『YOUは何しに日本へ?』ディレクターが番組の裏側を激白 - 外国人密着の苦労、ギャラ、お蔵入りへの不安......

『YOUは何しに日本へ?』ディレクターが番組の裏側を激白 - 外国人密着の苦労、ギャラ、お蔵入りへの不安......

  • マイナビニュース
  • 更新日:2016/11/29

●青森ロケは孤独との戦い

2012年6月にSP番組として産声を上げ、2013年1月にレギュラー化されたテレビ東京のドキュメントバラエティ番組『YOUは何しに日本へ?』(毎週水曜 23:58~深夜0:45)が好調だ。成田空港で出会った外国人(YOU)に突撃インタビューを行い、面白かったYOUには密着取材をする一寸先が全く読めない同番組のスタイルは視聴者からの支持を集め、このほどDVDが発売された。時代の波に背中を押された同番組スタッフたちの思いとは? そして、"素人もの"が人気のテレビ界の現状をどう見ているのか? 同DVDにも収録されている日本縦断自転車旅「マーティン編」を担当した森辰雄ディレクターに話を伺った――。

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森辰雄ディレクター

――ついに『YOUは何しに日本へ?』のDVDが発売されました。森さんがディレクターとして担当された、自転車で日本中を旅する伝説のYOU・ドイツ人のマーティンさんの回も収録されています。ちなみにマーティンさんはその日、成田空港で何人目にインタビューされたYOUなのでしょうか?

何人目かはちょっと覚えてないんですけど(笑)。空港で彼を見つけた瞬間は覚えていますね。スーツケースなんかをガラガラと引っ張っている人が多い中、彼はカバンがたった一個。さらになんか「明らかに間違ってるなこの人(笑)」と思わせる日本のキャラクターによく似たキャラがプリントされた変な黒いTシャツを着ていたこともあって気になって(笑)。「声をかけてみよう」って感じがありました。

――その後、"(東京の)青山"へ行くと言っていたはずのマーティンさんが「実は"(東北の)青森"の覚え間違いだった」と激白してから伝説の自転車旅が始まります。あまりによく出来た笑い話なのですが(笑)、あれもガチだったのですか?

本当にビックリしましたよ。さらには飛行機とか新幹線で行けばいいのに、その場で「鈍行で行く」と言われて(笑)。「マジか!?」と(笑)。それを聞いて「今から青森か…」「カメラマンや通訳さんの手配はどうしよう」と悩みながら仕方なく、ひとりでマーティンさんに着いて行ったのですが、僕は英語が流暢なわけではない。カメラも自分で回していたので、青森ロケの途中で急きょテレビ東京に電話して「僕ひとりじゃ辛すぎます」と応援を呼びました。孤独との戦いでしたね(笑)。

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青森から、日本海側を自転車で日本縦断するために来日したドイツ人のマーティン。40年前に流行った5段変速ギア付きの愛車「ダブルフロントライト」とともに日本中を旅した

――それから「伝説」と呼ばれる自転車旅が始まります。放送されているシーン以外にも何かエピソードはあったのですか?

今回のDVDの特典映像に入れさせてもらっているものです。僕たちはマーティンの自転車の旅に追走させてもらって撮影していたのですが、放送で見ると単純に外国人が自転車に乗っているだけの映像になってしまうという判断でカットされたもの(笑)。今回は敢えてそちらも入れさせてもらっています。

――ほかにカメラが回っていないところで印象的だったことは?

彼が日本を去るときに、彼は自分の愛車「ダブルフロントライト」を僕にくれました。本当は彼も日本に友達がいて、その友達にあげるかなど悩んでいた時期もあったようなのですが結局、軽いノリで僕に譲ってくれたんです。その1年後、僕がその「ダブルフロントライト」を彼のいるドイツに届けに行くのですが、カメラが回っている中でも感謝してくれましたけど、回ってないところでも、ただ僕が彼を喜ばせたいという部分を超えて「やっぱり君にあげてよかった」と言ってくれました。「君にあげたから、愛車がちゃんとドイツに来てくれた」って。壊さずに持っていくことは大変でしたが、持って行って良かったですね。また、彼の友達とバーベキューもしたのですが「撮影はやめて一緒に楽しもうよ」と。日本旅の時から彼はこのセリフを言っていたのですが、その時は一緒に飲み始めてしまいました(笑)。

――カメラが回っていないところでも当然、交流があるわけですね。

むしろ 、僕らにとってはその時間が重要で。話しているうちに人となりや家族構成なども分かってきますし、例えばバーベキューの時はサプライズで、マーティンが日本で出会った人たちからのメッセージを撮影して持って行っていたんです。ですから、飲んで話している間に、思い出してもらえるように軽いジャブを(笑)。

――なるほど(笑)。ほかにどんな話をしたんですか?

マーティンが「ダブルフロントライト」を青森の中村輪業さんで買ったとき、学生カバンが入る横のカゴを中村さんが無料でつけてあげようとしたんですね。ですが彼は断った。理由は「カッコ悪いから」 (笑)。そのあたりにも彼なりのこだわりがあって好き嫌いもハッキリした楽観的な人物なのですが、ドイツで再会した時は「旅にあれがあったら物も入れられるし、めちゃめちゃ便利だった」って後悔していました(笑)。僕も中村さんのところへメッセージビデオを撮影に行ったときに「あのカゴは置いてありますか?」と聞いたのですが、「もう捨てちゃったよ」と言われて……。

――番組とマーティンさんの出会い同様、まさに"一期一会"の品だった。

ええ。彼はいつも妙なところで自身のこだわりを見せるので。日本旅でも別のTシャツも持って来ていたのですが、あの変な黒いTシャツは、彼にとって「ここぞ」というときのTシャツだったり。僕たちにとってはどうでもよく見えるのですが(笑)。その後、僕は彼がロシア人の彼女とロシアで開催した結婚パーティーにも呼んでいただけました。そこにもカメラを持って行ったのですが、もし上司から「そこへ行っても何も撮れないでしょ?」と言われたら自腹で行くつもりでした。彼は恩人ですし、大切な友人でもあります。

――自腹を切るロケもあるのですか!?

それはさすがにありません(笑)。上司から「マーティンだったら面白いものが撮れそう」と言ってもらえてガッツポーズでしたね(笑)。その結婚式の様子もDVDの後半に少し入れさせてももらっています。この後も彼とは現在も連絡を取り合っていますし、新しいチャレンジでドイツから自動車でユーラシア大陸を横断して日本まで来るという彼の夢にも参加させてもらっています。成田空港での「なんか変なTシャツ着てるな」という思いから始まった出会い。それがここまでの不思議な広がりを見せていることを感慨深く思っています。

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――番組についての素朴な疑問をお伺いします。まずロケスタッフなのですが、何人で外国の方に密着されているのでしょうか?

基本クルーは、ディレクターと翻訳、そしてカメラマンの3人です。

――ディレクターは必ず白いシャツを着ていますが、それは"決まり"なのですか?

決まってはないんですけど、この番組で、成田空港で最初にインタビューを行ったのが僕だったんです。そのとき、僕がたまたま白いワイシャツを着ていたから、その映像を見ていたスタッフが「みんなこれに合わせない?」って。

――では森さんが白いワイシャツを着ていなかったら違うものになっていた!?

はい (笑)。ですから特に深い意味もないですが、統一感も出ますし、また極力ディレクターの個性を抑え、外国の方にスポットライトを当てたいということもあります。

――今となっては、この格好を見れば『YOU~』のロケだと分かってもらえますよね。

番組当初は、僕らが成田空港でロケをしていると「誰か有名人が来るんですか?」と言われていたのですが、今となっては、ありがたいことに「いつも見ています」と。それは励みになりますね。

――あと、これは視聴者も聞きたいことだと思うのですが……密着する外国の方へのギャラは、本当に支払われてないのですか!?

払ってないです。そもそも彼らは"観光ビザ"で入国しているので、ギャラをもらう……つまり働くには"就労ビザ"が必要になってきますから。法律上のことは関係ないにしても、「ごめんなさい、謝礼とかないですけど」と僕たちは必ず前置きします。ですが「欲しい」って人には僕は会ったことがありません。会っても「ごめんなさい」とお別れするだけです。

――次に「外国の方に密着する」ということについてですが、やはり日本人に密着することと比べて、なにかしらの苦労は伴うのでしょうか?

まず単純に言葉の壁があります。また、彼らは日本人のように「きっちりとスケジューリングをして楽しむ」ということをしない方も少なくないので、成田空港で密着の約束をして、待ち合わせ場所に彼らが訪れるかどうかが僕ら的には大きな山場になります。来ないときは本当に来ないですから(笑)。

――DVDに収録されている「指さし編」でも、ディレクターが待ち合わせ場所に来たら、彼らはもう旅に出発した後だったとか(笑)。

そうなんです(笑)。彼らは僕らの撮影のために旅をしているわけじゃないので、基本僕らは関係ないんです。

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旅のラスト、マーティンとの別れの際に思わず涙した森ディレクター

――撮影のために彼らを邪魔しないことも基本ルールですよね。

はい。僕たちは彼らに合わせることしかできません。ですから密着の前に彼らに言ってあります。「分からないこととか、相当なトラブルがあったら勿論、僕たちも助ける。でもそれ以外は君たちの自由にやってもらってもいいし、逆に、あんまり僕らを頼らないでね」と(笑)。ノーギャラでこの条件でダメならこちらも諦めますし、でも「いいよいいよ」ってノリの方は意外と多いですよ(笑)。

――相手は外国の方、さらには素人さん。しかもこちらが演出をしないという条件でのロケ番組で、番組が成立するか不安になりませんか?

めちゃめちゃ不安になります(笑)。例えば"大家族もの"のように、皆が興味あるテーマだとかドラマ性がなければ映像としては見ていられない。この番組でも実際に密着をして、ストーリーとして「ただ観光をしただけだよね」ということは多々あって、お蔵入りになることも山ほどあります。

――お蔵入りになると、密着されたほうがガッカリしませんか?

カメラが回ってないときの会話などで、お互いが理解し合えるよう、しっかり関係性を作っておくことも大切です。こちらの力足らずでお蔵入りになるわけですし。お金を払えない分、僕たちも気を使いますし、踏み込んではいけないところには踏み込まない。彼らの"お気持ち"で密着が成り立っていることに意識を置いています。

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――昨今、素人さんを扱う番組が増えて生きているように思うのですが、そうした番組が増えていることについて、何か思われることはありますか?

僕もぶっちゃけで言うと、芸人さんとワイワイやるバラエティ番組のほうが自分に合っているかなって思った時期がありました。ですが素人さんを取材させてもらうと、芸人さんも超える瞬間、予想を超える瞬間があるんですね。よりハプニングが起きやすいと言えるかもしれません。

――確かに今、ネット動画などで素人さんがさまざまなことを発信されていて、それがよく話題になっています。

そうですね。それで視聴者の方々が素人さんを受け入れやすい素地も出来てきているような気がします。テレビ番組のように"作られたもの"ではない魅力もあるでしょうし、そこに自分を重ね合わせやすい部分もあるでしょう。素人さんは芸人さんたちのように一芸に秀でた方ではないのかもしれませんが、親近感という部分では強い。……ただ、実は僕も素人さんで番組を作っている予定はなかったんですけどね(笑)。これまで僕は芸人さんで番組を作ったこともあり、そういったディレクションの一生のプランから言うと「なんで僕は外国人を撮っているんだろう?」と、ポカンとすることがたまにあります(笑)。

――ちなみに、森さんのディレクションのこだわりとは?

例えば『YOU~』であれば、カメラを回していない中で密着している外国の方とお酒を飲んでみたり。めちゃめちゃアナログな"飲みニュケーション"という古いやり方をしていますね(笑)。この番組の僕の上司とも「僕たちは昔の古いテレビの作り方をしているね」という話をよくするんです。

――それは具体的にはどういうものですか?

"まず現場が面白いと思うものを"という発想だったり、"足で稼ぐ"こと。今はインターネットがあって、正直リサーチも楽。でも僕たちはちゃんと足で稼いで作り上げていく。また小さい子からおじいちゃんおばあちゃんまで皆で楽しめる番組を作るということ。限定された層を狙った番組も好きですが、家族で楽しんで見てもらっていることは僕たちの誇りにもなっています。

――最近、ネットのSNSや掲示板などで「最近はテレ東さんの番組をよく見る」「テレ東さんの番組が安定している」「面白い」などの声が挙がっているのは「現場が面白いと思うものを作る」という当然のことをやっているからでしょうか?

かもしれませんね。この番組もそうですし。この番組では僕らディレクターは顔出しで撮影しているのですが、そんな"顔"の見える、身近な"隣のあんちゃん"が作っているぐらいの感覚で、でも「なかなか面白いことをやるね」ってことがウケているように思います。またテレビ東京って昔から、『TVチャンピオン』(1992年~2006年)や『徳光和夫の情報スピリッツ』(1995年~2004年)など、伝統的に、素人さんといい関係性を持った番組を作るのを得意としている部分もあると思いますし。

――そうして尖って作ったものが、他局でもフォーマット化されていく流れも感じられます。

この番組も認知度が上がってトンガリ度は薄まってはいるかもしれないんですけど、深夜の頃とかガチガチに尖っていたと思いますね。密着の約束をした外国の方が来なくても むしろ、「それを放送しちゃえ」みたいな(笑)。「大丈夫か?」、「でもそれで尺(放送時間)が2分持つから大丈夫」っていう(笑)。そもそも、そんな簡単に密着なんて撮れませんから。

――逆にリアルだと。

そう。それに、どうしても密着がメインになるのですが、現場のディレクターが最も力が入るのは実は、成田空港のインタビュー。短い2、3分の枠ですけど、彼らが何をしに来たのか聞いてみたり、密着はできないけどユニークなキャラがいたり。モデルさんみたいな人がいてモデルポーズを取ってもらったり。これも放送されているのですが、僕たちも最初はインタビューだけを放送しようなんて全然思ってなかった。密着取材だけのつもりだったんですけど、ディレクター皆で見ていて「インタビューだけで結構面白い」「僕らが面白いと思っているのに放送しないのは違うだろう」と(笑)。こういったマインドだからこそ、番組が未だに続いている部分はあるかもしれませんね(笑)。

――改めて番組への抱負などはありますか?

皆で話しているのは、東京オリンピックまでは続けようと。ただ、オリンピックの年は、オリンピックで来た人しか密着できなくて、スポーツの映像ばかりになるのでは、という懸念はあります(笑)。

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『YOUは何しに日本へ? マーティン&ニセコYOU編』 発売中 2,800円(税抜)収録時間:本編163分+特典映像 MC:バナナマン(設楽統、日村勇紀)、ナレーター:ボビー・オロゴン

――先日、日本に来る海外旅行者が過去最高を記録したということもニュースになり、番組にも追い風が吹いているようにも思います。

その追い風にうまく乗れたってことはあるかもしれません。政治家の麻生太郎さんも公演会でこの番組について「とても素晴らしい番組です」みたいな話をされていて。政治家の先生方が見るような番組ではないんですけど(笑)。ただ、外国の方々から見たリアルな日本の姿が見られますし、僕らは"ドキュメンタリー"だと思って作っている部分もある。今後も"笑えるドキュメンタリー"を作っていけたらと思います。

――最後に、この番組のDVDの見どころを教えてください。

DVDでは、私をはじめ現場にいたディレクターが副音声で、マニア向けにいろいろ話をさせていただいています。いつもの『YOU~』とは違った楽しみ方もしてもらえるかなと思っていますし、また何回見ても「後ろにこんなものが映っていた!」など新たな発見もあるはず。初めて見てくれる方には、何が起きるか分からないところを楽しんでもらえれば。いきなり「川の中に飛び込んじゃった!?」など、想像をはるかに超えてくれるはずです。永六輔さんの「最後は素人さん」ではないですが、どんなに偉い作家さんでも書けないような、何が起こるか分からない、"成田空港から始まる旅"をぜひ楽しんで下さい。

(C)テレビ東京

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