貧乏中国人がネパール「爆買い旅行」に殺到するワケ

貧乏中国人がネパール「爆買い旅行」に殺到するワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/10/20
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「海外初心者」丸出しで…

ネパールの首都カトマンズの中心部に、ホテルやレストラン、土産物屋や旅行社が軒を連ねるタメルという地区がある。80年代のヒッピーブームの頃から、世界各国のバックパッカーや登山者、長期滞在者を集め、今も根強い人気を誇るツーリストエリアだ。

近年、そんなタメルに異変が起きている。一昔前までは、ほとんど見かけることのなかった中国人観光客が、どっと押し寄せてきているのだ。

所得の向上や受入国側のビザ要件の緩和に伴い、中国の海外旅行者数は増加の一途をたどっている。2005年には3000万人程度だった出国者数が、2015年には1億3000万人強と、10年間で4倍以上の増加。旅行好きで知られるドイツ人の出国者数8000万人を軽く抜き、世界最多の海外旅行者を排出しているのである。

彼らの渡航先は、香港・マカオ、タイ、韓国、日本などのアジア周辺地域や欧米などで、全体の80パーセントを占める。それに比べれば、ネパールを旅先に選ぶ人の数は格段に少ないのだが、それでも12万3000人(2013年)に上る。もっとも多いインドからの旅行者13万5000人、3位の米国からの旅行者4万9000人、6位の日本からの旅行者2万5000人と並べてみると、中国人旅行者が占める割合はかなり高いといえる。

ネパール旅の形態は、バックパッカーをはじめとする個人旅行が主流だが、中国の人々は、たいていパッケージツアーのスタイルだ。しかも、老若男女が入り混じった大団体。その大半が海外旅行の初心者である。

初の渡航先を、香港・マカオ、タイ、韓国、日本、欧米といった人気の地ではなく、いかなる理由でネパールを選ぶかといえば、ズバリ、予算の都合だ。

日本のネパールツアーの相場は、1週間で27~28万円である。一方、中国のツアーは、15万円程度と10万円以上も安い。これほど差が開いているのは、さまざまなところで経費が抑えられているからである。

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タメルには、英語が苦手な中国人観光客のために、漢字表記の貼り紙が目立つ。「魚釣島是中国的」と大書してご機嫌を取る店も(写真:著者提供

もっとも顕著なのは、国内交通費だ。カトマンズから西に約200km、標高800m地帯に位置するポカラは、白く輝くアンナプルナ山群が望めることで有名な観光地。大半のツアースケジュールに組み込まれているのだが、カトマンズからの移動は国内線を使うが一般的である。ところが、中国ツアーは、国内線よりはるかに安価な大型バスを利用しているのだ。

国内線なら所要時間25分のところ、バスはつづら折りの道を6~7時間も走らねばならない。限られた旅の時間を有効に使うとすれば、前者を選びたいところだが、中国ツアーにその選択肢はない。そもそも、旅慣れていない中国の人々は、ポカラへの移動手段に国内線があることにさえ気づいていなかったりする。それをいいことに、あたりまえに陸路移動を強い、経費削減を図っているのである。

観光スケジュールも、最低限のポイントしか組み込まれていない。プラスアルファを求める場合は追加料金を支払うことになる。食事も中華レストランで質より量の大皿料理を供し、ドリンク類は各自で別注文するシステム。このように、さまざまなところで経費を抑え、格安ツアーが成り立っているのだ。かくして、日本や欧米を旅するほどの経済力はないまでも、エコノミークラスの旅行であれば大丈夫という海外旅行初心者が、ネパールを訪れているというわけである。

一体何を「爆買い」するのか?

こうした中国人観光客の急増に伴い、タメルの雰囲気がずいぶん様変わりしてしまった。ひとつめは街並みである。レストランやホテルが雨後の筍のようにオープンし、一角が中華街と化しているのだ。

経営者は、本土から移住してきた人たちである。メインターゲットの中国人観光客に加え、中華レストランは現地で働く中国人の食堂としても機能している。夕食時になると、タバコの煙が充満するなか、口角泡を飛ばしておしゃべりに興じる中国の人々で満員となり、ここがネパールであることを忘れてしまいそうになるほどだ。

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タメルの一角に生まれ出た中華街。年々、その規模は拡大している(写真:著者提供)

ふたつめの変化は、ネパールの人々の日本人への対応である。

ネパールにおいて、日本人旅行者は礼儀正しく穏やかと評され、好感度が高い。ゆえに、タメルの通りを歩くと、3分置きぐらいに「コンニチハ~」と、片言の日本語が飛んでくる。声の主は土産物屋の客引きだ。そう。日本人の人気の理由は、その国民性もさることながら、ジャパンマネーを期待してのことでもあるのだ。

ところが、それも今は昔。ここ数年、「コンニチハ~」と声をかけてくれる人がめっきり減ってしまった。この8月、ネパールを訪れた際も、1時間ほど歩いてみたものの、「コンニチハ~」の声を聞くことは1度もなかったのである。

代わって盛んにかけられるのが「ニーハオ」だ。日本人であろうと、韓国人であろうと、東洋人と見て取ればとりあえず「ニーハオ」。「コンニチハ~」は「ニーハオ」に、すっかりとってかわられてしまったのである。

理由はしごくシンプルだ。中国人観光客の急増は前述したとおりだが、そんな彼らの購買意欲はネパールにおいても遺憾なく発揮されている。「ニーハオ」の台頭は、要するに、土産物屋の心が、ジャパンマネーからチャイナマネーに移ろったことによる現象なのだ。

一時期、日本でも中国人の爆買いツアーが話題になった。家電製品、腕時計、医薬品、化粧品、食品などが買い求められていたようだが、そうした高性能・高品質商品はネパールにはない。では、いったい何を買いまくっているのかといえば、他国の旅行者のニーズとずいぶん異なるものが好まれているようだ。

タメルで長年、土産物店を営むA氏がホクホク顔で語る。

「中国人は、みんな木珠を欲しがります。なので、ここ数年で10倍に値上がりし、500ルピー(約500円)で売っていたのが、5000ルピー(約5000円)ぐらいで売れる。なかでも、ボディチッタという樹の小粒のものはすごい。これは、限られた場所の一部の樹からしかとれない。たいへん貴重ということで、ここ数年で異常に高騰している。以前は10万ルピー(約10万円)で売っていたものが、今は120万ルピー(約120万円)の値がつく。なかなか手に入らないといわれると、余計欲しくなるようですね」

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中国人観光客に大人気の木珠。大量買いする人も(写真:著者提供)

ボディチッタの木珠は、中国人コレクターの絶大な支持を受けているという。なかには、かの樹が生息する土地を確保し、独占を試みる輩もいるそうだ。そんな彼らよって、もともと珍かな小粒の木珠がますます希少となり、値が吊り上がったといわれている。

インドの伝承医学アーユルヴェーダの薬を扱う店ではこんな声が聞かれた。

「ネパールでは、昔からアーユルヴェーダの薬が出回っています。最近、改めてその効能が見直され、ネパール人の間でもとても人気です。そうした話を聞きつけたのか、中国人にも買っていく人が多い。男性には、精力剤や毛生え薬なんかが好まれています。白髪染めもよく売れますよ」

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木珠とともに人気を博すアーユルヴェーダ医薬。一目でその効能がわかるパッケージだ(写真:著者提供)

オーソドックスなお土産ももちろん爆買いの対象となっている。財布の心配をすることなくショッピングが楽しめるのも、物価が安いネパールならでは。通りを行き交う中国人観光客の手には、土産物がパンパンに詰まったビニール袋が3つも4つも下げられている。

そんな上客である中国人観光客の呼び込みには余念がない。片っ端から「ニーハオ」と声がけするのは当たり前。ショーウインドウに「魚釣島是中国的」(魚釣島は中国の領土)と貼り紙し、気を惹く店まであるのだ。

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インド製のジェネリック医薬品も売られている。こちらは、慢性骨髄性白血病や消化管間質腫瘍の治療に用いられる抗がん剤。土産物屋に売られているとは驚きだ(写真:著者提供)

バブル時代の日本人旅行者は、気前よくお土産を買ってくれたらしいが、長きにわたって経済低迷期にあるわが日本国。

「日本人は最近、お金をあまり使ってくれません。レストランで食事するときもドリンクはオーダーせず、持ちこんだ水筒の飲み物ですませたりします。ケチな人が増えました」

との声も聞かれる。爆買い中国人に、お得意様ポジションを奪われた日本人への対応が渋くなるのも、やむを得ないことであろう。

写真だけ撮らせておけば満足する

さて、千客万来の中国人観光者であるが、トイレの使い方が悪い、ゴミをポイ捨てする、時間を守らないなど、彼らのマナーの悪さには定評がある。ネパールでも同様、なんらか悪評が聞こえてくるかと思ったのだが、意外なことに彼らの評判は決して悪くない。

たしかに、ネパール人も、ゴミのポイ捨てはあたりまえ。時間にもルーズだ。似た者同志であるがゆえ、気にならないということなのかもしれないが、どうやら、それだけが理由というわけでもないようである。

中国人観光客のガイド暦5年のB氏によれば、他の国の旅行者に比べ、中国人は扱いが簡単だという。

「中国人は景色のいいところに連れて行って、ウエイボー用の写真を撮らせてやれば満足します。食事もアレコレ食べたがらないから、中華を食べさせておけばいい。非常に楽な客です」

ガイド暦3年のC氏が話を継ぐ。

「クレームにも発展しないから気楽です。中国人って、集合時間を守らないとか、触っちゃいけない仏像に触っちゃうとか、ルール違反ばかりするでしょ。だから、文句が出ても、反対に相手の非を責めて終わらせるか、はなから無視しちゃう。日本人客だとこうはいきません」

C氏は以前、日本人客のガイドをしていたそうだが、要求が細かく、なにかとクレームに発展しがちなため、常に気を張っていたという。

「渋滞で予定の観光地を回り切れなかったりするともうたいへん。すぐに日本の旅行会社にクレームが入るんです。夕食のとき、お客さんからお酒を勧められることがあるのですが、私はアルコールに弱いので断るんです。すると、ガイドの態度が悪いなんてクレームがつけられることも。もちろん、日本人全員がそうだとはいいませんが、難しいお客さんという印象はありますね」

こうした一部の日本人客を警戒し、大半のガイドは酒を勧められても飲まないようにしているという。しかし、中国人観光客のガイドは、客と一緒にガンガン飲んでいるそうだ。

「だって、中国人は扱いが簡単ですから。気を遣うことなく、タダ酒がたらふく飲めるんだから、酒好きにはうれしいお客さんです」

中国人が日本人よりモテる

ただ酒にありつけるだけでなく、中国人観光客のガイドには、ほかにもうま味があるという。

中国人観光客がネパールを訪れるようになったのは6、7年ほど前からのことだ。しかも、ある日、突然、やってくるようになったため、当初は中国語のできるガイドがまったく足りなかったという。そのため、日本語ガイドの日当が30ドル程度のところ、中国語ガイドは100ドルと強気の設定だったという。中国の旅行会社から支払われるチップも、1日あたり参加者数×5ドルとはずんでもらっていたらしい。

ところが、「中国人ガイドは儲かる」との噂が広まり、今では供給過多の状態だ。ガイドの日当は30~50ドル、チップも参加者数×3ドル程度に値下がりしてしまったという。それでも、マイナス分を補てんするだけの収入は十分、確保できるというのだ。

前出のガイドB氏が、そのからくりを説明する。

「提携する土産物屋に連れていくと、ガイドにコミッションが入るんです。木珠や宝石といった高価な品なら数百ドルにもなる。あと、パラグライダーのようなオプショナルツアーに客を送り込めば、そこからもコミッションが入る。あれもこれもと欲張る中国人のおかげで、ガイドの稼ぎは保たれているんです」

そんなうま味のある仕事であるから、中国語ガイドのなり手は後を絶たない。問題は、急増したガイドのなかに、ネパール観光省発行のライセンスを持たない質の悪い輩が混じり込んでいるという点だ。

B氏はいう。

「私たちは、ネパールの歴史や名所旧跡に関する知識を習得し、試験を受けてガイドになっています。けれど、中国人ガイドのなかには、この手順を踏んでいない者がたくさんいる。そうした人たちが、コミッション目当てに土産物屋へと連れまわし、タダ酒を飲んで悪さをしているんです」

B氏のいう“悪さ”とは、中国人女性客とのアバンチュールだ。ツアー客の中に若い女性を見てとるや、「キレイですね~」、「カワイイですね~」とアプローチを開始し、夕食の際、どんどん酒を勧めてほろ酔い加減にもっていく。そこへ「この後、もうちょっと飲みませんか?」と誘い、女性客の部屋になだれ込めれば、高確率でものにできるというのだ。

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異彩を放つ中国人観光客のファッション。なかには、胸元がざっくり開いたタンクトップに、パンツが見えそうなミニスカートと、大胆ないでたちの女性も。ナンパ師が放っておくことはない(写真:著者提供)

「私の知る限り、かなり多くの中国語ガイドが成功しています。おそらく、女性の方も期待しているのでしょう。国籍問わず、ガイドが女性客と遊んだという話はよく聞きますが、近頃は中国人女性がいちばん話題になっています」

ちなみに、海外でモテモテといえば日本人女性だ。欧米では小柄で控えめなところが魅力とされ、アジア圏ではそれに経済力も加算されている。こじゃれたレストランで食事を奢ってもらい、ベッドをともにし、プレゼントを貰うという一石三鳥を期待されるのだ。

タメルで爆買いする姿から、中国人女性客も同様に、経済力を求められているのかと思ったが、なんと両者の間に金銭はまったく介在しないらしい。せいぜい、タダ酒をふるまわれるぐらいのことだ。

B氏が続ける。

「私の想像ではありますが、外国人と手合わせしてみたいということではないでしょうか。昔、外国人女性の身体の大切な部分は、自分たちの国の女性の造りと違うといわれていました。そうした噂を未だに信じている人もいるので、確かめてみたいのかも。中国人女性の方も、せっかく外国に来たのだから、珍しい体験をしてみたいのでしょう」

爆買いによってネパール経済の底支えを担う中国人観光客。客引きの関心だけでなく、モテ度においても、わが国のポジションを蚕食しつつあるチャイナパワーなのである。

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