硝子の少年:人間関係とは、格差。「5点」と烙印を押された男は、美しき悪女の奴隷となる

硝子の少年:人間関係とは、格差。「5点」と烙印を押された男は、美しき悪女の奴隷となる

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  • 更新日:2016/12/01

男なら誰にでも、忘れられない女がいる。

美しく、強く、狡猾な女、「エリカ」。

潤にとって忘れられない女は、彼女以外の誰でもない。

フリーライターとして地味な仕事をする潤と、その美貌ゆえに、煌びやかな生活を送るエリカ。彼女に強い想いを寄せる潤だが、当然ながら、まるで相手にされない。

彼女が狙うのは、自分の価値をさらに高められるような、ハイステータスの金持ちばかりだった。

にもかかわらず、潤は、どうして「高嶺の花」であるエリカを追い続けてしまうのか?

二人の出会いは学生時代。卒業前、潤はエリカに深く傷つけられたが、社会人になり...?

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社会人になり、益々美しく成長し、派手な私生活を送るエリカ

「彼、少し前に、私と別れたばっかりなのよ!」

エリカは、半ば感情的に叫んだ。大きな瞳は、見る見るうちに潤んでいく。

「彼」というのは、有名な歌舞伎俳優のことだ。もちろんテレビでしか見たことはないが、男の僕から見ても、かなり魅力的な俳優だ。

「それなのに、急に結婚するだなんて......。しかも、相手は真紀子よ?ひどいと思わない?」

―歌舞伎俳優が、一般人女性と電撃婚―

このゴシップも、朝からテレビで大ニュースになっていた。

エリカの元恋人である歌舞伎俳優は、交際3ヵ月で、真紀子という女との結婚を決めたらしい。

彼女はエリカの遊び友達でもある、元有名読者モデルとのことだった。

変わらず派手な生活を送るエリカ。一方、潤は...?

人間関係とは、格差である。美しきエリカには、到底敵わない

僕たちは、もう社会人3年目になる。

そしてエリカの私生活は、益々派手になっていた。なんせ、歌舞伎俳優と付き合いがあるほどだ。彼女は大人の魅力を身に付け始め、会うたびにどんどん美しく成長していく。

しかし、僕と彼女の関係だけは、学生時代と少しも変わっていない。

エリカは大学卒業後、外資系ラグジュアリーブランドのPR職に就いた。華やかで社交的、そして強気な彼女には、ピッタリの職種だ。

一方で僕は、就職はせずにフリーランスのライターとなった。

昔から物を書くのが好きで、本当は出版社を志望していた。しかし情けないことに、就職活動に失敗し、なんと志望企業すべて全滅してしまったのだ。

幸い、学生時代からアルバイトをしていた男性ファッション誌の編集長が、経験のある僕にいくつか企画を投げてくれ、助け舟を出してくれた。よって、迷った挙句、フリーの道を選んだのだ。

「フリーでも何でもいいから、どうせなら、ちゃんと力のあるライターになってよね。潤には、私の仕事のPRもお願いしたいんだから」

大学卒業時にエリカが放った一言は、就活に失敗した僕にとって、一筋の希望の光となった。

―フリーとは言え、この業界でのし上がれば、僕はエリカと繋がっていられる。エリカと対等に仕事ができるかも知れない―

幾度となく傷つけられても、僕は、いつまでも彼女の奴隷だった。

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高校のときは恋人がいたことがあるし、それ以降も、何人かの女の子と関係を持った。でも、異性と接するのは、基本的に昔から苦手だった。

女の子に興味がないわけではないが(むしろ大いにある)、僕は凡庸な中間層の男で、目立つグループに属したことも、もちろんモテたこともない。

そんな僕に、誰もが振り向くレベルの美女であるエリカが、なぜだか個人的に連絡をくれる。少しくらい傷つけられたところで、僕のような男が、どうやって彼女と離れることが出来るだろう?

所詮、人間関係とは、格差なのだ。

日々美しさを増していくエリカは完全に勝者であり、到底敵わない。僕は、ただその事実を受け入れていた。

社会人になってから、仕事と名のつくものは、とにかく何でも、がむしゃらに引き受けた。

ファッション誌の仕事はもちろん、旅行の体験記事から、1記事2千円のWeb媒体の美容記事まで。大手の仕事でキャリアになりそうなものは、無償で受けたことも何度もある。

僕のような地味な男には、真面目にコツコツと塵を積み上げて行くしか、道はないのだ。

そんな仕事への姿勢が評価されてか、僕はクライアントから、それなりの定評と信用を得ている。

フリーランスとしては今のところ生活には困っていないし、正社員の誘いを受けたことも何度かあった。三軒茶屋の駅近のマンションでの1人暮らしも、悪くはない。

とにかく少しずつでもキャリアアップして、僕はエリカへの距離を縮めたい一心だった。

すべては「エリカ」のために。しかし、彼女の評価は...?

「あんたの価値なんて、5点。」男の胸を切り裂く、美女の酷評

そうして今日も、僕はエリカの仕事場近くの『Urth Caffe』に呼び出され、彼女の近況に耳を傾けている。

「彼、歌舞伎の仕事は今が頑張りどきで忙しいって言うから、私はぐっと堪えて身を引いたの。なのに、真紀子と結婚するなんて......」

昼時の表参道は、なかなか混み合っている。

エリカは公衆の面前で臆面なく泣き顔になるが、彼女は周囲の目というものが、昔から全く気にならないのだ。オロオロと焦るのは、いつも僕の役目だ。

それにしても、美しい女というのは、涙まで美しく出来ている。

感情的に涙を流すエリカの姿は何度も見てきたが、僕はその度に、芸術的な泣き顔に魅了された。

「デキる女優ほど、涙の流し方が美しい」

どこかの編集長がそんなことを言っていたが、エリカの涙は、どんな有名女優にも引けを取らないはずだ。僕は、涙に濡れた彼女の瞳を眺めるだけでも、きっと丸一日は余裕で時間を潰せるだろう。

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「ねぇ、潤はどう思う?真紀子の方が、私よりいい女なの?もしかして、真紀子の方が、可愛い...?」

エリカは縋るように僕の腕を掴み、是が非を問う。

こうやってエリカに問われるたび、僕は白雪姫に出てくる魔法の鏡になったような気分になる。

―鏡よ鏡、世界で一番美しいのは、だぁれ?―

「エリカの方が、断然可愛いに決まってるよ。一番だよ。読者モデルなんて、きっと汚い手を使ったんだよ」

そう言うと、彼女はニコッと満足そうな笑顔を見せ、やっとパンケーキを頬張ったので安心した。

僕の答えは、あの童話の鏡よりも、ずっと忠実だ。他の女の名前など、絶対に出さない。永遠にエリカが一番だと答え続けるのだ。

「その辺のタレントや女優より、エリカの方がずっと可愛いよ。本当だよ」

エリカは涙を止め、俯き加減で微笑む。「そんなことないけど...」と、珍しく恐縮する彼女は、とにかく愛らしかった。だから、僕はつい調子に乗ってしまったのだ。

「本当に、日本一可愛いよ。僕だって、もう何年もエリカに夢中なんだから」

そう口にした瞬間に言い過ぎたと後悔したが、遅かった。エリカはピクッと反応し、徐々に顔を歪めた。

「......やだ。何それ、どういう意味...?」

彼女の前で、僕は男としての下心を見せることは許されていない。それは、暗黙のルールのようなものだった。

「いや、何でもない......。ごめん...」

「ねぇ、分かってるよね?私とあんたは、ただの友達。あんたの男としての価値なんて、5点くらいなんだからね?変なことは、絶対に言わないで」

先ほどの泣き顔とは正反対に、エリカは冷酷な表情を見せる。さらに、傷ついた僕を嘲笑うかのように、薄ら笑いすら浮かべていた。

―男としての価値は、5点―

僕は、またしてもエリカに踏み込み、性懲りもなく、深い傷を負ってしまった。

しかし、この「5点」という酷評は、僕の人生を大きく変えることとなる。

次週12月1日(木)更新
「5点」の評価が、男の人生を変える。そして、潤はエリカを追い続けるのに疲れ...?

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