コロナ感染で「パニック」にならなかったシンガポールと日本の大違い

コロナ感染で「パニック」にならなかったシンガポールと日本の大違い

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/03/26
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パニック買い、その時「首相」が即動いた…!

依然としてグローバルで猛威をふるっている新型コロナウイルス(新型コロナ)は、アジアからアメリカ、さらにはイタリア、スペインなど欧州への感染拡大が広がっています。そうした中、いまシンガポールでの「コロナ対応」が成功事例として注目を集めています。

私はシンガポールで生活している者として、今回はそんなシンガポールのコロナ状況についてお届けしたいと思います。

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〔photo〕gettyimages

感染者の時系列の推移を見るとわかりますが、1月後半の新型コロナ感染拡大初期は日本よりシンガポールのほうが感染者数を多く出ていました。そして、2月7日にシンガポールでの感染拡大を受けて、保険省が警戒レベルを上から2つ目のオレンジまで引き上げたことで、シンガポール国民の一部がパニックとなって、マスクやトイレットペーパー、パスタなどを買い占める動きが広がり、かなりの店舗では棚からこれらの商品が消えました。

時を同じくして、実店舗での品切れを見た消費者がeコマースになだれ込み、アマゾンやアリババが出資しているレッドマートといったシンガポールの大手ショッピングサイトは宅配が1週間先まで予約で一杯になってしまい、新規購入の申し込みが一切できなくなってしまいました。

この際にすぐに行動したのがシンガポールのリー・シェンロン首相です。

約8分の動画をオレンジに警戒レベルを引き上げた翌8日にyoutubeにアップロードし、この中でシンガポール政府はSARSが感染拡大して被害を出した時の反省を生かして、医療体制は十分に対処できていることと、上記の買い占めが見られた商品について十分な在庫があるので、決してパニックになることがないように語りかけました。

この動画はアップロードから1ヵ月で約50万回も再生されています。

超迅速な「トップダウン」

これを裏付けるように、シンガポール政府が率先して大手スーパーやeコマース業者に働き掛け、パニック発生から1-2日で上記の買い占めが起きた商品を補充し、混乱は最小限に抑えられました。

また、マスクについても首相自らトップダウンのメッセージとして感染予防効果は乏しく、症状が出ている人のみ着用すべきというメッセージを繰り返し発信していました。

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シンガポールのリー・シェンロン首相〔photo〕gettyimaes

マスクがシンガポールで不足しているから上記のようなメッセージを発信しているのではないことを示すために、政府から各集合住宅には一定量のマスクが配布され、私がシンガポールで暮らしているコンドミニアムにも症状が出ている人のみ使用する原則で、数百枚のマスクが届けられました。

そのため、日本のように最もマスクを必要とする医療従事者に十分な量が行き渡らなくなることもなく、スムーズに医療サービスが継続できたとシンガポール政府は発表しています。

このようにトップダウンで効率的に新型コロナ対策がシンガポールで行われた理由として、経済効率を優先した特殊な形態の都市国家であることが寄与したことは間違いありません。

同時に2002年末から03年の夏にかけてアジアを中心に大流行したSARSの反省が活かされたことが大きく寄与したと見ています。

「オンライン」での凄い情報発信

SARSではシンガポールは33人もの死者を出しましたが、3月22日時点でシンガポール国籍の新型コロナによる死者は1名に留めています。

トップダウンのメッセージを積極的に発信しパニックを起こさないようにして、病院を訪れる人の数をコントロールし医療崩壊を防いで、重症者を優先的に対応して死者が出ないようにするというシンガポール政府の感染症対策はよく機能しています。

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〔photo〕gettyimages

トップダウンのメッセージだけでなく、国全体の感染状況がリアルタイムにオンラインで確認できるようになっていることも、混乱を防ぐことに大いに貢献しています。

シンガポールと並んで、SARSでの反省を活かして新型コロナへの効率的な対応が海外でも称賛されている国として台湾があります。IQ180とされ天才プログラマーでもあるデジタル担当大臣のオードリー・タン氏の活躍は、日本でも広く報道されているようですが、シンガポールでもオンラインを活用した情報発信は感染拡大当初から積極的に行われています。

保険省のサイトでは毎日新規感染者と退院者の数に加えて、各患者の年齢や性別などプロファイルに感染経路、感染した場所までアップデートされています。

もちろん、トップダウンの都市国家だからこそできるレベルの情報発信ですが、SNSで様々なうわさが飛び交うこのご時世において、混乱を防ぐことに大いに役立っています。

日本でも東京都のサイトでは、感染状況がオンラインのダッシュボードで一目で分かるようになっているのは、自治体の情報発信のあるべき姿だとシンガポールの現状を踏まえて感じています。

一番違うのは「日常生活の風景」

私は毎月のようにシンガポールと東京を行き来していますが、両国において感染が拡大する中で最も差異を感じるのが日常生活の風景です。

上記のように感染予防策としてのマスクの限界が繰り返し発信されていることで、シンガポールの街中でマスクを着けている人は1割以下しかいません。

一方、東京では2月後半から街ゆく人のほぼ全員がマスクを着用している一方、満員電車などで極めて高い人口密度が発生していることは、感染防止の観点から本末転倒にうつります。

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〔photo〕gettyimages

また、シンガポールでは手洗いをきちんとして、目を中心とした顔を不用意に触らなければ高齢者以外の感染リスクは低く、さらに感染しても重症化する割合は少ないことが強調されていて、上記のようなプロトコルを守り日常生活を変えずに営むように奨励されています。

もちろん、普段よりは観光客が少ない分、飲食店などの混み具合は緩和されていますが、繁華街がゴーストタウンのようになっている東京と比較すると、経済的なダメージも軽微に済みそうなことは一目瞭然です。

消費税アップにより19年10‐12月期のGDPが年率換算で前期比-7.1%となるなど景気後退が発生している日本経済ですが、ここに20年1-3月期は新型コロナによる自粛の影響が加わり壊滅的な経済指標が4月以降に次々と発表されてくるでしょう。

日本では3月22日時点で死者が37名と、先進主要国の中でも少ない人数にとどまっています。しかし、このまま、自粛ムードが続き不況が深刻化していけば、過去の景気後退時のデータを参照しても数千人もしくはそれ以上の経済的な自殺者が増えてしまう事態も十分に考えられます。

個人で出来る有効な感染対策を行いながらも、本格的な不況を招かない程度に日常生活における自粛をコントロールしていくという困難な舵取りを日本政府は今後迫られるでしょう。その際に、特に大都市部においてはシンガポールのこれまでの一連の新型コロナ対策が、感染対策としても情報発信のあり方としても、経済的な反動を招かない上で大いに参考になるでしょう。

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