「26歳」を狙え、世代交代に奔走する米企業

「26歳」を狙え、世代交代に奔走する米企業

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/10/11
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植物は日光が当たる場所に植えましょうーー。園芸用品メーカーの米スコッツ・ミラクル・グローが新たな住宅購入者向けに提供する園芸レッスンは、基礎中の基礎の内容から始まる。

「15年から20年前までなら、ここまでシンプルな内容を教えることはなく、教える必要があるとは思いもしなかった」

同社の業務部門でシニア・バイスプレジデントを務めるジム・キング氏は話す。「しかし、この世代は裏庭の家庭菜園で親と一緒に土を触ったりせずに育ったのだろう」

ドイツ銀行のチーフ国際エコノミスト、トルステン・スロック氏によれば、現在の米国で最も人口が多い年齢群は26歳で、その数は480万人に上る。これに25歳、27歳、24歳が僅差で続く。こうした世代は、仕事を選んだり、住宅を購入して家庭を持ったりするなど、生涯で最も大切な時期を迎えている。

https://asset.wsj.net/dynamic-insets/ai2dynamic/1507053950550.json

この世代に商機を見いだそうとする企業は、同時に問題にも直面する。子供時代から忙しいスケジュールをこなし、テクノロジーに依存した生活を送り、大人になるのが遅い彼らは、これまでの世代とは全く違う考え方をするからだ。あまりに特異なため、企業は全く新しい商品を開発したり、マーケティング戦略を全面的に見直したり、教育プログラムを提供するなどして「26歳」を取り込もうと試行錯誤している。

「彼らはサッカーをしてダンスの発表会もやり、Xボックスで遊んで成長してきた」とスコットのキング氏は話す。「親世代やそのさらに前の世代と比較しても、庭で父親や母親の手伝いをする時間は限られていたのだろう」

スコッツのほか、ホームデポやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、家庭用品小売大手ウィリアムズ・ソノマ傘下のウェスト・エルムや塗料メーカーのシャーウィン・ウィリアムズも、庭の芝生の手入れや床の拭き掃除、さらにはハンマーでくぎを打つ方法など基礎を教える体験教室やオンライン講座を準備している。

ミレニアル世代はベビーブーマー世代に取って代わり、米国で最大の人口層となった。この世代はベビーブーマーがそうだったように、ポップカルチャーや小売業、メディア、そしてライフスタイルにまで影響を及ぼし始めている。米不動産情報サイトのジローによれば全住宅購入者の42%はミレニアル世代で、初回住宅購入者に限定すればその割合は71%に上る。

米国勢調査局によれば、ミレニアル世代(1980~2000年生まれ)の人口は9300万人。ベビーブーマー世代(1964~1964年生まれ)はピーク時に7880万人いたが、今は7400万人だ。

https://asset.wsj.net/dynamic-insets/ai2dynamic/1507053871575.json

最近ニューヨーク市のハーレム地区でアパートを借りたニック・ブルーノさん(26)は、新居の洋服ダンスの組み立てを父親に手伝ってもらった。引っ越す前の1年間は貯金のため実家で暮らしていたという。

営業職として働くブルーノさんは、新生活に向けてダイニングテーブルや椅子、テレビ台などをそろえた。掃除用には実家で使っていたモップとバケツではなく、P&G製の「スウィッファー」(拭き取り部分と洗剤が一体になったモップ型製品)を購入した。

P&Gはミレニアル世代が好むのは必要な時だけ掃除する「メンテナンス・クリーニング」だと分析し、「さっと使える」点を強調した製品を売り込んでいる。「若い世代は比較的時間に追われており、本格的な大掃除はやらない傾向がある」と同社清掃用品部門のブランディングを担当するケビン・ウェンゼル氏は話す。

また同社の調査によれば、ミレニアル世代の44%が向こう1年以内に引っ越す予定がある。ウェンゼル氏は、引っ越し後の数週間こそ新たな商品を試す傾向が最も強い時期だと指摘。P&Gでは、引っ越したばかりの約400万人の消費者にクーポンやサンプル製品を送るプログラムも立ち上げている。

米小売業大手JCペニーは、エアコンの修理や配水工事、バスルームの改装といったサービスに進出。同社エグゼクティブ・バイスプレジデントのジョー・マクファーランド氏は、ミレニアル世代は「自分でやるタイプではなく、誰かに作業してもらいたいタイプの消費者だ」とし、「はしごや電動ドリルも不要で、窓の枠を正確に計ったかどうかも考える必要がない」サービスを提供していると話す。

ウェスト・エルムは129ドル(約1万4500円)から申し込めるサービスパッケージを提供し、配水や電気工事、ペンキ塗りのほか、テレビの設定や壁にアートや鏡をかける作業を代理で行っている。

ホームデポの幹部らは、若い顧客がメンテナンス作業を習得できるよう、店舗を学びの場にしていきたいと考えている。初めて住宅を購入する人の購買機会をとらえて長期的に店を訪れてもらえれば、企業にとって「多額の」売上高につながると同社エグゼクティブ・バイスプレジデントのテッド・デッカー氏は話す。

ナデラ・アルグーさん(25)は、シーリングファンの設置方法を学ぶため、マンハッタンにあるホームデポの店舗を訪れた。高校で化学の教師を務め、日頃はブルックリンにある実家で暮らしているが、いずれ一人暮らしを始める時のために修理方法は学んでおきたかったと話す。工事を依頼すれば「簡単に高額を請求される」だけでなく、「やり方を分かっている方がクールだから」だ。

ベビーブーマー世代も成長に伴って消費者製品業界を変えた。1960年代にはおむつの売り上げが伸び、1980年代には「パワースーツ」(キャリアや能力をアピールする服装)が人気になり、2000年代には高級車や高級ハンドバッグが売れた。独立精神旺盛で自由を謳歌(おうか)するベビーブーマーたちの需要に応えるよう、企業は製品とサービスを提供し続けてきた。

https://asset.wsj.net/dynamic-insets/ai2dynamic/1507053920756.json

しかし、ミレニアル世代はベビーブーマー世代とは違う。特に自立するまでの過程が大きく異なる。米国勢調査局は人生の節目として、実家を離れて暮らす、結婚する、子供を産み育てる、労働人口に加わる、の4つの項目を挙げている。2016年の調査では、25~34歳のうち同4項目をすべて満たした人の割合は24%だった。1975年の調査では、その割合は45%に達していた。

国勢調査局はリポートで「現代の若い成人はこれまでの世代と比較し、あらゆる面で異なるように見える」と指摘している。

JCペニーは昨年、ミレニアル世代を獲得しようと33年ぶりに家電事業に再参入した。今では最も好調な部門の1つだ。当初は899~999ドルの冷蔵庫が最も多く売れると予測していたが、実際にはステンレス素材のモデルなど1599~1799ドルが売れ筋となった。「ビギナーのミレニアル世代は、これでキッチンのリフォームを済ませている」と同社のマクファーランド氏は話す。

スコッツのキング氏によると、ミレニアル世代は親世代とは違い、大きな花や見栄えする芝生を育てることに関心はない。その代わりガーデニングから何かを得たいと考えており、同社もそこに着目したアプローチをとっているという。

同社は昨年、ハーブや野菜を手掛けるボニー・プランツの株式を取得した。ミレニアル世代の間では食べられる植物の売り上げが最も好調だったためだ。食材になる植物を育てているミレニアル世代の家庭は、2011年から2015年にかけて400万世帯も増えた。これは同期間のその他の年齢層すべての増加分に匹敵する。

ミレニアル世代は商品の成分を気にする傾向も見せる。そのためスコッツでは肥料からリンを取り除き、ミツバチを減少させているネオニコチノイドを殺虫剤に使用しなくなったという。

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