生物が大量絶滅から復活するまでの時間はわずか「2~3年」だった!

生物が大量絶滅から復活するまでの時間はわずか「2~3年」だった!

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2018/11/09
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恐竜を絶滅させたとされる6600万年前の巨大隕石衝突。これで恐竜だけではなく、生物種の8割が絶滅したとされるが、生態系は惨禍の2~3年後にはもう復活していたという。驚きの研究成果を紹介しよう。

「千万年」ではなく「2~3年」でわかった!

地球が誕生してから46億年。

ジュラ紀、白亜紀といった時代に陸上の王者だった恐竜たちは、6600万年前に急にいなくなった。

それはたしかにそうなのだが、「億年」とか「千万年」という単位で時間を言われても、実感がわかない。ここまで時間のスケールが大きくなると、何十万年、何百万年くらいの違いは、まあどうでもよい誤差範囲のような気がしてくる。

こんな大昔の話、細かいことなど、そもそもわからないのではないか……。

だからこそ驚きなのだ。東邦大学の山口耕生(こうせい)准教授らの国際研究グループがこのほど発表した論文によると、恐竜を含む多くの生物が滅んだ「大量絶滅」の原因となった巨大隕石の衝突現場で、わずか2~3年後に生き物が復活していた可能性があるという(プレスリリースはこちら)。

つまり、「年」の細かさで、話ができるというのだ。

もちろん、隕石の衝突時期を推定する方法と、その後の環境変化を調べた今回の方法は別物なので、衝突の時期そのものが年単位で推定できるわけではないが、ともかくも、6600万年前の出来事について、こんなに細かい時間精度で話ができるのは、やはり驚きといってよいだろう。

衝突した巨大隕石が残したもの

今から6600万年前、現在のメキシコ・ユカタン半島付近に直径10キロメートルほどの巨大な隕石が、秒速20キロメートルくらいで激突した。

当時は浅い海だったこの場所は、その衝撃で異常な高温となった。あまりに急激な昇温で、これはもう爆発といったほうがよいくらいだ。

海底の堆積物などは吹き飛んで、直径200キロメートルほどの巨大な「チチュルブ・クレーター」ができた。海底堆積物の下の硬い岩盤も一部が溶けたが、すぐに流れ込んできた海水で固まって、クレーターの底に沈んだ。

大津波も起きて、大小さまざまな岩石片が水中にまきあげられ、大きなものから順に沈んだ。

衝突の中心地の近くでは、細かい泥の粒も大量に水中を漂っていて、それがどんどん沈んでいった。

山口さんによると、海底に泥が降り積もる速さは、大きな海の真ん中だと数千年で1センチメートルくらいがふつうだ。つまり、地層をミリ単位で細かく調べたとしても、わかるのはせいぜい100年単位の変化だ。

だが、ここではあっという間に1メートル近く積もった。ということは、きわめて短い時間に起きた変化を追究できるわけだ。

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現在のチチュルブ・クレーター周辺地域 Photo by Getty Images

山口さんらの研究グループが利用したのは、国際深海科学掘削計画(IODP)で2016年に採取された試料だ。

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洋上の施設からパイプを縦に下ろして海底に突き刺し、チチュルブ・クレーター部分に積もった地層を800メートルほど貫いて採取したものだ。

(右図が分析に使った柱状の試料。最上部は海底下約616メートル。図で34~110センチメートルの部分が、今回の研究でとくに注目した部分。泥などが堆積していて、その中に、生き物が動き回った跡が化石となって記録されている。国際深海科学掘削計画の公表資料より)

今回の研究では、この柱状の試料のうち、巨大隕石の衝突が記録されている部分を分析した。

そうしてわかったのは、巨大隕石の衝突で生き物たちが完全に破壊されてから「あっという間」に、生態系が回復していたことだ。

生物復活の「証拠」

注目したのは、衝突のエネルギーで岩石が溶けて固まった部分の直上から、通常の海底の堆積が始まるまでの約80センチメートルの部分。

海中に巻き上げられた泥などが積もっていったこの特殊な部分に、生き物が海底を動き回った跡が化石としていくつも記録されていたのだ。

動き回った跡の上に泥が積もり、新たな海底にできた跡の上にふたたび泥が積もり……。これが繰り返されていた。生き物が復活していた証拠だ。

問題は、この80センチメートルが、どれくらいの時間をかけて積もったのかということだ。

生物種の変化による推定法、泥などが水中で沈降する速さをもとにした物理的な推定法など、複数の手法で計算したところ、長く見積もって3万年、短ければ6年ほどで積もることがわかった。

この論文では、海中の泥などをきわめて細かい粒子とみなして計算しているため「6年」の数字が出ているが、実際にはこれより大きな粒子も多いはずで、山口さんによると、その何十分の一の時間で積もった可能性もあるという。

つまり、巨大隕石で完全に破壊された生き物の世界が、早ければ数年、長くても3万年ほどのあいだに復活してきていたということだ。

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新生代の魚の化石 Photo by getty Images

「動いた痕跡」が重要

そして山口さんは、「『海底で動き回った跡』がみつかった点が重要だ」と指摘する。

太陽の光が届かない海底の生き物のえさは、海の浅いところで暮らす植物プランクトンなどが光合成で作る栄養分がもとになっている。したがって、海底を動く生き物がいたということは、太陽光で生き物の栄養分がまず作られ、それが他の生き物のえさになる「食物連鎖」ができあがっていたことを意味している。

たんに、なにか生き物がいたというだけでなく、生き物どうしが関係しあう生態系というシステムが復活していたことを意味するのだ。

研究グループでは、衝突から2~3年以内に生き物が復活し、遅くとも3万年以内には生態系ができあがっていたとみている。

これまでは、生態系の復活には巨大隕石の衝突から30万年くらいかかったと考えられていた。それに比べれば、2~3年、あるいは3万年でも、「あっという間」といってよいだろう。

この衝突では、生物種の8割が絶滅したとされている。衝突の中心地でさえ、生き物たちはしたたかに、あっという間に復活し、新たな生態系を作っていたのだ。

サイエンスポータル」過去の関連記事:
•2018年1月4日ニュース「首長竜は大量絶滅を生き延びていた」
•2014年3月12日ニュース「隕石衝突後に酸性雨が降り生物大絶滅か」

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