「違い」を見せたエデン・アザール メキシコ戦で見たベルギーの強力な攻撃陣

  • J SPORTS
  • 更新日:2017/11/12

日本代表の遠征に合わせてヨーロッパを訪れている。遠征初戦のブラジル戦(フランス北部のリール)は、何もできずに完敗に終わった(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「後半は満足できた」と言うが、それは、後半に入ってブラジルが完全にプレーを止めてしまったからにほかならない)。

日本は、序盤から中盤で積極的にプレスをかけようとしたものの、ブラジルはわざとパスを回して日本のMFに食い付かせておいて逆サイドに展開したり、狙ったタイミングでボールを奪うことで一気に人数をかけたカウンターを展開したりしてくる。そして、失点を重ねるごとに日本の選手たちは意気消沈し、プレスをかけることもできず、ボールを奪ってもそのボールを持ち出す推進力も失ってしまった。

その、ブラジル戦の後、リールからブリュッセルに移動して(というか、ブリュッセルに泊まっているので「戻って」)、ベルギー対メキシコという親善試合を観戦した。リールからブリュッセルまでは高速鉄道(TGV)に乗れば約30分の距離である。

試合は、ベルギーが先行するとメキシコが追いつき、さらに逆転。そして、最後にベルギーが追いつくという展開で3対3のハデな引き分けだった。失点すると気持ちを失っていった日本の選手と対照的に、メキシコは失点する度に強烈な反発心を見せた。ベルギーもメキシコも、どちらもしっかりパスを回すスタイルのチームではあるものの、中盤でのチェックの激しさは日本代表をはるかに上回った。

ベルギー代表は、今ではFIFAランキングでも世界のトップクラスであり、また今回のワールドカップ予選でもいち早く「突破」を決めた強豪だ。ただし、代表クラスの選手は次々と国外のクラブに流出。メキシコ戦の登録23人のリストにもアンデルレヒトの選手が1人いるだけで、あとはすべて国外組だった(代表選手のほとんどが国外に流出しているだけに代表人気が高いといったあたりは日本と状況が似ているのかもしれない)。

中でも、中心的な選手はほとんどがイングランドのプレミアリーグでプレーしている選手ばかりだ。それも、プレミアのトップクラスのクラブでのバリバリのレギュラーである(ブラジル代表の場合は、さらに上。チャンピオンズリーグ優勝を狙うクラスのクラブのレギュラー格ばかりだったが)。そんな中でも、何といっても中心はエデン・アザール。チェルシーでのプレー以上に、代表ではまさに中心選手。「いくら何でも、アザールに集めすぎじゃないか?」と思って見ていたのだが、そこで「違い」を作りだしてしまうのだから恐れ入る。そこに絡むのがロメル・ルカク(マンチェスター・ユナイテッド)であったり、ケビン・デブライネ(マンチェスター・シティ)なのだ。

しかも、デブライネは試合前から45分だけというプランだったということで交代を使ってくるのだが、そこで加わるのがムサ・デンベレ(トッテナム)だったり、ドリース・メルテンス(ナポリ)だったりするのだから、攻撃力は世界最強クラスといって間違いない(デンベレも、メルテンスも後半だけでもアザールに劣らぬ素晴らしいプレーを見せた)。

ただ、守備陣にはけが人が続出。試合前から「守備の不安」が取りざたされていたが、スリーバックで守るベルギーは、「新しいシステムのテスト」ということもあって3失点。もっとも、メキシコの2点目、3点目はPSVアイントホーフェン所属の若手、イルビン・ロサーノの強烈なミドルシュートによる止めようのない失点だったので、守備陣の問題ではないかもしれない。3点目はミドルシュートをGKのクルトワ(チェルシー)が弾いたボールをそのままボレーで決めたもの。2点目が56分、3点目が60分だったから、ロサーノは4分間に3本の強烈なシュートを枠内に放ったことになる。

ただ、ベルギーにとって、ワールドカップ本大会までの最大の課題が守備の構築ということになるのは間違いない。それができれば、上位進出が期待できるはずだ。実際、この試合も数々の戦術的テストを行っていたようで、ロベルト・マルティネス監督の手腕に期待したい。日本体表は、そのベルギーと4日後に戦うわけだが、果たして不安を抱えるベルギーの守備を何回崩せるかに注目したい。

それにしても、ベルギーという国はサッカーの伝統の長い深い国だけに、代表の試合が行われるボードワン国王スタジアム(かつての、「ヘイゼル・スタジアム」)にしても、その他の小さなスタジアムにしても雰囲気は良い。さらに、余計な話であるが、ヨーロッパでは僕たち報道陣にも軽食が振る舞われるのが習慣だが、ボードワン国王スタジアムの食事は本当においしい。

サッカーというスポーツは1863年にそれまで各学校、各クラブでバラバラだったルールを統一しようと言うことで協会(フットボール・アソシエーション=FA)が作られたのが起源で、その後スコットランド、ウェールズ、アイルランドにも協会が作られてサッカーは英国内に広まって行ったのだが、ヨーロッパ大陸で最も早い時期に「サッカー」が盛んになったのがベルギーや北フランスだった。

ベルギーという国は北部のオランダ語を話すフランデレン(英語でフランダース、フランス語でフランドル=フランス領になっているリールもその一部)と南部のフランス語を話すワロンの2つの地域に分かれているが(他にドイツ語圏も存在)、ワロン地域は石炭を産出したこともあって、19世紀には先進工業地帯だったのだ。「英国以外で初めて『産業革命』を経験したのがベルギーだった」とも言われている。そして、上流階級の娯楽として始まったサッカーというスポーツは、イングランド北部やスコットランドの工業地帯の労働者の間で人気を得て瞬く間に発展していったのだが、ベルギーの工業地帯もその例外ではなかったのである。

ベルギーは、今では工業力、経済力ではかつてのような繁栄を失っているが、そんな中でも「サッカーの伝統」は今でも生きている。人口1000万人程度の小国がこれだけ強い代表チームを作れるのも、その「伝統の力」にほかならない。

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