65歳以下でも年金満額をもらうための「知られざる奥の手」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/08/18
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「働き方」を変えれば、年金は62歳でも請求できる

23歳の春から39年間、会社勤めをして働いてきた。新卒で入社した出版社に20年、その退職日の翌日に転職した出版社で19年。50代からは主に書籍の編集に携わってきたが、気がつくとすでに62歳。秋には63歳となる。

その間、会社の定年退職年齢は60歳から65歳に変更されていた。だが、思うところがあり、今年の2月いっぱいで会社を退職した。ひとことで言えば、「年金をもらいながら働く」道を選びたかったからだ。

年金は65歳にならないともらえないのでは――? と思われる方も多いだろう。収入がある程度あるうちは年金をもらえないのでは――? と感じている方もいるだろう。だが、会社員が加入している厚生年金保険に関しては、働き方を変えることで年金は62歳でも得られる。

「働き方を変える」とは、会社をやめることだ。具体的には、会社員という立場をやめさえすれば、厚生年金の受給権がある者は、たとえ1億円の年間収入があろうと年金を請求できる。皆さんはこのことを御存じだろうか。抜け道でも裏技でもなんでもなく、国がそう定めていたのである。

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毎月14万円の年金をカットされず、働きながら得たい

2017年秋の62歳の誕生日に、僕は年金の受給資格を得た。誕生日の3か月ほど前に、日本年金機構からA4大の封筒が届いた。その案内は「年金の請求手続きのご案内」であり、「62歳になると『特別支給の老齢厚生年金』を受け取る権利が発生します」とあった。

特別支給の老齢厚生年金とは、年金のいわゆる二階建て部分。会社員として厚生年金に加入してきた人や、公務員や教員として共済組合に加入してきた人だけが受け取れることのできる、いわば勤め人の特権だ。気持ち的にはまだまだ現役のつもりでいたが、国は僕を「老齢者」として扱ってくれている。まだまだ新参者だが、ここは素直に感謝したい。

さっそく年金機構のホームページで僕の年金記録を確認してみた。それによれば、僕が62歳から受け取ることができる年金額の年額は、170万円ほど。月にすると14万円強となる。しかし、会社にこのまま勤務しているとこの年金はもらえない。65歳となるまでは、ボーナスを含めた毎月の平均給与と年金額の合計が28万円を超える場合は、特別支給の老齢厚生年金は支払われないのである。

国から老齢者として認められながらも、残念ながら僕には28万円を超える給与があった。当然、このままでは1円の年金ももらえない。しかし、僕はこの14万円がとてもいとおしく感じた。

僕の年金記録によれば、厚生年金保険の加入期間は433か月間。働いてきた39年間のうち、正確には社員でなく業務委託者として働いていた時期が3年ほどあり、その間は厚生年金保険に加入していなかった。それでも通算36年間、厚生年金保険料を支払い続けた結果、得られた権利でもある。このまま消滅させてしまうのはなんとももったいない。

自営業になれば、老齢厚生年金も満額支給

先人たちによい方法はないか、と教えを請うた。

「どうしても年金をもらいたいのなら、会社の給与を下げてもらったらいい。実際、うちの会社では60歳以上の定年再雇用者は、在職中の老齢厚生年金がカットされない給与水準になっているからね」

と、すでに年金を得ている同級生の声。製造業の会社に勤務している。そのかわり、再雇用後の給料は、定年前までの3分の1ほどになり、ボーナスを含めた平均給与月額と年金額の合計が28万円以下になるという。

たしかにこの額なら年金を1円もカットされずに、年金をもらいながら働くことは可能である。この仕組みは、ボーナスを含めた平均給与月額が46万円以下の場合も可能だが、その場合は「年金月額ー(給与月額+年金月額)÷2」の複雑な計算式により、その多くが支給停止となる。仮に現在の僕が28万円の給与を得た場合、13万円以上が支給停止となり、先にふれた僕の老齢厚生年金月額14万円は、9500円ほどとなってしまう。これも正直言って避けたいところだ。

すると、ある特殊法人の職員OBから思わぬ知恵を授けられた。

「給与をもらうということは雇用されていることになる。雇用されている状態である限り、60歳以上でも厚生年金保険料は払わなければならないんだけど、裏を返せば、年金受給資格を得た段階で、厚生年金保険料を払わないですむ働き方をすればいい。雇用でない状態、つまり自営業とか、フリーランスで報酬を得る働き方をすれば、老齢厚生年金は1円もカットされずにもらえるよ」

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一瞬耳を疑ったが、どうやらこの厚生年金保険における収入制限は、雇用という働き方をしている者だけに適用される制度で、雇用されていなければそもそも対象外なのだという。

奥の手は、業務委託契約を交わすこと

特殊法人OBはそして、こう続けた。

「うちでは、年金を得られる年齢になると職員をやめて、業務委託契約を交わして仕事をする人がけっこういるよ。もちろん、適法。天下りの役人はよくやっています。給与と同じ支払額でも、雇用契約ではなく個々の仕事を請け負ってもらう形だから、業者と同じ。だから、老齢厚生年金もカットされないし、法人としてもメリットがある。厚生年金保険料の雇用者負担がなくなるからね」

一般に厚生年金保険料は、雇用する側と、雇用される者が折半してそれぞれを負担している。僕が会社をやめた場合には、会社も僕の厚生年金保険料を支払う必要がない。

僕の場合では、会社員であることやめ、自営業で働けば、その翌日から年金が請求できるのである。幸い書籍の編集者などという仕事は、会社員でなくてもできる。実際、世の中には書籍の仕事を請け負うフリーの編集者がたくさんいる。僕は躊躇なく会社を辞めることにした。

お世話になってきた会社には、ここまでのことを包み隠さずに相談した。意外だったのは、そういう前例があるということ。この働き方、実は知る人ぞ知る、60歳からの働き方のようである。幸い、会社は前例にもあった業務委託契約を締結してくれた。だから、ある程度、安定した状態で仕事が継続できることになった。

初めての年金は手取、手取り39万円

会社を2月末で退社した僕は、3月に特別支給の老齢厚生年金の請求手続きを行い、4月26日、晴れて厚生労働大臣からの通知書をいただいた。
「国民年金法による年金給付・厚生年金保険法による保険給付を行うことを決定したことを証します」

初めての年金支給日は6月15日。3月~5月までの3か月分で、所得税3万3111円が控除された、39万304円が振り込まれていた。以降は偶数月に2か月分の年金額が支払われることになった。

それにしても、年金制度は複雑である。とくに、60歳で年金が支給されていた時代から、支給年齢が原則65歳と繰り下げられて以降の仕組みはより複雑化している。一例を挙げれば、平成37年までは、移行措置として年金開始年齢が男女別に生まれた年により、覚えられないほど細かく定められている。

僕のケースである「昭和30年4月2日~昭和32年4月1日に生まれた男性」は、62歳の誕生日から受給資格が得られる。つまり、収入条件や、会社をやめることで年金がもらえることになる。だが、同じ生年月日でも、女性の場合は60歳から得られるという不思議さだ。

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さらに、僕の次の世代では「昭和32年4月2日~昭和34年4月1日に生まれた男性」は、63歳の誕生日から受給資格が得られる。微妙に受給年齢を後ろ倒しにし、最終的に65歳が一律の受給年齢となる仕組みだ。

年金に頼るなという、国の鬼のような本音

この年金制度改革は、国の働き方改革とセットで動いてきた。世の中ではまだまだ60歳定年制の会社も多いが、国は平成25年4月に、65歳までの雇用継続を義務付けた。「高齢者雇用安定法」というありがたい法律のおかげである。

会社勤めの人間にとって、65歳までは堂々と働ける世の中になった。完全実施は平成37年度で、その間は段階的な年齢移行とはなるが、視点を変えると、この法律、とてもありがたくないものに思えてくる。

つまり、
①60歳を過ぎても、働けるうちは年金に頼らずに働きなさい。
②60歳を過ぎても、雇用されている間は厚生年金保険料を払いなさい。
③雇用する会社もできるだけ長く高齢者を雇用し、厚生年金保険料を折半で支払いなさい。
――ありがたいどころか、国の本音は、年金原資を確保するための、鬼のような働き方を方向づけているのである。

60歳を過ぎたら、制度を逆手にとった働き方改革を

実際、僕は60歳を過ぎて、会社で社員の立場で働き続けることには違和感を持つ。人間60歳を過ぎる頃になると、記憶力も判断力も低下し、いっぽうで頑迷度だけは深まる。会社員という組織人として働くことには、もはや向いていないお年頃と感じてきた。むしろ、得意な分野だけに特化する、業務委託者という働き方こそが高齢者にはふさわしいとさえ思う。

これまでの会社員時代の給料に比べると収入は半分ほどに下がったが、会社以外の仕事もできるし、頑張れば年金を満額もらいながら収入だって増やせる。だから、まったく後悔していない。

そのいっぽうで、世の中へに対しての疑り深さも相当強くなってきた。今回の退社にいたるまでの一連の手続きでは、初めて知るような制度が山ほどあり、驚きの連続だった。納得できるものもあれば、こんな仕組み、誰が考えたのかという仰天の制度にも遭遇した。その結果、年金機構も含め、相当なバトルを繰り返してきた。

勝手な言い方を許していただければ、年金受給資格を得た者は、定められた制度を逆手にとって行動するくらいが正しい道と思っている。今年4月、財務大臣の諮問機関「財政制度等審議会」では、年金の支給開始を68歳に後ろ倒ししようという提言も行ったそうだ。

平均寿命が今後さらに延びるなかで、年金の財源を維持するため、国はあの手この手を考えてくるだろう。ならば皆が会社員という立場を捨てて対抗するのもこれからの選択肢である。これこそが、60歳を過ぎてからの真の働き方改革と信じている。

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