能力が高いことがそのひとつだ。分かりやすいのが奪三振である。今年の則本は6月に日本記録となる8試合連続二桁奪三振をマークし、年間222奪三振も両リーグトップの数字だ。

もうひとつはチームの守備力との兼ね合いである。守備全般の貢献度を示す指標であるUZR(Ultimate Zone Rating)を見てみると、菊池の所属する西武は両リーグトップ、また菅野の所属する巨人も平均以上の数字を残しているのに対し、則本の所属する楽天は平均を大きく下回る数値が残っている。

ちなみに全選手の中でも、最も高いUZRを記録したのは菊池の同僚である源田壮亮で、センターを守る秋山翔吾も12位の数字を残している。また巨人も坂本勇人が10位、陽岱鋼が11位と高い数値を誇る。

言い換えると、則本はこのような強力なセンターラインの助けがなくても自らアウトをとる能力が高いため、投手単体で見た時の勝利への貢献度が最も優れた選手という評価になったということである。

ちなみにパ・リーグで最多勝に輝いた東浜巨(ソフトバンク)のWARは3.6で、規定投球回数をクリアした投手の中では13位である。この数字は勝敗では負け越しに終わっている岸孝之(楽天)は5.1、山岡泰輔(オリックス)は3.9と東浜を上回っており、チーム事情によってはこのふたりがもっと勝ち星を積み重ねられるだけの能力を持っていると言えるだろう。

次に野手を見てみると、両リーグでトップのWARを記録したのは丸佳浩(広島)の8.9であり、投手も含めても最も高い数値となっている。得点109は12球団トップの数字であり安打数、出塁率、長打率などあらゆる指標でも上位につけている。

また盗塁以外での走塁での得点貢献度を示すUBRでも源田と並んで12球団トップ、守備全般の貢献度を示すUZRでも全体で3位となる高い数値を記録している。全143試合にセンターとしてスタメンで出場し、攻撃だけではなく走塁、守備でもいかに高い貢献度を残していたかということがよく現れていると言えるだろう。個人タイトルこそ最多安打ひとつにとどまったものの、WARの高さから見てもMVPの最有力候補であることは間違いない。

丸に次ぐWAR2位には秋山が8.1で続いているが、出塁率と長打率で12球団トップの数字を残し、MVP候補のひとりである柳田悠岐(ソフトバンク)は3位に入っているものの、上位ふたりからは大きく離された6.6にとどまっている。その理由は守備全般の貢献度を示すUZRがリーグ平均を大きく下回る-11.7に終わったことである。失策数は丸の2、秋山の3に対して柳田は1であるが、それ以外の見えない貢献度が非常に低いということになる。ちなみに柳田のUZRは過去4年間でいずれも0を下回っており、大きな課題であることは間違いないだろう。

WARの示す数字から何人かの活躍度を紹介したが、WARももちろん完璧ではない。特にリリーフ投手は高い数値が出ることは少なく、パ・リーグのMVP候補であるサファテのWARは3.6で則本の半分以下となっており、まだ改善の余地はあるようにも感じる。ただ、単純な打率、打点、勝利数などといった結果だけではなく、平均的な選手と比べてトータルしてどれだけ優れているかということを示す指標としては画期的であることは間違いない。

WARに限らず、今後も新たな指標はどんどん生まれてくる可能性はある。そのような数値からプロ野球を見ることもまた、ひとつの楽しみ方と言えるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール

西尾典文

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。

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