ダビンチの絵が「現代アート」オークションで売られた理由

ダビンチの絵が「現代アート」オークションで売られた理由

  • MONEY PLUS
  • 更新日:2018/02/16

最近、記憶に新しいのが、レオナルド・ダビンチの作品がクリスティーズのオークションで4億5000万ドル(約507億円)で落札されたニュース。これを落札したのはサウジアラビアのバデル王子でした。(注:サイトによっては落札者がアブダビ文化観光局になっています)そして、この「サルバトール・ムンディ」(救世主)と呼ばれる作品が、アラブ首長国連邦のアブダビにあるルーブル美術館の別館「ルーブル・アブダビ」に所蔵されるようです。

このレオナルド・ダビンチの作品は、あのイスラム教/キリスト教の宗教の壁も超え、歴史上、世界でもっとも高額な絵画取引をされた作品になりました。しかし、本連載は「現代アートの愉しみ方」なのになぜレオナルドなのか、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。当然、それには理由があります。実はクリスティーズでは、この作品をコンテンポラリーアートのセクションで売ったのです。

現代アートの市場

レオナルドの前後でオークションにかけられていたのは、ルイーズ・ブルジョアやキース・ヘリング、マーク・ロスコ、アンディ・ウォーホルなど、戦後の代表的なアーティストたちの作品でした。今までなら、レオナルド・ダビンチのような時代の作品ならオールドマスターといったセクションに出るのが通例なのですが、「レオナルドはまったく古くない。現代にも、その魅力を保ち続けている!」というメインの理由とともに、現代アートのオークションが今一番アクティブで、落札する可能性のある参加者たちがいるということも、一つの理由でしょう。

もしくは、レオナルドを狙ってくるお金持ちに現代アートの魅力を知らせる機会を創出したかったのかもしれません。現代アートの作品も何十億というプライスで落札されていきました。

現代アートとして印象派を購入していた日本

浮世とはかけ離れた夢のような世界の話で、“自分たちの人生とは関係ない”世界をお見せしたかもしれません。しかし、私が知ってもらいたかったのは、美術作品がこんなにも世界中の人たち――それも、宗教も文化環境も時代も超えて違う人たちを魅了しているという事実です。レオナルドを見にパリに行く、ミラノに行く、という行く先の一つに、アブダビに行くというのも加わったわけです。

違和感があるかもしれませんが、日本でのコレクションも見てみてください。いうまでもなく、日本のものだけでなく、国立西洋美術館にはルネサンスからの驚くような西欧の美術品があり、印象派に至っては多くの公立の美術館で作品を見ることができます。

日本人は印象派が好きだ、とよく揶揄されます。最近のルノワール展もゴッホ展も大勢の入場者でした。でもどちらかというと日本は、印象派を同時代(コンテンポラリー)のアートとして購入していった歴史があります。西欧を除く地域としてはとても早く、コレクションをした国なのです。

今、カタールなどの中東の国々が、マーケットに出てきたセザンヌやゴーギャンの名作を300億円近くの価格で購入しています。中国の人たちもやはり印象派は好きです。世界中の人たちが、好きなのです。ロシアのプーシキン美術館でも多くの名作がありました。エルミタージュ美術館にもマチスの傑作がすごくあるなど、美術作品は世界中をどんどん移動していきます。

同時代に生きている意義

そして、コレクションの話に移ります。

もちろん、レオナルド・ダビンチの時代は、王様とか貴族とか一握りのお金持ちしか彼の作品を手に入れることはできなかったでしょう。でも印象派の時代は基本、今と同じだと大雑把に言えると思います。

日本人がとりわけ大好きなゴッホ。いろいろ説があるみたいですが、生前に売れた作品は1点のみ。「赤いぶどう畑」という絵で、アンナ・ボックさんという人が11万円ぐらいで買ったそうです。有名な陶器メーカーの一族で今、日本でも「ビレロイ&ボッホ」という名前で有名です。

裕福とはいえ、画家である弟の友人の絵を買ったのです。11万円です。買ったのは1890年、パリで開かれたアンデパンダン展、ゴッホ自殺の5カ月前。ゴッホが現在のような評価になることが分かっていればいいですが、もちろんそんなことはわかりません。

でも、アンナさんは高くなってほしいなんて思って買ったでしょうか? 目の前の画家と、目の前の絵。同時代というのは一緒に生きている時代ということで、その事実しか目の前にはないのです。だから買うのは簡単です。「これ、いいわね」「かわいそうだから買ってあげるわ」「あの場所に飾ったら良さそう」「他の人に売れちゃったら大変」とか、本当に目の前の時間、空間での出来事なのです。死んだ後のゴッホの作品は、弟が引き継ぎましたが、弟も死に、その奥さんがすべて管理して10万とかで売っていたそうです。その後の経緯はゴッホマニアサイトをみてください。

すべては現代アートだった

美術館で見ているものはすべて現代アートだった。そのことをまず、考えてみてください。

そうすれば、まったく違って見えてくるはずです。ゴッホの弟もグーピル商会というところで画商をしていました。今のギャラリーのシステムとはちょっと違うと思いますが、戦後に出てきた現代アートのギャラリーには、ゴッホのことがトラウマのように取り付いているんじゃないかなと思います。

私だったらゴッホを死なせやしない、作品をちゃんと評価して、みんなに紹介する!才能を見抜く!そんなことに取り付かれながら、始めたんじゃないかと思うのです。

次の回では、ゴッホを11万円で買ったことにつながるよう、私がどうしてギャラリーを始めたか、どんなものを買い始めていったのかを書きたいと思います。

参考:
http://www.christies.com/features/Leonardo-and-Post-War-results-New-York-8729-3.aspx
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-12-07/P0L6VT6JIJUO01
http://www.christies.com/salelanding/index.aspx?intsaleid=27244&saletitle=

写真:ロイター/アフロ

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