なぜ横浜FMは「2点目が取れない」のか? ついに降格圏転落、脆さ抱える新スタイルの課題

なぜ横浜FMは「2点目が取れない」のか? ついに降格圏転落、脆さ抱える新スタイルの課題

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  • 更新日:2018/04/17
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横浜F・マリノスは現在リーグ線3試合勝利なし。順位表でも降格圏内の16位まで落ちてしまった【写真:Getty Images for DAZN】

敵将は「負け試合」と認めたが…

明治安田生命J1リーグも約4分の1となる8試合が終了した。過密日程が続く中、順位表には異変が見られる。優勝経験を持つ名門クラブが下位に沈んでいるのである。横浜F・マリノスもその一つ。アンジェ・ポステコグルー監督の指導で攻撃的なスタイルへの大転換に挑むチームが抱える課題とはいかなるものなのだろうか。(取材・文:舩木渉)

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15日に控えるJ1第8節のヴィッセル神戸戦に向けて、チームから「絶対に勝たなければいけない」という雰囲気が漂っていた。この試合を2戦勝ちなしで迎えた横浜F・マリノスは、もし神戸戦に敗れれば降格圏へ突入するの可能性もある状態にあった。

結果的にマリノスは8節終了時点で降格圏の16位に転落した。神戸の吉田孝行監督も試合後の記者会見で「完全に負け試合だったと思います」と認めるほど圧倒しながら、1-2で敗れた。

この敗戦において最も分かりやすい改善点は「2点目が取れない」ということだろう。今季のマリノスはリーグ戦8試合を終えて複数得点が一度もない。神戸戦も先制点を奪いながら、あっさりと逆転を許してしまった。前節のサンフレッチェ広島戦も同様の展開で敗れていたのは記憶に新しい。

アンジェ・ポステコグルー監督が標榜する「攻守に圧倒するサッカー」を徐々に表現できるようになりつつある中、シーズン開幕当初から「2点目、3点目をいかに奪うか」という大きなテーマが重しとなって動かない。

試合の流れを完全に支配し、毎試合のように対戦相手に「あれほどやられるとは…」という強烈な印象を刻みながらも、結果だけがついてこない。指揮官も「自分たちのサッカーの中で、一つだけ解決策を見い出せていないのがフィニッシュの部分」と珍しく本音が出た。

左サイドバックとしてマリノスのキーマンの1人となっている山中亮輔も「やっぱり(ゴールを)取る時に取らないとこういう展開になる。サッカーの難しさみたいなものを痛感させられた」と神戸戦の逆転負けを悔やんだ。

やはり「今日に関しては絶対に勝たなきゃいけなかった」と山中は語ったが、「やっている選手としても完全に自分たちのゲームだったと思う」だけに、先制点の後に畳み掛けられなかったことが最も大きな敗因と言えるゲームだった。

複数得点が奪えない。失点が止まらない

攻撃面では圧倒的なまでのボールポゼッションで試合の展開を支配できているだけに、ゴールを奪えないところ以外ではポジティブな要素が大きく見える。だが、見逃していないだろうか。現時点で勝利したリーグ戦2試合はいずれも完封ゲームで(複数得点できていないので当たり前だが)、結果が出ていない試合は失点しているのである。

そして、その失点の数が例年に比べて多くなっている。エリク・モンバエルツ前体制下での3年間、8節終了時点での失点数は2015年が「9」、2016年が「8」、2017年は「9」だった。一方、今季は8節終了時点で「11」もの失点を喫している。

マリノスのイメージといえば「堅守」だったが、今季はチームに大きな変化を加えたことでその持ち味が薄れてしまっている。中澤佑二曰く「1点を取ることに対して体力と集中力を使うサッカー」の中で「あっさり点を取られちゃうと、チームとしてのテンションがガタッと落ちちゃう」という脆さが同居している。

チーム全体を攻撃的に押し上げてボールを握り続けることで、ゴールに向かうリスクを冒しつつ同時にゴールを奪われるリスクを抑えるのがポステコグルー監督の考え方。ただ常に失点のリスクをゼロにすることは難しく、一瞬の隙を狙われることもしばしばある。

それが神戸戦でスコアボードに刻まれた。マリノスの先制点から約10分後、ほんの一瞬フワッと集中が切れたような瞬間を目撃した。それが三田啓貴の同点ゴールにつながった。終盤の79分には中盤でボールを失ったところから、前がかりになったサイドの背後のスペースを効果的に使われ、電光石火のカウンターで渡邉千真に逆転ゴールを奪われた。

残された時間は10分とアディショナルタイムのみ。すでに運動量が落ち始めていたマリノスには明らかに焦りが見られ、らしくないイージーミスを連発した。連戦の影響で体力面も厳しく、終盤は効果的な攻撃を見せることができなかった。

ディフェンスラインの背後に大きなスペースを作って攻める以上、ある程度カウンターを食らうリスクは覚悟しなければならない。指揮官もその点は承知しているし、相手も当然研究した上でそのスペースを突いてくる。そういったことを踏まえたうえで、もう少しボールを奪われた際の守備への切り替えにおけるアプローチを工夫し、バランスを整えなければならないだろう。

苦境を脱するために今、必要なこと

とはいえポステコグルー監督に「1点を守りきる」という考えはない。これはシーズン開幕前から一貫している。だからこそ「2点目を奪う」ことが、現時点で最も重要なミッションに違いない。

相手ゴール前に入る回数を増やすため、中盤の選手の動き方やスペースの突き方は徐々に変化してきた。神戸戦では天野純やダビド・バブンスキーが、ウィングをマークする相手サイドバックとFWをケアするセンターバックの間のスペースを積極的に狙って、守備を揺さぶろうとしていた。前半は特に効果が出ていて、ゴールにはならなかったものの、数的優位な局面を作り続け、チーム全体で決めなければいけないチャンスは少なくとも4つあった。

「あれだけチャンスを作れたのはポジティブなこと。僕自身はこのままやり続ければ絶対に間違いないと思います。逆にカウンターサッカーでこの順位だったら間違いなく危ないと思いますけど、あれだけ相手を圧倒できている中でのこの順位なら、焦りはまだないですね」

天野は攻撃面の進歩に手応えを感じている。先制した後も同じテンポで攻め続けるため、逆に少しペースダウンして相手を焦らせながら追加点を狙った方がいいのでは…とヒヤヒヤする場面もあるが、複数得点を挙げるには、とにかく折れずに自分たちの意図するプレーを見せ続けなければならない。

もう一つ意識すべきなのは、相手の立ち位置を動かすボールポゼッションだろうか。Jリーグ公式サイトに公開されているトラッキングデータを参照すると、神戸の最終ラインで走行距離が10kmを超えていたのは右サイドバックの高橋峻希のみ。翻ってマリノスは4バック全員が10km以上走っていた。

また、スプリント回数にも差が出ている。マリノスの4バックは全員が11回以上を記録しており、最多は山中の28回。一方、神戸は両サイドバックこそ19回ずつのスプリントを記録したが、センターバックの渡部博文とチョン・ウヨンはそれぞれ8回と3回だった。

マリノスのボールポゼッションは見た目には派手だが、実際に相手ディフェンスを揺さぶるまでには至っていない。相手のセンターバックの運動量が少なくなる傾向は前節のサンフレッチェ広島戦も、その前の川崎フロンターレ戦でも見られた。今後は試合の中でテンポを変えながら、相手ディフェンスが「おっと危ない」と感じて慌ててゴール前でポジションをズラさなければいけない状況を作るような工夫も必要だろう。そうやって不意に生まれたわずかなスペースが組織の綻びとなり、ゴールにつながる。

16位に落ちたことで、チーム内の危機感はこれまで以上に強くなっているはず。18日のYBCルヴァンカップのFC東京戦、そして21日のJ1第9節湘南ベルマーレ戦は、ポステコグルー監督率いるマリノスが迎える最初の大きな山になる。この2試合が今季マリノスを占う上で重要な試金石だ。

(取材・文:舩木渉)

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