超一流企業の「人の育て方」

超一流企業の「人の育て方」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/10/11
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「グローバル化の時代」と叫ばれて久しい。いまや日本企業にとって海外で事業展開することは生き残っていくために重要な条件のひとつとさえ言える。しかしながら、世界で勝つことは容易ではない。世界で勝ち続けるためにはどうしたらよいのか。

日本経営合理化協会が主催する、第134回夏季全国経営者セミナー(2017年7月19日)で、ビザ・ワールドワイド・ジャパン社長の安渕聖司氏に聞いた(インタビュアー:弊誌副編集長・谷本有香)。

■前回記事:世界一流企業が実践する「世界で勝つ仕事術」

谷本有香(以下、谷本):GEは一人ひとりのリーダーシップを引き出すのが上手い企業だと言われています。安渕さんは、経営者としてどう人材育成を考え、実行されてきましたか。

安渕聖司(以下、安渕):社員の進むスピードには個人差があります。仕事ができて早く進める人には、より大きい目標、より難しい仕事、より大きいチーム、複数の部署にまたがる仕事、会社全社に関わる仕事などを与え、能力を引き出します。

よりハードルの高い仕事を達成すると自信になります。上司であるマネージャークラスは、一人ひとりが違う能力を持っていることを前提として与える仕事を調整し、コーチングをしながら、それぞれの人たちを育てるのが大事な仕事です。

谷本:人の評価はどうするべきでしょうか。評価が属人的になることはありませんか。

安渕:「何をやったか」と「どうやったか」という二軸で評価をしています。数値化しやすい業績の目標達成と、後進を育てながら取り組んだかなど、どのように達成したかを評価する。業績を上げさえすればいいと考える社員は、長期的に見ると会社にとってよくありません。例えば、ある商品を買いたいという顧客がいるとき、それが顧客にとって良いときでなければ売らず、長期的な信用を得る社員が良いということです。

もうひとつの大きなポイントは、評価する人を評価するシステムです。属人的になることは当然あるので、評価をする人に「部下をどう評価しているのか」「なぜこの人の評価が変わったのか」などと聞きます。部下の仕事ぶりを日頃からきちんと見て、進捗に従って適切な目標を与えたりコーチングをしたのかを問う。評価が悪い部下がいれば、「評価している自分の指導が問われている」とわかると、評価も真剣になります。

谷本:人材育成のための研修やセミナーは、成果が見えにくい場合が多いのですが、どう考えたらいいですか。

安渕:研修やセミナーはあくまで補助的なものです。80%以上は仕事で学び、学べないことを研修でやります。したがって、研修すれば人が育つということではありません。仕事を通じて人が育つ仕組みを作っておかないと、それを補完する研修は役に立ちません。

また、全員が同時に受ける研修があってもいいですが、それとは別に、一定以上の評価の人だけが参加できる選抜制の研修があるのもよいと思います。「参加するために頑張ろう」というモチベーションになり、実際の参加者たちの目も輝きます。その研修で経営者が参加者に直接語ると、メッセージは全社に広がっていきます。

後継者の選び方

谷本:後継者選びの土壇場になって候補者が育っていなくて慌てる……という話をよく聞きますが、後継者の育成で定評があるGEではどうしているのでしょうか。

安渕:社内の組織一つ一つを、強いか弱いかという観点で見てみます。ある部では部長候補が困るほどいる。別の部では部長の下が育っていない。会社としては、各部門のトップに、次のトップになる候補を何人か出してもらいます。その延長線上で、次の社長が見えてきます。

つまり、次の部門長になれない人が急に社長にはなれません。若くても上がっていける人を選んでおくということが、全体の組織を強くして後継者計画を可能にするのです。

谷本:カリスマ性があり、能力が高い創業者から会社を引き継ぐのは難しいと思いますが、創業者に後継者選びのアドバイスをいただけますか?

安渕:後継者計画を考えることは、自分の引き際を考えることです。そのうえで、会社を安定させられる、つまり長期的な視点で経営をしてくれる後継者を複数の候補から選んでいくことが重要です。当然長く経営する人もいるので、個別解だと思います。

また選ぶ際には、年齢にこだわらないとうことが大事ですね。70年代生まれ以降は、物心ついたときからデジタルの世界にいるので、考え方が全然違います。自分の会社にITが重要であると考えるのであれば、思い切って若い世代に任せるのも手です。DMM.com創業者の亀山さんは大変苦労されて会社を創り大きくされましたが、後継者として、ピクシブという会社を起こした34歳の人を選ばれました。

谷本:取締役を選ぶ基準、条件などはあるのでしょうか。

安渕:取締役は、元来の意味でいうと、株主を代表する人であり、経営する人ではありません。経営を兼務している人と経営をやらない人は本来違うわけです。経営をやらない人が、本来、取締役。いわゆるグローバル企業の取締役会では、相互評価をしています。

誰かを取締役に起用するときにも指名委員会の承認が必要です。そのときは既存の取締役との人的関係や、過去の取引関係など、いわゆる利害関係調査をやる。利害関係調査に通ったうえで、どういう人なのかということで選ぶ。日本企業とは少し違うと思います。

谷本:GEを含む外資系企業はガバナンスがものすごく効いている気がしますが、強いガバナンスを作るために必要なことはありますか?

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Forbes JAPAN副編集長、谷本有香

安渕:米企業も決して昔からガバナンスが強かったわけではありません。欧米企業の方がおそらくたくさんの不祥事が起こっています。反省を踏まえてやり方を変えてきているということもあると思います。

真似できることしたらまず、第3者の目を入れることですね。欧米企業はそれで取締役会のやり方を変えてきた部分が大きいのですが、日本で言っている社外取締役とグローバル企業のそれとはイメージが違います。日本では、社外取締役は、なんとなくマイノリティーで、外から来た人が時々アドバイスするというようにとられがちですが、基本的にグローバル企業では取締役会は社外の人が中心です。

GEでいうと、16人の取締役のうち15人が社外です。彼らの一番大きな使命は、会社を長期的に成功させること。そのために最も重要なのは、次のCEOを決めることです。決めたら会社の成長のためにそのCEOを徹底的にサポートします。しっかりサポートし、会社を正しい方向へ成長させるために取締役会があるというわけです。

もう一つには、会社の文化として、率先垂範し、やってはいけないことを上から下へ浸透させることが必要です。例えば会社にとって大事な企業倫理を、上から下に徹底して伝えて実践するということをエンドレスに続けること。そして、悪い事例に対しては、会社の中で罰則を設けて「こういったことはやってはいけない」としっかりと示すことです。社内にコンプライアンスとガバナンスの本がたくさん置いてあるだけではダメですね。

人々が企業に期待しているのは最低限の法令を守ることではありません。法令を超えたところで、どういう会社なのか、何をしてくれる会社なのかということを見ています。

有名なのはジョンソン・エンド・ジョンソンで、クレド(信条)の一番に「我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する」と書かれています。この「顧客への責任が第一」というクレド、つまり信条が世界中の従業員に浸透している。こういったものがガバナンスやコンプライアンスに影響するのではないでしょうか。

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ビザ・ワールドワイド・ジャパン社長、安渕聖司

安渕聖司氏◎世界200以上の国・地域約4千万以上の店舗で利用、ペイメントテクノロジーのリーディングカンパニー「Visa」の日本法人代表。早大政経学部、ハーバードビジネススクールMBA,三菱商事、日本GE代表取締役、GEキャピタル社長兼CEO等を経て、本年4月より現職。

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