大丈夫か、ジダン。マドリディスタより詳しい3人がレアル不振を憂う

大丈夫か、ジダン。マドリディスタより詳しい3人がレアル不振を憂う

  • Sportiva
  • 更新日:2018/01/15

蹴球最前線──ワールドフットボール観戦術── vol.5

新年早々から各地で最高峰の戦いが繰り広げられる欧州各国のサッカーリーグ。この企画では、その世界トップの魅力、そして観戦術を目利きたちが語り合います。

サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎──。

今回のテーマは、リーガ・エスパニョーラ(ラ・リーガ)のビッグクラブ、レアル・マドリード(マドリー)。昨シーズンと比べて苦戦が続くエル・ブランコ、「白い巨人」の戦力と現況を語り合いました。

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クラブW杯で連覇達成も、リーグ戦で苦しい状況が続くレアル・マドリード

――今回、お三方には今季のラ・リーガ後半戦を展望していただきたいと思います。まずは昨季のチャンピオンチームであるレアル・マドリードから詳しくお話を聞かせていただきたいのですが、今季のここまでの戦いぶりをどのように見ていますか?

中山 今季のマドリーを見ていると、やはり「盛者必衰」というか、永遠に強いチームはないということを痛感しますね。ジダン監督が就任してもう2年が経つわけですが、あれだけ順風満帆だった最初の1年半と比べると、この半年はまったく別のチームのようになってしまいました。

しかも、今季の開幕前まで絶対的な強さを持続していたのに、開幕したらそれまでの流れが突然暗転してしまった。正確に言えば、ほんの小さなすり傷を放置していたら、時間の経過とともに傷口が広がってしまい、現在では手術が必要なレベルにまで悪化してしまった、というイメージでしょうか。

小澤 1試合消化が少ないとはいえ、首位バルセロナとの差は16ポイント(1月8日時点)。実際はそこまでの実力差はないと思いますが、もはやマドリーは完全に優勝争いから脱落してしまいましたね。

倉敷 この凋落ぶりには誰もが驚いています。確かに、ジダン監督が就任した当初は初めてトップチームの指揮を執ることを不安視する声もありましたが、蓋を開けてみればこの2年間で8つのタイトルを獲得しています。誰も成し遂げていなかったチャンピオンズリーグの連覇、更に昨年12月にはこれも史上初となるクラブワールドカップの連覇を達成する強さを誇っていたわけです。

今季もスーパーカップでバルサに2連勝する立ち上がりを見せたマドリーに一体何が起きているのか? 中山さんはその原因についてどう見ていますか?

中山 今でこそメディアが不振の原因を洗い出すようになってきましたが、当初ははっきりとした原因が語られることはありませんでした。チャンピオンズリーグでは結果を出していましたし、誰もがそのうち復調するだろうと見ていたと思うんです。

ところが、内容は良くてもゴールが決まらないという現象が続いてしまった。ジダン監督はこの現象を「ボールがゴールに入りたがらない」という言葉を使って、フィニッシュ以外のところに何も問題はないということを表現していました。僕自身も、初めの頃はそれを”言い得て妙”だと感じていました。

実際、開幕当初のマドリーを見ていて昨季よりも進化している印象を受けていましたし、とにかく攻撃のバリエーションが豊富でした。BBC(ベイル、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウド)が揃わなかった影響で中盤をひし形にした4-4-2にして、中盤の選手が流動的に動いて圧倒的にボールを支配。両サイドバックの位置も高かったし、中盤の底でプレーするカゼミーロさえも攻撃に顔を出す回数が増えていました。文字どおり、見て楽しい超攻撃的サッカーを実践していたわけです。

小澤 確かに開幕当初マドリーは、バルサと比較してもサッカーのクオリティでは上だと見ていました。特にイスコがいる時のマドリーは、ゲーム自体をしっかり作ることもできていましたし、チャンスをしっかり決めてさえいれば余裕で勝てる試合ばかりなのに、今季はシュートを決められないことで自分の首を絞めてしまった印象があります。

中山 そういうこともあって、ジダン監督もあえて手を打つことはなかったのですが、第10節のジローナ戦に負けた後にチャンピオンズリーグのトッテナム戦も落として公式戦2連敗を喫したあたりから、いよいよ雲行きが怪しくなったと思いますね。

なかなか復調の兆しがない中で、ジダン監督もイスコ以外の中盤の選手のポジションをある程度固定して、少し守備を大事にするところから修正を加えたのですが、今度はそれが攻撃面に悪影響を与えてしまったように見えます。流動性がなくなり、攻撃のバリエーションも少なくなって、攻撃の厚みもなくなってしまいました。

倉敷 得点力に関しては、クリスティアーノ・ロナウドの問題が大きいですね。チャンピオンズリーグでこそグループステージで6試合連続ゴールという新記録を樹立していますが、リーガではまだ4ゴールです。

中山 結局は、そこがマドリー大不振の最大の原因でしょうね。ジダン監督も含めて、多くの人がそのうちゴールを量産するようになるだろうと見ていたと思いますが、リーグ戦ではなかなか復調してくれない。

クラシコでは空振りが話題になりましたが、第18節のセルタ戦(1月7日)でも2、3回の決定機がありながら決められない。相変わらず”らしくない”パフォーマンスが続いていて、結果的に試合が引き分けに終わった原因にもなってしまいました。あの試合のロナウドのプレーを見ると、復調の兆しさえも見えないというのが現状ですね。

倉敷 これはまったくの想像ですが、彼は引退後に発表するであろう自分の伝記に、次は何を記すかを気にしているように見えるんです。キャリアを美しくまとめるための輝く業績、語り継がれる試合のために、いつどこにコンディションのピークを持ってくるのかを自分自身で決めているのではないでしょうか?

彼ももう若くはありません。メッシと対等に戦える時間は長くはないでしょう。昨シーズンはシーズンの後半戦に調子を上げていますが、筋トレの内容を変えた成果だと語っています。人に見せることも多い上半身を鍛える度合いを少し減らして、その分、走り込みなど下半身のトレーニングに割く時間を増やした、と言うんですね。今季はまだ走り込んでいるようには見えません。クラシコの空振りも気になります。

もう一度バロンドール受賞を狙うために、チャンピオンズリーグの優勝やワールドカップに照準を合わせていてもおかしくない。ポルトガル代表としてワールドカップを狙うのは、今回が最後のチャンスでしょうからね。ただ、他の選手と比べて野心が見えるロナウドが後半のマドリーを救う可能性もあります。

小澤 僕はロナウドのみならず、カリム・ベンゼマの不振も気になります。今季はまだリーグ戦で2ゴールですからね。エル・クラシコでもスタンドからブーイングを浴びていましたが、精神的にも弱っているようにも見えます。ジダン監督が必死にかばおうとしていますが、かえってそれが逆効果になっているようにも見えます。

倉敷 もうひとつ不振の原因として考えているのは、”小さな集団”“連帯”としての強さに陰りが見られることです。例えば左右のアウトサイドで誇ったコンビネーションの約束事などですね。昨年9月末から約1ヵ月半に渡ってダニエル・カルバハルが心膜のウイルス感染で戦列を離れていました。彼の不在の間に左右のサイドバックのバランスが崩れました。マドリーは両サイドバックが共に上がってプレーすることが多いのですが、左にマルセロがいるとしても、右サイドバックがアクラフ・ハキミではまだカルバハルの穴は埋まりません。

中山 アクラフも頑張ってはいますが、まだこれからの選手なのでさすがにカルバハルの代役は務められませんよね。結局、今季の開幕前の補強策として、現有戦力プラス将来有望な若手を新戦力として加えるにとどまったことも、凶と出ていますよね。テオ・エルナンデス、ダニ・セバージョス、ボルハ・マヨラル、マルコス・ジョレンテ、ヘスス・バジェホと、5人とも将来性を買われての新戦力ですから。

小澤 フロントの補強の失敗も、今季の不振の原因のひとつでしょうね。夏に獲得した5人が主力になり切れていないことで、レギュラー陣に刺激を与えることができていません。これはアトレティコ・マドリードにも言えることですが、昨季と比べてチームが弱体化している印象があります。

昨季は普段控えの選手を中心に編成した「エキッポ(チーム)B」が強かったので、「エキッポA」と「エキッポB」でうまくローテーションを組むことができましたが、今季の「エキッポB」はそこまで強くない。そういう点で、ジダン監督も今季はやり繰りが難しくなっていると思います。

中山 昨季の「チームB」には、イスコやアセンシオに加えて、アルバロ・モラタ(チェルシー)、ハメス・ロドリゲス(バイエルン・ミュンヘン)など、錚々たるメンバーがいました。しかも、サッカー自体も「チームA」より魅力的でした。

倉敷 チャンピオンズリーグのトッテナム戦、ラ・リーガでのアトレティコ・マドリード戦、アスレティック・ビルバオ戦、ドローに終わった試合ではジダン監督は選手交代枠を使い切っていませんね。おそらくベンチに信頼している選手がいないからだと思います。

知恵袋であるアシスタントコーチ、ダビド・ベットーニのアイデアも冴えていないのか? アントニオ・ピントゥスコーチも選手のコンディションを上げられていない、そしてジダン監督の采配。控え選手も含めてベンチには大きな原因があるでしょうね。スーパーな働きでチームを救ってくれる特別な選手も今季は現れていません。

中山 そのわりに、この冬の移籍マーケットの補強に関して相変わらずジダン監督は「現在抱えている選手全員を信頼しているので、新戦力は必要ない」と言い続けていますよね。ファンのアンケートでも、圧倒的にFWとGKを補強するべきという結果が出ているにもかかわらず。

もちろんチームの和を何よりも大切にしてチーム作りをすることがジダン監督のポリシーなのはわかりますが、さすがにここまで状況が悪化してくると、何らかの手術を施す必要があると思います。現在のところ、アスレティック・ビルオバのGKケパ・アリサバラガの獲得が濃厚と報じられていますが、まだFWに関しては具体的な名前が出てきていません。

この冬に何も手を打たないままだと、来季のチャンピオンズリーグ出場権を確保することさえ怪しくなってきます。そして、もしチャンピオンズリーグの決勝トーナメントでパリ・サンジェルマンに負けてしまったら、ジダン監督の去就問題が一気にクローズアップされることになるでしょうね。

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倉敷保雄(くらしき・やすお)

1961年生まれ、大阪府出身。ラジオ福島アナウンサー、文化放送記者を経て、フリーに。現在はスカパー!やJ SPORTSでサッカー中継の実況として活動中。愛称はポルトガル語で「名手」を意味する「クラッキ」と苗字の倉敷をかけた「クラッキー」。番組司会、CM、ナレーション業務の他にゴジラ作品DVDのオーディオコメンタリーを数多く担当し、ディズニーアニメ研究のテキストも発表している。著作は「ことの次第」(ソル・メディア)など。

中山淳(なかやま・あつし)

1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌の編集部勤務、同誌編集長を経て独立。以降、スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカージャーナリストとしてサッカーおよびスポーツメディアに執筆。また、CS放送のサッカー関連番組に出演し、現在スポナビライブでラ・リーガ中継の解説も務めている。出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行う有限会社アルマンド代表。

小澤一郎(おざわ・いちろう)

1977年生まれ、京都府出身。サッカージャーナリスト。早稲田大学卒業後、社会人経験を経て渡西。バレンシアで5年間活動し、2010年 に帰国。日本とスペインで育成年代の指導経験を持ち、指導者目線の戦術・育成論やインタビューを得意とする。多数の媒体に執筆する傍ら、スポナビライブにてラ・リーガ(スペインリーグ)、スカパー!にてUEFAチャンピオンズリーグなどの試合解説もこなす。これまでに著書7冊、構成書4冊、訳書5冊を刊行。株式会社アレナトーレ所属。

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