米税制改革めぐる議論、見落とされている点とは

米税制改革めぐる議論、見落とされている点とは

  • WSJ日本版
  • 更新日:2017/10/12
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――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター

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トランプ政権と共和党議会指導部が先月、税制改革に関する「統一された枠組み」を発表して以降、税制案は富裕層に利益を与えるものだとの批判を沈めようと、双方は釈明に追われている。ドナルド・トランプ大統領は税制案の公表前、富裕層は「全く得をしない」と主張。ゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長もその後すぐに、「裕福な人への減税はない」としていた。

彼らの主張には2つの問題がある。1つ目はそもそも間違っていることだ。現時点で想定されている計画では、富裕層に大きな恩恵が及ぶ。2つ目は、彼らの経済に関する見解に基づくと、それが問題にならないはずであることだ。トランプ氏のゴールは、政権当局者がいつも言っているように、経済成長を促すことだ。税制改革案がこの目標を達成すれば、いかなる税配分の変更よりも中間層にとって大きな意味があるはずだ。

およそ40年前、経済学者のアーサー・オーカン氏は、経済問題の大半は平等と効率のトレードオフに行き着くと述べた。同氏の考えでは、生産性の高い労働者や企業に高い税率を課せば、貧富の差は縮小するものの、同時に労働や投資の意欲を削ぐ。

民主党は伝統的に効率よりも平等を尊重する。共和党はその逆だ。

トランプ氏は、成長を加速させ、富裕層よりも中間層に恩恵を与えるとする減税を確約することで、この殻を打ち破ろうとした。税制改革案の枠組みが公表された数日後、有力シンクタンクは、トランプ氏はこれに失敗したと指摘した。税政策センター(TPC)は、所得上位1%の世帯の税引き後収入は10年間に8.7%増える一方、中間の20%の世帯収入は0.5%増にとどまるとの分析を示した。

だがこの共和党の税制案への批判は、複数の点において不完全だ。例えば、トランプ氏や共和党はそうならないだろうと話しているにもかかわらず、所得税の最高税率が39.6%から35% に下がることを前提にしている。また経済全般に与える影響についても、分析を先送りしている。

しかしながら、この税制改革案の策定者が最優先課題だと述べているのは経済成長だ。米経済諮問委員会(CEA)のケビン・ハセット委員長は先週、ギリシャの左派政権やバラク・オバマ前大統領でさえも、今回の税制案の骨格である法人向け減税と控除削減が、経済全般にプラスの効果をもたらすと認めていると述べた。

同委員長は「法人税は総じて有害で、とりわけ米国にとってはそうだという世界的なコンセンサスに応じているだけだ」としている。

減税の利点については長らく議論されており、懐疑派は過去に国内外で、なぜ減税が成長を押し上げなかったのかと問うている。その影響が一時的だというのが1つの理由だ。減税によって経済が3%拡大したと仮定する。これは10年間で経済成長率を年0.3%ポイント引き上げることになり、その後元の成長率水準に戻る。

さらに言えば、人口動態やテクノロジー、景気循環や金融政策など他の影響要因から減税を切り離すことは不可能だろう。同じ理由で、財政刺激による影響も見極めることは困難だ。

税政策センターのアナリストらは、この税制改革案は財政赤字の拡大による金利上昇を招き、民間投資の原資となるはずだった貯蓄が吸い上げられてしまう恐れがあるため、成長をそれほど促進しないとの見方を示している。だが、世界中で貯蓄があふれ、米国債利回りが2.3%程度にとどまる状況において、それは当てはまらないだろう。国際通貨基金(IMF)によると、先進国は政府債務が国内総生産(GDP)比で平均100%を上回る水準に膨らんでいるにもかかわらず、国債利回りは総じて低水準に張り付いている。

シンクタンクのタックス・ファンデーションは、法人税率が20%となれば、いずれGDPを3.1%、賃金を2.6%押し上げると見積もる。

同様に議論すべきテーマは、法人減税により、中間層がどの程度の恩恵を受けるかだ。税政策センターは減税による恩恵の80%は資本の所有者へと渡り、労働者に届くのは20%程度にとどまると推定する。

しかし、一部の経済学者は、高水準の法人税率がいかに投資を抑制し、賃金上昇の源である生産性を下押しするか過小評価されていると指摘する。ミヒル・デサイ、フリッツ・ フォリーの両氏(ハーバード大学)とジェームズ・ハインズ・ジュニア氏(ミシガン大学)は、各国の状況を比較した2007年の論文で、法人減税の恩恵の45~75%は労働者に渡ると結論づけている。

労働人口の高齢化を踏まえると、減税により足元で2%程度の成長トレンドを3%まで恒久的に引き上げるというトランプ政権の主張は大げさな約束であるのかもしれない。だが一時的な押し上げであっても、大半の家計にとっては生活水準の向上につながる。

さらに、富裕層向けの利益は、成長の分け前を阻害することなく調整できる可能性がある。例えば、共和党が相続税廃止を撤回すれば、99%の家計には何の損失もなく、財政赤字の穴埋めや投資を一段と優遇するための原資が生まれる。

とはいえ、最終案が富裕層に利益をもたらすのは間違いない。なぜなら、彼らが所有する企業の税金は引き下げられるからだ。その過程で労働者にも利益が行き渡れば、労働者にとっても問題はないかもしれない。こちらの方が、税制改革案の支持者がこれまで寄せ集めたいかなる論理よりも妥当なのではないか。

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