サッカーのルールはどう決まる? 審判を非難する前に、深めておきたい競技規則への理解

サッカーのルールはどう決まる? 審判を非難する前に、深めておきたい競技規則への理解

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  • 更新日:2018/01/12
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サッカーの試合中にレフェリーの判定を巡って選手やサポーターが熱くなることは珍しくない【写真:Getty Images】

Law of the Gameと言われるサッカーの競技規則

サッカーというスポーツにおいて、なくてはならない存在であるレフェリー。試合を裁く彼らのジャッジはしばしば批判の対象となるが、誤った解釈によるものも少なくない。サッカーの競技規則を知ることで、判定についてもより建設的な議論ができるのではないだろうか。(取材・文:中山佑輔)

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Jリーグなどのプロリーグ、そしてときには高校サッカーなどでも、レフェリーが下した判定の正誤が問題になることがある。そのなかには審判団の判定が明確に誤っているものもあれば、議論の余地が残るもの、完全に判定が正しいものも混在している。

ミスジャッジが批判の対象になることはやむをえないが、判定が正しいにもかかわらず、あたかも審判がミスを犯したかのような論じ方をされるケースも少なからず見られる。

英語ではLaw of the Gameと言われるサッカーの競技規則。1863年にFA(イングランドサッカー協会)が取り入れて以降、年々改正されているこのルールに目を通したことのある人はどれほどいるだろうか。

もちろん審判員であったり、熱心なファン、プレーヤーは読んだことがあるかもしれないが、多くの競技者・観戦者は、競技規則そのものを読むという機会がほとんどないだろう。

だがそれにもかかわらず、観戦やプレーの経験があることで競技規則を理解した気になってしまってはいないだろうか。一昨年サッカー史上もっとも大きな競技規則の改正があったが、そんな時期であるからこそ、そもそも競技規則とはどのようなものなのかについて目を向けてみたい。

サッカーの競技規則とは誰が決めているのか。1848年に明文化されたケンブリッジルールを、FAが修正採用したのがその15年後である1863年。その後国際試合(といっても英国内であるが)を開催するためにFAがスコットランド、アイルランド、ウェールズの4協会を招き、統一ルールを設けることに。そして1886年にこの4協会によって設立されたのがIFAB(International Football Association Board:国際サッカー評議会)。現在にいたるまで競技規則改正の権利を持った唯一の機関である。

規則改正の提案はJFAも可能

このIFABより遅れて1904年に誕生したFIFA(国際サッカー連盟)は、このIFABによる競技規則を採用したが、IFABのメンバーに加わったのは1913年のこと。英国4協会(現在はアイルランドではなく北アイルランドが入っている)がそれぞれ投票権を1票ずつ持っているなかで、FIFAが持っている投票権も1票であった。

日本サッカー協会(JFA)審判委員会の小川佳実審判委員長はIFAB、FIFA、各国サッカー協会、競技規則の関係について次のように説明してくれた。

「国際サッカー評議会は1886年に英国4協会でできました。これがスタートラインでFIFAは1913年にIFABに加わった。FIFAにIFABが入ったのではなくて、IFABにFIFAが入ったんです。

英国4協会とFIFAで競技規則を決めましょうということになったんですが、昔はFIFAにも1票の権限しかなかった。各協会も1票ずつ持っていて、計5票。そのうち3票取れば、競技規則を変えましょう。そうでなければ変えませんということでした。

それが今はFIFAが4票も持っている。英国4協会が各1票持っていて、計8票。このうち6票取れば変わるということになってきているんですよ。FIFAの力が強まっているんです。そういう状況ですが、改正の提案は日本サッカー協会も含め、色々な国ができるんですよ」

改正の提案はできるといっても、競技規則を変更する権限はJFAに与えられていない。トップレベルの試合はIFABで定められる規則にのっとらなければならない。ただし、ユース年代や年長者、グラスルーツのレベルで行われるサッカーについては、各国サッカー協会で弾力的に変更できることとなっている。

ユース年代で8人制サッカーはJFAの独自ルール

「ユースやグラスルーツでは、競技規則のある部分は修正してもいいんです。なぜかというと、国のレベルによってサッカーの発展の度合いが異なっていて、それぞれの国のサッカーにとって何が有益になのかは、各国サッカー協会が知っている。

だからサッカーの発展や普及に資するように、各国協会の責任のもと、競技規則をより弾力的に修正できるようになっている。一昨年までユースは16歳未満となっていて、年長者は35歳以上となっていました。ですが、今では具体的な年齢の表記はなく、ユース、年長者と表記されています。

サッカーに参加することや楽しむことを促進するために、特に子供たちのところ、シニアのところで多くの人たちがプレーしてもらう。交代要員がずっとベンチいるんじゃなくて、みんながフィールド上でサッカーすること、それを促進するために競技規則の修正はやっていいですよということになっているんです。

以前はIFABで16歳とか35歳とか決めていたんですけど、それは各国が判断しなさいとなっている。ただユースといっても、25歳をユースとは言わないですよね。このあたり、ユースというカテゴリーをどのようにしますかということは、僕らとしては技術委員会のほうに確認するようにしています」

たとえばJFAはユース年代で8人制サッカーという独自のルールを作っている。もちろんそれは修正可能な範囲内で行われていることであるが、そのように弾力的に競技規則が運用されるとはいっても、根本的な部分は変わらないのだという。

競技規則の理解でより建設的な議論が可能になるのではないか

その根本的な部分として小川委員長が語ったのが、「公平公正と高潔性」だ。これはいったいどのようなものなのか。

「競技規則がなぜあるのか。IFABが述べているのですが、それは競技の美しさにとって極めて重要な基盤であり、この公平、公正はサッカーという競技の精神なんだということです。

たとえばなぜハーフタイムで陣地が逆になるのか。以前Jリーグでもゴールデンゴール方式の延長戦があったじゃないですか。あれが打ち切られたのはなぜだか知っていますか?

延長戦に入って得点が決まったら終わりというのは、(同じ陣地で同じ時間プレーしていないということで)公平公正の観点からするとどうなのかということになり、最後までやりましょうということになりました」

昨今ではすでに競技規則に入っているGLT(ゴールラインテクノロジー)、現在試験運用中のVARs(ビデオアシスタントレフェリー)など、テクノロジーの導入について多くの議論がなされているが、これも「公平公正」の文脈においてなされているものなのだという。

ワールドカップやチャンピオンズリーグをはじめ、サッカーがプロスポーツ産業として高度にビジネス化したなかで、テクノロジーの導入などが叫ばれるのは自然なことかもしれない。ただし、ミスジャッジにしても、等しくそれによって不利益を被る、あるいは利益を得る可能性があるならば、それは公平と言えなくはないのではないか。

現在アトレティコ・マドリーの監督を務めているディエゴ・シメオネはこう言っている。

「審判のミスは損害だとは思う。彼らは人間だからミスをする。ただ、シーズンを通して見ればミスを被るのは全チームだ」

ミスジャッジが批判されることはしかたがない。ただし、競技規則について内容だけでなく原理的な部分も理解することによって、レフェリーの判定やサッカーそのものについて、より建設的な議論が可能になるのではないだろうか。

(取材・文:中山佑輔)

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